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May 29, 2014

Daily Oregraph: 裏庭画報 花散りしあと

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 エゾヤマザクラの花がすっかり散って、裏の畑はごらんのとおりにぎやかである。

 手前に見えるのは小松菜の芽だが、このところ道内では釧路だけひどく気温が低いため、なかなか成長しない。口入屋と悪代官の仕切るブラックなお上に対抗して野菜栽培をしているんだから、頼むぜ、おい。

 さて今日から読みはじめたのは P. G. Wodehouse(ウッドハウス 1881-1975)の Piccadilly Jim。モームの小説でやっと19世紀から離れたわけだが、20世紀の世界にもっとなじむには格好の小説だろうと思ったのである。しかしこれはこれで口語や俗語が多いから、案外読むのに手間がかかる。とてもスピード・ラーニングとはまいりませぬ。

 ウッドハウスは英米では超有名なユーモア作家だけれど、その割には日本では読まれていないような気がする。どういう文章を書く人か、以前引用文集から拾ったものをひとつだけご紹介しよう。

    アガサおばさん--このおばは、割れたビンを食べて、
  鉄条網を肌にまとっているのだ。


 このとおり、吉本のお笑いとはずいぶんちがうから(笑)、あまり日本人受けしないのかもしれない。

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May 28, 2014

Daily Oregraph: 三十年以上かけて小説を読む話

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 数日かけて The Moon and Sixpence を読み終わった。

 この小説は、三十年以上も昔に、78頁まで読んで放り出してしまったのだが、けっしてつまらなかったからではない。勉強のために読むなら話は別だけれど、そうでなければ、小説というのは勢いに乗って一気に読み切るべきものである。たぶん当時仕事かなにかの都合で中断を余儀なくされ、いつの間にか読みつづける気力を失ったのだろうと思う。

 あまりにも有名な作品だから、いまさら高校生みたいな感想文を書くつもりはないけれど、ちょっとだけ。ぼくがもっとも感心したのは、重要な脇役である Dirk Stroeve (これ、ストレーヴと読めばいいのかな?)だ。主人公を食ってしまうほどうまく書けていると思う。

 描写が冴えているから、登場人物も情景もすべて輪郭がくっきりと浮かんでくるし、プロ中のプロの小説家のすごみを感じた。ちょっとうますぎるんじゃないかと思うほどである。

 ついでに嫌われるのを覚悟の上でいうと、人間観察の達人であるモームの小説は、お手軽な自己啓発本や人生修養書のたぐいに満足している人々にとって、よい解毒剤になるのではないだろうか。

 ……とかなんとかえらそうなことを書いているうちに、またウイスキーが一壜空になってしまった。 

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May 23, 2014

Daily Oregraph: 十勝絵日記 5月23日

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 4月にご紹介した野塚川と豊似川につづいてお目にかけるのは紋別川。アイヌ語のモ・ペツ(遅い川)から名づけられたらしい。

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 こちらが上流側。北海道もようやく緑の季節を迎えたことがおわかりになると思う。

 いまならまだ虫も少ないし、こんな河原で一日中ボーッとして車で寝泊まりする旅も悪くはないが、要するに移動ホームレスだから(笑)、なかなかふんぎりがつかない。

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 写真を撮ったのはこのコスモ大橋から。なぜ「コスモ」なのかはさっぱりわからないけれど、まさかアイヌ語ではあるまい。

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 いかにも十勝らしい景色である。

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 おや、と思ったのがこのツル。頭のてっぺんの朱色は確認できないが、どう見てもタンチョウである。生息範囲が拡大しつつあるとは聞いていたが、十勝(豊頃町長節付近)で目にするのは初めてだ。

 仕事帰りにのんきなドライブを楽しんだはいいけれど、頭が空っぽになってしまった。明日からどないしよう?

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May 19, 2014

Daily Oregraph: 仕事の合間に

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 本日の船上セキュリティ・チェックポイント。ふだんは正面から撮るのだが、今日は裏側からねらったので、ちょいとアット・ホームな感じが出たと思う(?)。

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 これはひさびさの偶然芸術。配置の妙というやつである。美的センスのある乗組員もいるものだ。

 ただ不思議なのは、どうしてブーツが片方だけなのかということ。もう片方はどこにあるのか、気になってしょうがない。

 待てよ、今気づいたけど、こっちは左舷だから、残りは右舷側に干してあるのかな? しまった、確かめればよかった(笑)。

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May 18, 2014

Daily Oregraph: 裏庭画報 しらふで花見

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 エゾヤマザクラが見頃を迎えた。花の下で一杯やるつもりだったが、あいにく腰かける場所がないから、無粋にもしらふとは情けない。

 重箱を開けて玉子焼や蒲鉾なんぞをつまみながら、杯を重ねてほろ酔いになれるのならいうことはないけれど、うっかり小松菜の芽を踏みつぶさぬよう足元に気をつけるためには正気を保たねばならない。小百姓はつらいのである。

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 隣家との境界をなす崩れかかった板塀際に目を転ずれば、気位の高いお嬢様、いやオオバナノエンレイソウの小群落が、これまた今が見頃である。

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 そしてその手前にはニリンソウが群れている。板塀を隠して写真を撮れば、ちょっとした庭のある旦那様になった気分だが、これぞ「写真はウソをつく」いい見本であろう。

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 色白のチシマザクラ。こいつは木が弱ってきたらしく、花の付きがよくない。しかもこの木は微妙な位置にあり、引いて撮るのがむずかしい。一押しでバタリと倒れてしまいそうな板塀や、電信柱や電線、それに近くの人家などが画面に写りこむのである。

 それでは立派なお屋敷の大旦那でないことがたちまちばれてしまうから、目が悪いうえに手が震えるのに(笑)、無理な姿勢でうんと寄って撮らねばならない。


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 昨日の強風で吹き落とされたエゾヤマザクラのつぼみと、めでたく発芽したダイコン。ほんとうに食えるようなダイコンができるのだろうかと気になり、結局は花より大根というおそまつ。

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May 17, 2014

Daily Oregraph: 裏庭画報 チシマザクラ

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 二日つづけて天気が悪かったけれど、今日は雨が上がったのでちょっとだけ草むしりをしに裏庭へ行き、チシマザクラの開花を確認した。

 あいにくの曇り空で色は冴えないし、ずいぶんシャッターを切ったのだが、風が強くてどれもブレぼけ。まあ、証拠写真といったところである。

 『水滸伝』を読み終えたが、やはりこの小説はお上に反逆している間が命であって、梁山泊の一味が朝廷に帰順したとたんに話はつまらなくなる。結局海千山千の高級官僚どもの奸計によって、損な仕事をさせられた挙句使い捨てにされてしまうのはご承知のとおりだ。

 どこまでも小役人根性の抜け切れぬ宋江が首領という設定はどうも納得できないのだが(笑)、残りの人生は自由気ままに生きたいという何人かの仲間が、目の前にぶら下がった仕官栄達の道を捨てて抜けていく最後の場面に、案外「お国のため」という呪文のむなしさへの抵抗精神がこめられているのかもしれない。

 さてお次は何を読もうか……一杯やりながら考えることにしよう。

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May 16, 2014

Daily Oregraph: 南小樽駅

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 四月某日。ネタ切れの日は以前撮った写真でお茶を濁すのが一番。

 駅舎の写真を掲載するのはひさしぶりである。何の変哲もない駅舎ではあるが、地面の傾斜からも、さすが小樽は坂の町であることがおわかりいただけると思う。

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 駅舎は無趣味そのものでも、ホームからの景色は純然たる昭和風で、なかなか味がある。当社としては、勝手に北海道遺産に認定することにした。

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 駅前から港へ下る坂道がまたいい。

 この日はいわばロケハンで、たいした写真は撮っていない。しかし南小樽駅から小樽駅へ向かうコースは散歩に最適であることを確認したので、いずれ日を改めてゆっくり歩き直してみたいものである。

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 途中省略して、こちらはおたる都通り。今年はじめて日傘をさしたおばさまを見かけたのでシャッターを切ったもの。

 あいかわらずしょうもない写真ばかりで申し訳ないが、目下『水滸伝』に専念しているのでご勘弁のほどを。

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May 14, 2014

Daily Oregraph: 裏庭画報 開花宣言

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 いつもの年より約一週間早くエゾヤマザクラが開花した。チシマザクラもここ二三日のうちには咲きそうな勢いである。もう春でないとはいわせない……というか、歳時記ではもう夏なのだが。

 満開になったら、芋焼酎のオンザロックを片手に花見をしなくちゃね。そこのあなたも一杯ご馳走してあげるからいらっしゃい。

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 5月3日に種をまいた小松菜も芽を出した。お上の悪政に対抗してジジイが生き延びるには野菜だけが頼り(笑)、消費税が上がるたびに種を多くまこうと思っている。せっせと水をやるから大きく育っておくれ。

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May 11, 2014

Daily Oregraph: 裏庭画報 オオバナノエンレイソウ

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 畑に水をやりに行ったらオオバナノエンレイソウが開花していた。

 ぼくはどちらかというと大柄な花は好みではないのだが、こいつはきらいではない。パリッと糊のきいた白い布地を思わせるところに気品を感じるのである。すれっからしのおねえさんではなく、清潔な制服を着たミッション系のお嬢様といったところであろうか。

 しかし十分すぎるほど色気があるから、ついふらふらと近寄れば……

 -だめだめ、ここはあなたみたいな汚いおじさんの来るところじゃないわ。

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 ちぇっ、ばかにしていやがる。汚いおじさんで悪うこざいましたね。

 その点、にぎやかに咲くニリンソウはずっと庶民的でよろしい。ツンと澄ましていないところが値打ちだけれど……

 -あら、いやね。またあのださいおじさんよ。

 ごらんのとおり、花はどれもそっぽを向いており、結局天はわれに二物どころかなにも与えなかったとみえる、ああ。

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May 09, 2014

Daily Oregraph: 港の空気…をちょっぴり

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 5月8日の船上セキュリティ・チェックポイント。

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 チェックポイントを撮影したのは、写真の船である。腕が悪いから(デジカメが安いせいではない(笑))、港の朝の空気など伝わらないだろうけど、足りないところはどうか想像力で補っていただきたい。

 さて畑に種をまいて一安心したところで、ひまつぶしに昔二度ほど読んだ『水滸伝』をもう一度読みはじめた。こっぱ役人どもが散々に蹴散らされるのを読んで憂さ晴らしをしようという作戦だが、さて憂さは晴れるかどうか……

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May 07, 2014

Daily Oregraph: 港の空気

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 本日の船上セキュリティ・チェックポイント。ひさびさに港の風に当たったが、実に爽快である。昔覚えた文句をもじっていえば、港の空気は人を自由にする。ああ、それは港じゃなくて「都市」だろう、と見抜いたお方は年が知れる(笑)。

 さて自由の身になったはいいけれど、次はなにをしようか考えあぐねている。ぼーっとして日なたぼっこというのも悪くはないが、そこはぼくも日本人のはしくれ、とても耐えられそうにない。

 若い頃なら塩せんべいをかじりながら手当たり次第に本を読んでいるところだが、目が弱くなったせいもあって根気がつづかない。三友亭さんに万葉集の講義をしていただければさぞ愉快だろうが、奈良は遠い。

 モスクワへ行って、きれいなおねえさんにロシア語を習うのもおもしろいだろう。『嵐が丘』の舞台を実地で見物するのも一興だ。しかしパスポートの申請からはじめるのは面倒でしかたがない。しかも旅費がつきて異国でホームレスになる恐れもある。

 やはり家で酒をくらっているのが一番安全というつまらない結論に達したのだが、はて酒を飲みながらなにをしたらいいのだろうか? ああ、青春の悩みはつきない。

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May 05, 2014

Daily Oregraph: 花も嵐も……

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 今年もカタクリが咲いたのはうれしいけれど、花の開きぐあいがおかしい。どの角度から見ても絵にならないのである。どうも虫に食われたらしいのだ。

 写真左手の葉などは食われて大きな穴が開いているし、後ろに見えるもう一輪は花が傷んでいるらしく、まったく開こうとしない。今年も虫との戦いを覚悟せねばならないようだ。

 さて『嵐が丘』の注釈作業がやっと一通り終り、まずはめでたし。なぜほぼ一年も要したのかは、お読みいただければきっとおわかりになるだろう。まだまだ不備もあるし、誤りも少なくないとは思うが、これほど詳しい注釈書はたぶんわが国ではほかにないのではなかろうか(と、ちょっぴり宣伝するくらいは、これまでかけた時間と労力に免じて、どうか大目に見ていただきたい)。

 ぼくのように鈍才であるということには利点もある(笑)。「なにがわからないか」をよく知っているからである。凡人のつまらぬ疑問にていねいに答えるというのは、なんでもスラスラと理解できる秀才諸君にはなかなかできない芸当だろう。 

 なんでも損得ずくでものを考える人なら、あるいはいうかもしれない。「160年以上も昔の古くさい文章を読んでなんの得があるのだ」と。

 お答えしよう。あなたにとってはなんの得もないだろうと。しかし一文にもならぬ仕事ではあったが、ぼくにとっては得るものがたしかにあった。生きたかいがあった、これで安心して死ねるとさえ思っている。 

 ひょっとしたら十万人にひとり、多少なりとも価値を認めてくださる方が現れるとすれば、望外の幸せである。

 明日からは好き勝手なことをしようと思っている。

【追記】 鉛筆を持ったり辞書を開いたりしながらキーボードを打ったため、注のところどころにつまらぬミスタイプが残っています。気づいた都度訂正しますので、最初のうちは頻繁にアップロードし直すと思います。常に最新版をご利用ください。

 ブログ上からPDFファイルをいったん開くと、次にブログにアクセスしたとき勝手にファイルが開いてしまうため、ZIPファイルに変換いたしました。なかなかうまくいかないものです。

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May 03, 2014

Daily Oregraph: 裏庭画報 百花繚乱

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 二日ぶりに上天気になったので、鍬をかついで裏庭へ来てみたら……おお、いっぺんに花々が咲いているではないか。

 百花繚乱とは中国風の誇張にしても、まさにそういいたくなるほどのにぎわいである。野暮無風流が売り物のおじさんの胸も自然とワクワクしてくるのであった。

 まずはアズマイチゲ。イチゲの仲間では彼女が一番の器量よしではないかと思う。

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 キバナノアマナ。

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 いまや貴重なウラホロイチゲ。今年もたくさん花を咲かせてくれた。完全に根づいたのである。

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 エゾエンゴサク。個体によって濃淡さまざま、色合いも微妙に異なる。ちょっとエロティックに感じるのは、見る者の心が濁っているせいかもしれない(笑)。

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 一番遅く開花したニリンソウ。これだけがたった一輪。葉陰にツボミがいくつか見える。見頃はこれからだ。

 明日にでも雑草を始末するつもりで、今日は畑の表面に鍬を入れたのだが、写真をそのあとに撮ったのは大失敗であった。風で花が揺れるところへもってきて、手がブルブル震えてピントが合わないのである(酒のせいではないぞ)。

 やっとさわやかな季節が巡ってきたからには、もう少し活動的にならねば……

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