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October 06, 2013

Daily Oregraph: 裏庭画報 ナナカマド

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 赤い実がしみじみと秋を感じさせるナナカマド。

 鈴なりになった年もあるのだが、今年はずいぶん実が少ない。ひどく気まぐれな木なのである。

 しかし枝ぶりはなかなかいい。これほどの木があるのだから、よほどの豪邸に住んでいるとお思いかもしれないけれど(?)、なあに、鴨長明の方丈を拡大したほどのボロ家ですよ。

 さてネタがないから、また歳時記でも開いてみようか。

   こゝよりのホテルの道のなゝかまど   野村泊月

 希代のプレイボーイ三鬼先生の影響を受けたせいか(笑)、まるでお人柄のちがう泊月先生の句からもつい男女の密会を連想してしまうのは悪いクセである。例によってデタラメな想像をしてみると……

 もちろん若い男女ではない。つまり娘役原節子ではなく父親役笠智衆の年代であろう。もちろんのちの御前様もまだこの頃はずっと若かった。妻に先立たれ、後妻をもらおうかどうか迷っているところ。

 実は彼には意中の人がいた。ときどきこっそり会っているのである。後添いのいない父を心配して嫁に行こうとしない娘を安心させたいという気持もある一方で、気恥ずかしくて再婚をいいだせない彼の心は揺れている。

 二人はつかず離れず、微妙な距離を保ちながら、無言で歩いている。

 -あら、きれいな実。

 女が立ち止まってそういうと、男はその視線を追って、

 -ああ、ナナカマドだねえ。(ここは笠智衆独特の口調を思い出してね)

 カメラはいったん赤い実のなるナナカマドの枝をアップにしたあと、少しずつ引いて、ナナカマドの木と、並んでそれを見上げる二人の背中へ。

 う~む、映倫には引っかからないけど、またしても松竹大船調だなあ(笑)。どうしたら呪縛から逃れられるだろうか?

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Comments

関西に住み始めて、しばらくの間ナナカマドの存在を忘れていた私・・・ある年仕事の関係で、紅葉時分にとうほくに行く機会があって、その赤の見事さにびっくりしたものでした。

関西ではあんなに赤くなる植物はないんですよね・・・外来のやつ以外には・・・

Posted by: 三友亭主人 | October 06, 2013 21:52

>三友亭さん

 住んでいたときには気づきませんでしたけど、関西にはナナカマドはありませんでしたっけ。

 あの赤い実は秋のシグナルのひとつ。見た目はうまそうなのに、渋くてとても食えたものじゃないのが残念ですけど。

Posted by: 薄氷堂 | October 07, 2013 07:47

>なあに、鴨長明の方丈を拡大したほどのボロ家ですよ。

わびさびの観点から言えば、でかすぎる家は無粋ですね。
芭蕉を眺めて風流を感じる俳人よりは
ナナカマドのほうが古風ですね。

Posted by: 根岸冬生 | October 07, 2013 16:57

>根岸冬生さん

 わが家は決してでかすぎもしないし、かなりボロいですけど、長明先生から見れば十分無粋だろうと思います。

> ナナカマドのほうが古風ですね。

 主は古風どころか古くてガタがきていますよ(笑)。

Posted by: 薄氷堂 | October 07, 2013 22:36

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