« Daily Oregraph: 12月の雨 | Main | Daily Oregraph: 釧路駅裏を歩く つけたし »

December 13, 2015

Daily Oregraph: 入舟・大町無常の旅

151213_01_2
 入舟岸壁に車を停めて、大町まで往復わずか30分ながら、気晴らしのつもりで散歩した。

151213_02_2 
 みなさん熱心にチカでも釣っているのだろうか。趣味道楽なのか、大不況下の消費税増税にそなえて釣りの腕を磨いているのかは不明である。

 しかし敵は弱者を狙い撃ちにする非常識かつ狡猾な連中だ。どんな奇策を弄するかわかったものではない。

 時は203x年。制服に腕章をした臨時雇いの退職老人とおぼしき人物が海岸や河川を見回り、虎の威を借るなんとやら、えらそうな口調で、

 -ほう、チカが釣れたかい。ふん、52匹か、たいしたことないな。どれどれ(と黒革の手帳を開いて)、50以上80未満は500円ね。はい、税金を払ってもらおうか。

 -そんなアコギな。勘弁してよ。

 -ハンカクサイこというんでないの。文句あるなら法廷でいってね。はい、ありがとう。

 貧乏人から釣り税を取り立てるとは呆れた話だが、ほかに野菜栽培税というのもあって、一般市民がこっそり小松菜を栽培しようものなら、近所から密告されてしこたま税金を取られるのだからたまったものではない。

 結婚できるほど金のある若者はいまやめずらしく、相当の負担力ありと見て、近々結婚税も新設されるらしい。非正規労働者増加政策を進めておきながら少子化対策とは噴飯物だけれど、その少子化担当相がこのところ結婚を奨励しているのも実は税金目当てだと喝破したニュースキャスターが首になったことは、われわれの記憶に新しい。

 こういう息苦しい世の中ゆえ、岡っ引きの手下同然の下請け徴税老人は、当然みんなに憎まれるけれど、爺さんにも同情の余地はあるのだ。

 消費税は10%から12%、さらには15%と順調に増税されたのに、年金支給年齢はジワジワと後退し、健康保険料や介護保険料は跳ね上がり、社会福祉の質は低下する一方だ。生活が苦しいから悠々自適など夢のまた夢である。

 いまや観光地で湯水のごとく金を使うのはほとんど外国人というありさまだから、貧乏な日本人など相手にしない土産物屋の朝礼では、

-はい、大きな声で。 What can I do for you?  花子さん、声が小さいよ!

という情けない国になってしまった。排外主義のネトウヨは相変らず威勢だけはいいけれど、爆買いするほどの購買力を持ち合せているわけではなし、腹ぺこの野良犬が吠えるようなものである。

 お爺さんだって生活を維持しなければならない。夜には焼酎の一杯も飲みたかろう。いかに人に嫌われようとも、税務署から歩合制で支払われるわずかの報酬目当てに、痛む膝をいたわりつつ、必死になって歩き回り、容赦なく釣り税を取り立てるのも無理のない話ではないか。

 ……などと空想をふくらませているうちに、

151213_03_2 
幣舞橋が見えてきた。

 ゆったりと流れる釧路川をながめているうちに、時はふたたび2015年。いけない、いけない。つまらぬことを考えていては気晴らしにならないではないか。

151213_04_3 
 道東経済センター前に到着。

151213_05_2 
 このあたりの写真を撮ろうなどという奇特な人は……ここにひとりいたようだ。

 奇跡的に残った昭和風の一角を記録して、これより入舟方面に戻ることにしよう。

151213_06_2 
 おお、いくつかあったお店が廃業したのは知っていたけれど、まだ取り壊されずにそっくり残っていたか。

00071607_2 
 同じ場所を2000年7月16日に撮影したもの。

151130_02_2 
 入舟に来たついでだから、11月30日に撮った写真もお目にかけよう。つまらぬ写真を見せるな、というお叱りはごもっともなれど、

00080515_2 
この角地にはかつて木造家屋が一軒残っていたのである(2000年8月5日撮影)。

030928n04_2 
 これは同じ家の側面を撮ったものである(2003年9月28日撮影)。

 木造家屋一軒分の埋めようのない空白には、いつもながら驚くほかない。身代わりに罪を負ったキリストさんもろとも一軒の家が忽然と消滅してしまい、この家が存在していたことを知る人々もまた、いずれこの世から消え去ってしまうわけである。

 というわけで、気晴らしどころか、無常を噛みしめる散歩(笑)になってしまったようだ。

|

« Daily Oregraph: 12月の雨 | Main | Daily Oregraph: 釧路駅裏を歩く つけたし »

Comments

>結婚できるほど金のある若者はいまやめずらしく・・・

これはそんな先の話ではなく、今の状況のような・・・
私のようなものだって結婚できた時代があったっていうのに、たいへんな時代になったものです。

そんなことを思うと・・・やはり、気が滅入ってしまいますなあ・・・

Posted by: 三友亭主人 | December 13, 2015 at 22:49

>三友亭さん

 結婚・出産を困難にする状況を作り上げておきながら少子化対策ですからね、ふざけた話です。

 人口がどんどん減少し、しかも貧困層が増加しつつあるというのに、なおも経済成長を実現させようなどというのは錬金術師もビックリの無理難題だと思うんですけど、駄文学部には発言権なしですか(笑)。

 ここ数年のうちに福島原発から出っ放しの放射能がどう影響するかも心配ですしねえ……

Posted by: 薄氷堂 | December 14, 2015 at 10:04

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« Daily Oregraph: 12月の雨 | Main | Daily Oregraph: 釧路駅裏を歩く つけたし »