Daily Oregraph: 一夜の宿
おや、テントではないか。マンネリどころか、この場所でテントを目にしたのは初めてである。
しかも方丈記の先生の移動式簡便住居よりもはるかに小型のテントで、まさに「旅人の一夜の宿を造り」というやつだ。いかなる世捨て人のここに宿るらん、と気になったことは申し上げるまでもない。
避暑などという生やさしいものではなく、釧路はこのところ寒いくらいだ。しかもこの辺はキタキツネの出没地帯でもある。ガタガタ震えながら眠れぬ夜を過ごしていたら、猿の声ならまだしも、ギャーッというキツネの鳴き声が間近に聞こえて、腰を抜かすかもしれない。ポケット壜のウィスキーでも飲まなければやりきれないだろう。
ふしぎな人もいるものよと呆れつつ知人の路地にさしかかると、先日の眠り猫がうずくまっていた。今日は目を開いているけれど、カメラを向けても微動だにせず、あいかわらず超然たる態度であるのには感心した。
おまえヒマそうだから、伴うべき人もないテントの主を慰めに行ってはどうだ?
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