Daily Oregraph: 花も嵐も……
今年もカタクリが咲いたのはうれしいけれど、花の開きぐあいがおかしい。どの角度から見ても絵にならないのである。どうも虫に食われたらしいのだ。
写真左手の葉などは食われて大きな穴が開いているし、後ろに見えるもう一輪は花が傷んでいるらしく、まったく開こうとしない。今年も虫との戦いを覚悟せねばならないようだ。
さて『嵐が丘』の注釈作業がやっと一通り終り、まずはめでたし。なぜほぼ一年も要したのかは、お読みいただければきっとおわかりになるだろう。まだまだ不備もあるし、誤りも少なくないとは思うが、これほど詳しい注釈書はたぶんわが国ではほかにないのではなかろうか(と、ちょっぴり宣伝するくらいは、これまでかけた時間と労力に免じて、どうか大目に見ていただきたい)。
ぼくのように鈍才であるということには利点もある(笑)。「なにがわからないか」をよく知っているからである。凡人のつまらぬ疑問にていねいに答えるというのは、なんでもスラスラと理解できる秀才諸君にはなかなかできない芸当だろう。
なんでも損得ずくでものを考える人なら、あるいはいうかもしれない。「160年以上も昔の古くさい文章を読んでなんの得があるのだ」と。
お答えしよう。あなたにとってはなんの得もないだろうと。しかし一文にもならぬ仕事ではあったが、ぼくにとっては得るものがたしかにあった。生きたかいがあった、これで安心して死ねるとさえ思っている。
ひょっとしたら十万人にひとり、多少なりとも価値を認めてくださる方が現れるとすれば、望外の幸せである。
明日からは好き勝手なことをしようと思っている。
【追記】 鉛筆を持ったり辞書を開いたりしながらキーボードを打ったため、注のところどころにつまらぬミスタイプが残っています。気づいた都度訂正しますので、最初のうちは頻繁にアップロードし直すと思います。常に最新版をご利用ください。
ブログ上からPDFファイルをいったん開くと、次にブログにアクセスしたとき勝手にファイルが開いてしまうため、ZIPファイルに変換いたしました。なかなかうまくいかないものです。
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Comments
ご労作、パラパラと眺めさせていただきました。
>十万人にひとり、多少なりとも価値を認めてくださる方
出来れば私がその一人に・・・との思いは誰にも負けないのですが、あいにく英語のほうは・・・その価値を認める云々のずーっとずーっと以前の段階にとどまっているものでして・・申し訳ありません。
こんな事があるんだったら、もう少し英語を勉強しておけばよかったと・・・
ところで、一番上のカタクリ・・・いいですね。好きな花です。
でも、大和ではあんまり見かけないんですよね・・・
Posted by: 三友亭主人 | May 06, 2014 23:06
>三友亭さん
> パラパラと眺めさせていただきました。
えらい! 日本政府が乱発する勲章よりもはるかに値打ちのある、勲一等奇特功労大勲章を進呈いたしましょう。副賞は芋焼酎一本。え、副賞だけでいいって(笑)。
今年のカタクリは虫にやられて、見るも無残な姿ですが、それでも咲いてくれたのはありがたいことです。毎年たったの二輪だけですが。
Posted by: 薄氷堂 | May 07, 2014 21:54