Daily Oregraph: 一茶を読んで遊びけり
またしても雨。土砂降りではなく、ボソボソという愚痴っぽい雨である。
ネタのないときには俳句に頼ることにしているから、雪国の俳人一茶の句集をめくってみたら、
冬の雨火箸をもして遊びけり
とは奇妙な句である。いったい燃えやすい材質の火箸なんて間抜けなものがあるのだろうか?
杉箸で火をはさみけり夷講(えびすこう)
へえ、ほんとにあるんだね(笑)。
冬の雨に閉じ込められて、火鉢か囲炉裏の火を木箸でつついているうちに、ポッと火がついた。それをおもしろがっているのか、あまりのバカバカしさに自分が情けなくなって自嘲しているのか。
いずれにしても、雨だからそんな呑気なことができるわけだ。
是がまあつひの栖(すみか)か雪五尺
という句は有名だが、
はつ雪やといへば直(すぐ)に三四尺
というのもある。三四尺といえば一メートル以上だから大雪である。雪かきをして道をつけねば寝酒を買いに出ることもできないから、もちろん放ってはおけない。
はつ雪をいまいましいと夕(ゆふべ)哉
といいたい気持はよくわかる。
芭蕉が澄ました顔をして雪をかく姿は想像しにくいけれど、一茶なら話は別だ。木鋤を抱えて吹きだまりに向かって突進し、ひょっとしたら「初雪や、それ、初雪や!」などと、いまいましそうにかけ声をかけつつ、猛烈な勢いで雪を掘ったんじゃないかと思う。
さてこちとらはどうしようか? 火箸を燃して遊びけりよりは、スルメを焼いて飲みにけりのほうがマシかもしれないね。
-おいおい、年賀状はどうした?
-この雨だ、今日はやらないよ。
Comments
>芭蕉が澄ました顔をして雪をかく姿は想像しにくいけれど、一茶なら話は別だ。
なるほどねえ・・・万葉集には橘諸兄・藤原仲麻呂のような歴史に名を残すような高官たちがいそいそと宮殿に集まって雪かきをしている様子が描かれてます(巻十七/3922・3926)が、これはそのあとの宴会がお目当てで…きっとご褒美中もでたんでしょうな・・・
http://wp.me/p3ce1f-11
Posted by: 三友亭主人 | December 18, 2015 07:58
>三友亭さん
ごほうびの酒を目当てに雪をかき、というやつですね。
三友亭さんも雪かきをしたくてウズウズしているのではありませんか?
Posted by: 薄氷堂 | December 18, 2015 22:52