Daily Oregraph: 美と距離
仕事でこんな場所にやって来た。ぼくが No. 1 ファンネル・マークと勝手に認定している郵船の二引きも、これほど近くから見るとさほど魅力を感じないのはなぜだろうか?
-それはな、距離の問題じゃよ。
-とおっしゃいますと?
-一体美が美として成立するためには適当な距離が必要なのだ。もっとも美しく見える距離というものがある。うるわしいディスタンスだな。
-へえ、そんなものですかね。
-考えてもみなさい。絵画にせよ、彫刻にせよ、顔をピッタリくっつけて鑑賞するバカはおるまい。その反対に、ハガキ大の写真を五十米も離れて見る間抜けもいまいが。ファンネル・マークなどは離れてながめるから値打ちがあるのだ。
-ハハハ、でも先生、美女なんかはいかがですか。うんと近づいてよし、少し離れてもよし、適当なる鑑賞距離に幅があるのでは?
-ばかもの。それだって適正な距離というものがあるわい。第一君などが接近しすぎれば、女に殴られるか蹴られるかするにちがいない。離れているにかぎる。君子女に近寄らず、だな。
なるほど、この先生、えらそうなことをいっているけれど、常に女性とは距離を置いているのも道理である。向こうからは絶対に近づいてこないし、こちらから近づいていけば逃げられる。鑑賞に最適な距離なんて取れるのかしら(笑)。
-おや、先生、どうなさいました? お顔の色が……
Comments
適当な距離って大切ですよね。
ですから私は妻にあんまり近づかないようにしている・・・
・・・内緒ですよ、内緒。
Posted by: 三友亭主人 | September 15, 2015 22:49
いや、これはこれでグッとくるものがありますよ。
近くで見ると相当デカいんでしょうね。
Posted by: 中川@やたナビ | September 16, 2015 13:10
>三友亭さん
しーっ、先生、声が大きいですよ。
物理の時間に習いましたけど、「男女間の距離は愛情の度合いの二乗に反比例する」という法則(?)がありますからねえ。
愛情が最高度に達すると距離はほとんどゼロになりますが、愛情が薄れると距離はみるみる長くなります。悲しいなあ。
しかし夫婦の場合は、ふつう適当なところで安定しますから、まさか近づいたからといって殴られるようなことはないでしょう(笑)。
Posted by: 薄氷堂 | September 16, 2015 19:56
>中川@やたナビさん
でかいです。バカバカしいほどでかいです(笑)。
Posted by: 薄氷堂 | September 16, 2015 19:58
>物理の時間に習いましたけど、「男女間の距離は愛情の度合いの二乗に反比例する」という法則(?)がありますからねえ。
これ、私も習いました。ただし物理ではなく化学で・・・
確か原子間の引きあう力・・・のことを習っていた時のことかと記憶しますが・・・
Posted by: 三友亭主人 | September 16, 2015 23:05
>三友亭さん
おやおや、実は習ったのではなく、ぼくが即席にこしらえた法則なんですが、世の中には同じことを考える人がいるもんですねえ。
でも実態に即した真理じゃないかと思いますよ。実例で示しますと、
はるか彼方から「ご飯ですよ! 何度も呼んでるでしょ」という奥方の声。
「わかってるよ!」と三友亭先生、読みさしの本を机に置いて、よっこらしょと立ち上がる。
さすがに食事のときは距離が縮まる……というのが、多くの日本の夫婦のありようでしょうね。
Posted by: 薄氷堂 | September 17, 2015 06:40