Daily Oregraph: 裏庭画報 エゾノシモツケソウ
いまにも雨の降りそうな曇り空。風が強い。これはエゾノシモツケソウ……だろうと思うが、春採湖畔で撮った写真と比べると少し感じがちがう。
背景に見えるのはナナカマドの幹である。いつの間にか切り倒そうにも素人の手には負えないくらい太くなってしまった。教訓。木は慎重に植えるべし。
ウォーの旅行記はやっと半分ほど。予想どおりわりと気楽に読める作品なのにペースが遅いのは、ほかの本を併読しているせいもあるけれど、毎日なにかと雑用が多いからだ。一日中寝転がって読書に専念するのが理想だけれど、世の中そう甘くはない。
そういえば、学校の卒業が決まってから一週間ほど、トイレ以外は部屋から一歩も出ずに本を読んでいたことがある。食料はどっさり買いこんだインスタントラーメンのみ。おかげで胃腸をすっからやられてしまったが、ほろ苦くもなつかしい思い出である。
そういう自由が得られたのもひとり暮らしなればこそだ。ああ、ひとりになりたい(笑)。そうだなあ、いまそうできたら、もちっとましな食い物とスコッチをまとめ買いして籠城するだろう。引きこもりのジジイというのも悪くはない。
一週間も姿を見せなければ、さすがに近所の人も怪しんで、あの爺さん孤独死したのではないかと疑うかもしれないけれど、孤独死のほうが戦死よりははるかにマシだから、それもまた悪くはない。
部屋の中に踏みこんでみると、あたりにはスコッチの空壜が散乱し、右手には飲みかけのグラス、左手にはボロボロの辞書……壮絶な死である。さぞかしこむずかしい本を読んでいたのであろうと読みさしの本をのぞいてみれば、何ぞはからん、19世紀のエロ小説ではないか。
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Comments
う~ん、望ましい「末期」のありかたの1つですなあ・・・
さしづめ、私なら散乱した一升瓶と飲みかけの湯呑み茶碗・・・ってところでしょうか。
読みさしの本は・・・何がいいかな?
ちょいと考えておきます。
Posted by: 三友亭主人 | July 11, 2014 06:19
>三友亭さん
よく「無人島へ持っていく一冊」というのがありますけど、「死に際の一冊」というのは聞きませんね。ご臨終のときはたいてい本を開く元気もなくなっているからでしょう。
しかし一冊選んで、辞世の句がわりに枕元に置いておくのも一種のダイイング・メッセージになると思います。爺さんの最後の一冊がエロ小説というのは、けっして悪くないような気がするんですよ。
人間的な、あまりに人間的な……(笑)
Posted by: 薄氷堂 | July 11, 2014 18:14