Daily Oregraph: 歳末千両の夢
まだ全面結氷には至らないが、春採湖の湖面はほとんど氷におおわれた。
スーパーはどこも大盛況で、駐車場は満杯、レジには長い行列が並び、不況を好況と強弁する大本営発表は本当かもしれないと一瞬錯覚しそうになるのも、歳末ならではだろう。
千両 冬・霜雪を凌いで、鮮やかな緑を失はないので、正月の鉢植、生花に用ゐられる。(角川書店編 俳句歳時記)
ほかに萬両という植物もあって、これらは一種の縁起物なのだろう。その気持は痛いほどよくわかる。しかし千両・萬両にはとても縁のない庶民にとっては、百両とて夢のような話だから、現実に手が届くのはせいぜい十両未満ではないだろうか。
いさゝかの金欲しがりぬ年の暮 鬼城
鬼城先生は戦前のお方である。いささかの金とは、たぶん現在の数万円程度ではないかと推測するが、先生のご心境は高級料亭に入りびたりの連中にはとてもわかるまい。
かく申すぼく自身は、花屋さんの店先に並ぶ千両を買えぬほど困ってはいないけれど、結局はちゃっかり写真を撮っただけ(失礼)。だがそれでは愛想がないから、せめて買ったつもりで……
千両を小銭で買ひし年の暮 薄氷堂
Comments
> いさゝかの金欲しがりぬ年の暮 鬼城
私の財布の中には、先日あった忘年会で参加者全員に一枚ずつ配られた「七億円」あります。
これさえ、その真価を発してくれたなら、「いさゝかの金」どころか、かなりの金額でも、「欲しが」らなくとも「年の暮れ」を過ごせるのですが・・・それどころか釧路辺りに別荘の一つも立て、夏の暑い盛りは涼しく過ごせるようになるのですが・・・なかなか・・・
いささかどころか、わずかのお金にもピイピイ言っております。
Posted by: 三友亭主人 | December 28, 2015 11:03
>三友亭さん
七億円火箸で燃して遊びけり
……てのはいかがですか?
Posted by: 薄氷堂 | December 28, 2015 18:23