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January 04, 2014

Random Haiku House フィクション編

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 夕方ほんの少しだけ雪が降った。こういう晩には、一杯やりながらしみじみ俳句を味わうと、たぶん幸せな気分になれるだろう。

 パソコンで俳句を作るなどずいぶん無理な話であることは百も承知しているけれど、人間には考えつきそうもない句が偶然できあがることもあるから、そうバカにしたものでもない。

 もちろんとんでもない句のほうが圧倒的に多い。

   
夏近しころもを脱ぎて火燵かな

   冬晴やころもを脱ぎて風の中

   浴衣着て歳末の街ほどほどに

   なんとなくほれた女は牛の声

   尼寺やすがりつく手に釘を打つ


 もう滅茶苦茶である。第二句などは昭和基地かスエーデンあたりなら通用するかもしれないが、PTAから苦情の出そうな最後の句には絶句するしかない。

 中にはすなおに解釈できるものもある。

  とろろ汁思ひがけなき夜の旗

 ああ、なんとかしてとろろ汁(秋の季語)を食いたいものだと思いながら夜の町を歩いていたら、「とろろ汁」と大書したのぼりをみつけたのである。このようにちゃんと説明がつく例をもうひとつ。

   家を出て葉書一枚女学生

 これは家出少女。「お父さん、お母さん、私はもう帰らないけど心配しないでください」とかなんとか書いてあったにちがいない。意味が通りすぎてつまらないか。

 意味はよくわからないけれど、ことばの組合わせがおもしろく、捨てがたいものもある。

   
水平線うごく時きて人病めり

   じわじわと寄せ来る波の別れかな

   遠雷や夜のむかうにしがみつく


 第一句、動かぬはずの水平線が動くイメージは悪くないと思う。第二句、やや月並調ではあるが、こういう別れもありそうだと思わせるところがいい。第三句は、すぐ隣にいる恋人ではなく、正体不明の遠くのものにしがみつくところにちょっと味がある。

 最後に、パソコン俳句らしいと思ったものを。

   空を飛ぶ雨にぬれたる少女たち

   火花散る猫抱きあげて機関室


 第二句の火花と猫とは無関係であるとも取れるが、火花を散らす電気猫だと解釈したほうがおもしろい。こういう猫が宮澤賢治の童話に登場してもおかしくはないし、機関室という場所とも調和している。もちろん電気猫を抱き上げた機関長は山猫博士(笑)。

 今回の作品(?)を読み返して感じたのは、パソコンらしいものには無季の句が多いということである。どうやら季節感のないもののほうが得意らしい。

 他愛のない正月のお遊びはこれまで。明日からはマジメにやろうホトトギス。

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Comments

今夏のお気に入りは・・・

「なんとなくほれた女は牛の声」

ですね。

でも・・・文学研究の目的の一つは作者の製作動機やら、その心情に迫るというもの・・・

この作品の場合は、何に迫っていいのやら・・・

Posted by: 三友亭主人 | January 05, 2014 at 20:41

>三友亭さん

 う~む、変ったご趣味ですね(笑)。

 作者の製作動機ですが、特に月並調の場合、単なる受けねらいというのもありそうです。つまり見てきたようなウソも混じっているわけで、そういうのはパソコン俳句とあまり変らないような気もします。

 「なんとなく」はどこにも迫りようのない(笑)、わけのわからぬ句ですが、しいて解釈すれば、女に気のあるところを見せたところ、「やあね、この人ったら、モー」と鳴いたのでありましょう。

Posted by: 薄氷堂 | January 06, 2014 at 12:03

明けましておめでとうございます。
ご無沙汰しておりましたが、ときどき覗かせていただいています。
小学校の修学旅行のバスレクで、五・七・五で遊びました。
頓珍漢な組み合わせで、大爆笑でしたが、最優秀賞に輝いたものはなかなかの出来だったように記憶しています。
パソコンで一人遊びができるなんて、素敵ですね!
「尼寺…」はハムレットを、「水平線…」はマクベスを連想しました。
見えるはずのない風景が見えるのが面白いなと感じました。

Posted by: 聖母の鏡 | January 10, 2014 at 00:43

>聖母の鏡さん

 おめでとうございます。

 デタラメな五七五でも、けっこう暇つぶしにはなるものです。それぞれ280語(いくらでも増やせますが)ずつあるので、約2,195万句できあがる計算になります。

 さすがに全部確かめるのは無理なので(笑)、今回は3万数千句出力した中から選んでみました。

 「尼寺」の句は「すがりつく手に」まではいいとしても最後がちょっと……(笑)。

 「水平線」の句からマクベスを連想されたというのはさすがです。

Posted by: 薄氷堂 | January 10, 2014 at 10:08

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