Random Haiku House 元日編
写真は全国一千万の釧路ファンにお贈りする元日正午頃の幣舞橋。夜半からの雨が早朝雪に変ったけれど、もうずいぶん融けている。
ではまずコンピュータよりも出来の悪い一句から。
めでたいと君がいふから初詣 薄氷堂
……といふわけで(笑)、信仰心などまるでないくせに、彼女といっしょに歩きたい一心で神社に詣でた若者も多いことだろう。それでいいと思う。神社の平和利用である。よからぬ魂胆があって政治的に利用するよりはずっとマシというものだ。
なおぼくにはそんなしゃれた彼女がいるわけもなし、今年はめんどうだから神社には行かなかった。相変らずのバチあたりである。
さてパソコンで強引に作った五七五、ちょいと予定を変更し、昨日出力したテキスト・ファイルの上五を「元日や・元旦の・初春や」などに置換していくつか選んでみた。まじめな作家のみなさまから見ればまことにけしからん話かとは思うけれど、一種の福笑いみたいなものなのだから、新年に免じておゆるしいただきたい。
新年といえばまず酒である。
元旦や髪ふりみだし酒二合
ぼくの知り合いにはそんな人はいないけど、世の中は広いものだ。しかしたった酒二合で髪をふり乱すようでは修行が足りない。
元日に酔つて倒れる愚かさよ
これは教訓めいているからつまらない。心学の先生あたりが作りそうな句である。
元日や女は酔ひて草を刈る
南国の農家であろう。夫との仲がしっくりいっていないのだ。もうじき消費税も上がることだし、茶碗を投げつけて割れば損をする。ストレスは草を刈って発散するのである。
元日やよろめき歩く女学生
初空やほのぼの赤き受験生
どうやら二人は恋仲らしいから、これら二つの句はペアで鑑賞したい(笑)。正月だから飲酒くらい大目に見てあげよう。
お次は旅の空で新年を迎えた人々。
元日や隣の女房一人旅
夫婦仲が取り立てて悪いというわけではない。夫は長く休暇を取れぬから、女房ひとりでハワイかグアムに出かけたのである。身勝手な女だ、などと思ってはいけない。亭主はかえって気楽なくらいで、各種アルコール飲み放題だから、まことにめでたい話なのである。
初風やわれも旅人伊豆の海
元旦やうつくしき人一人旅
一月や浮世を捨てて風の中
堂々たる月並調である。町内会報の俳句欄なら入選するかもしれない。
元旦や犬吠えかかる山の駅
元日や人を恐るる旅の人
第二句の鑑賞にはほんの少しだけ想像力を必要とする。なんとこの旅の人は指名手配犯なのである。こっそり山を降りた国定忠治というところか。
元旦や靴紐解けて嵐山
これなどはちょっといいかなあと思う。元旦であること、靴紐が解けたこと、そして嵐山に来ていることとの間には、なんの因果関係もない。それなのになんだか実際にありそうなところが値打ちであろう(?)。
月並調といえば、ほかに、
元旦や机のうへの冷たさよ
元旦や氷流るる運河かな
元日や肩すぼめゆく釧路川
特に第二句などは、恥ずかしくて顔が赤くなるほどの月並調といえよう。「運河かな」はもちろん「釧路川」や「アムール川」でも一向にかまわない(さすがにアマゾン川やメコン川は無理)。
最後はコンピュータならではの作品。
一月やわれを呼ぶ声墓の上
ゴシック・ロマンの伝統を受け継いだ一句である。Heathcliff が Cathy の霊に誘われたとでもいうところ。
元日に隣の女房鯉のぼり
きのどくに隣の細君は精神に少々異状をきたしたらしい。しかし正月の澄んだ空にひるがえる鯉のぼりは案外悪くないような気もする。
最後に、どこがいいのか聞かれても答えようはないけれど……
元日や夜のむかうに赤い花
正月早々汗ダクダクというところだが、明日もう一度だけ駄句におつきあいいただいたいと思う。
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Comments
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
前回の記事の内容になってしまいますが、かのお馬さん印のウイスキーのグラス・・・私も愛用中でして・・・
それにしても正月早々、この創作ペース、すごいですねえ。
Posted by: 三友亭主人 | January 01, 2014 20:07
>三友亭さん
おめでとうございます。
ホワイトホースは千円スコッチの中ではもっともまろやかですから、すいすい飲めますね(飲み過ぎちゃいけないんですけど)。
無季ですが、
味酒の三輪の人には白き馬 薄氷堂
> 正月早々、この創作ペース、すごいですねえ。
なあに、機械が作るんですから(笑)。
Posted by: 薄氷堂 | January 01, 2014 20:45