Daily Oregraph: マスマス……
どんな小説も四分の一も読めば「マスマスよみやすく」なるものだが(笑)、ピカデリー・ジム君はおもしろいけれどなかなか手ごわい。
最初にひっかかったのはクリケットの試合の描写。辞書をひきまくったけれど、定義に用いられている用語自体がさっぱりわからないのだから、迷路にはまりこんだようなものである。なんとも複雑な競技というしかない。
しかし登場人物であるアメリカ人にもクリケットはまるで理解できないという設定だから、ぼくがわからなくても恥にはなるまいと考えて、その場面は適当に読み飛ばした。どうせ量子力学とクリケットには一生縁はあるまい。
次にひっかかったのがこちら。
as rocky and ding-basted as stig tossed full of doodle-gammon
たぶんとんでもなくみじめな状況の形容なのだろうが、正確なところはさっぱりわからない。第一 'stig' なんて単語は見たことがない。ネット検索してみたら、ある人のサイトに、「意味はよくわからないが、上等のワインを舌で転がして味わうように味わうべき表現である」てなことが書かれていた。
たとえば「オッペケペーのペーポッポ」といえば、意味は不明でも、日本人ならなんとなく感じがわかるけれど、それに近いものだろうか。あるいは『坊ちゃん』に登場する「(前略)わんわん鳴けば犬も同然な奴」という表現にやや似ているのかもしれない。
いずれにしても、英語国民がわからんというのだから、ぼくがわからなくたっていいということにしなければ先へ進めない。しかし19世紀の文章のほうがわかりやすいというのも困ったものである。
もちろんわからないことばかりではない。ひどい二日酔いなのに迎え酒をしようというジム君のセリフを歌舞伎調にしてみると、
おう、酒をくんねえか。なに、たんとはいらねえ。風呂桶に二杯(にへえ)もあればいい。
グラスが大きくなりました、マスマス飲みたくなりマス。
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Comments
>意味はよくわからないが、上等のワインを舌で転がして味わうように味わうべき表現である
しかしまあ、分かったようなわからないような注ですね。
甘いか、辛いかも判断できないように「味わう」ことなんてできるのかしらんなんて思ったりもしますが、そこはそこ、わかる人にはわかるんでしょうねえ・・・
Posted by: 三友亭主人 | June 03, 2014 20:00
>三友亭さん
なんとなく「いやーな感じ」を表しているのだろうという見当はつくんですけど、隔靴掻痒の見本ですね。
しかし理解しきれないところが残るのは母国語の文学作品だってあることですから、ここは「こんなのわかるはずねえよ」と開き直るのもひとつの道でしょう。あと何年かしたら、もう少しよくわかるようになるかも知れませんしね(その前にあの世へ行ってしまうかも(笑))。
Posted by: 薄氷堂 | June 03, 2014 21:02