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August 30, 2013

Daily Oregraph: ぐりはま まいうー

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 写真は本文とはまったく関係がない。某日某所で撮ったもの(顔をホカシ処理してある)。しいてこじつければ、たまには喫茶店で本日のお題のように高尚な話(?)をするのも悪くない……

 さて「ぐりはま」とは聞き慣れぬことばだが、岩波古語辞典にもちゃんと載っている。

 ぐりはま《「はまぐり」の倒語》 言葉の順序が逆になって意味をなさないたとえから、物事の食い違うこと。「ぐれはま」とも。 (最初の例文は省略して)「諸道みな道すたれて、僧法師の欲の深き、侍の臆病さ、同じなり」<仮・可笑記評判八>

 たまたま柳亭種彦の『柳亭筆記』をめくっていたら、「○ぐりはま 芋の山」という記事があったので、ちょうどネタもなし(笑)、無断拝借したわけ。

 山の芋といふべきを芋の山といひ蛤といふべきをぐりはまといへるにて今物の齟齬する事をぐりはまといふ是なり 或は訛りてぐれはまといふ


とまあ、当然のことながら、種彦は辞書の定義と同じことを書いている。『俳諧破邪顕正』(松月庵随流著)からの引用もあり、

 これを連歌にては芋の山とて大きにきらふ、俳諧にてはぐりはまといふ

 この手の言葉遊びは、自分でしようという気にはなれない。しかしジャズをズージャ、ピヤノ(ピアノ)をヤノピーなどというのは、ちょっとグレた感じがしておもしろい。ぼくなどはたとえば昔小便くさい映画館内で、禁煙の表示があるのに、映写機の発する強烈な光線にゆらめいていたタバコの煙を連想する(お里が知れるか?)。

 最近では「まいうー」というのがおなじみだけれど、ぼくは最初聞いたときなにをいっているのか理解できなかった(笑)。意味がわかってみると、なんだつまらないと思った。しかし「ぐりはま」もすでに古語となったことだし、熱々の焼きハマグリを食いながら「ぐりはま、まいうー」というのなら、「おっ、なかなかやるな」と思うかもしれない。

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August 28, 2013

Daily Oregraph: 裏庭画報 ムカゴイラクサ

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 おや、これは? りっぱなムカゴイラクサではないか。裏庭で見るのははじめてである。去年すぐ近くにあるユスラウメの枝を半分以上も伐ったため、ひょっとしたら植物の勢力範囲が変わったのかもしれない。

 変化はこれだけではない。去年はヤマモミジの木を伐採し、ずいぶん草取りもしたせいだろうか、いままで目立たなかった植物が勢いを示している。ツメクサ、カタバミ、オニユリもそうだが、そのほかにも名も知らぬ花の数がずいぶん増えたように思う。

 特定の植物を排除したり、木の枝を払って日当たりが変わったりすると、植物の版図(?)もめまぐるしく変化するらしい。しかし土あるかぎり、たとえ種類は変わっても、植物が繁栄しつづけるというのは驚きである。地上から人間がきれいさっぱり姿を消しても、植物はしぶとく生き残るのだろう。

 ところでこのムカゴイラクサ、『牧野 新日本植物図鑑』によれば、山中の樹下にはえる多年生草本だそうである。う~む、「山中の樹下」ねえ……(笑)

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August 24, 2013

Daily Oregraph: 裏庭画報 キツリフネ

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 裏庭の物置の陰に咲いていたキツリフネ。いつの間にか季節が進行し、手前にはもう種のサヤがぶら下がっている。

 畑のサヤエンドウは虫害によりほぼ全滅したので、いまの時期はどうかと迷ったけれど、枯れた茎を全部引っこ抜いて種をまき直した。第三次小松菜もかなり虫に食われていたため、まだ若かったがすべて収穫。

 太ったミミズがたくさんはい出てきたり、得体の知れぬ微小な虫が無数にうごめいているのは土の健康のためにはいいことなのだろう。しかし草取りをしていると寄ってくる蚊や、産卵のためか毎日やってくるモンシロチョウなどはちょっと困った存在である。

 結局昆虫はミニ自然公園にはかかせない存在ではあるが、野菜づくりにとっては大敵だと悟った。うまくバランスを取るのは実にむずかしいものである。面倒だから畑はやめにして、いっそもとの原野に戻したほうがいいかもしれないな。

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August 21, 2013

Daily Oregraph: Jack ふたたび

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 写真は本文とはなんの関係もない。17日に撮った十勝港の空である。

 さて先日 hijack と jackknife について調べてみたが、今回は『ことばのロマンス 英語の語源』(ウィークリー著 岩波文庫)から、jack そのものについての解説をご紹介したい。

 え、しつこいって? そういわれても、この商売(?)はしつこさが命なのだから、まあ、これも因果とあきらめておつきあい願いたい。

 道具や家庭用品にも洗礼名に由来する名称をもつものがある。spinning-jenny(ジェニー紡績機。Jenny は Jane(t) の愛称)とか、いくつもの意味をもつ jack (ジャッキ。Jack は John の愛称)などをまずあげることができよう。

 また、

 jug(水差し)の語源は不詳だが、十七世紀の語源学者はこれを、女性名 Joan, Jane の愛称形の Jug にほかならないとしている。この説に対しては、男性名 Jack に由来する jack が同じような意味で使われていたことが、その傍証となる。

  That there's wrath and despair in the jolly black-jack,
  And the seven deadly sins in a flagon of sack.

 楽しげな革製のビールジョッキの中には怒りと絶望が、
 白葡萄酒を湛(たた)えた酒びんの中には七つの大罪があった。

                (スコット 『湖上の麗人』六歌五連)

 ブラックジャックといえば手塚治虫の漫画を思い出すが(笑)、「黒い(外側にタールを塗ってあるから)革製のビールジョッキ」という意味があるとは知らなかった。

 語源学というのはおもしろそうな学問だが、どこまでやってもきりのない、はまったら抜けられない底なし沼のようなもののようだ。性格的に向き不向きがあるんじゃないかと思う。ぼくなどは向きも不向きも、もう残り時間が少ないから(笑) Jack はこのへんにして、あとは若者にお任せしたい。

 さて岩波文庫の「解説」によると、このウィークリー先生(Earnest Weekley, 1865-1954)の細君フリーダ(Frieda, 1879-1956 ドイツ人)は、1912年にウィークリー宅を訪れた D.H. ローレンス(D.H. Lawrence, 1885-1930)と恋におちいり、数週間後二人はドイツに駆け落ちしたのであった。

 しかし細君との離婚後、先生は再婚もせずに、残された三人の子育てをしながら、うまずたゆまず(そうでなければ語源学者はつとまるまい)学問をつづけたという。

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 写真は左からウィークリー、フリーダ、そしてローレンスである。

 正直いって、革製のビールジョッキよりも、ぼくはこの人間ドラマのほうに興味が湧いてきた。地上に人間あるかぎり、この種の問題もまた語源学同様、いやもっと底の知れない沼であるような気がするのだ。

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August 17, 2013

Daily Oregraph: 十勝港デザイン散歩

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 仕事で十勝港(広尾町)に来たので、昼休みに漁港区を散歩した。商港区はともかく、こちらを歩くのはほんとうにひさびさである。

 釧路の住人としては、漁船などめずらしくもないから撮るつもりはなかったけれど、ご挨拶として一枚。

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 あ、いいなあ、これ。ファンが絶妙のアクセントになっている。あらかじめデザイン効果を計算したのかどうかは別にして、まことにしゃれた感覚だと思う。

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 これは一見なんでもないようだけど、よく観察すると、右側の戸を修理した際に、もともとのシンメトリが失われたのだろうとわかる。

 たぶん手間を惜しんだのだろうが、結果として動的な効果が得られ、けっして悪くはないと思う。
なんとなくモンドリアン風?

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 ほぼ完全なシンメトリである。しかし左右の錆びぐあいのちがいがおもしろい。どうもシンメトリは微妙に崩れていたほうがかえって引き立つものらしい。

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 これは倉庫の壁面の一部だが、こうして切り取ると、立派な絵画である。

 え、そうは見えないって? おだまりなさい。反論は一切認めませぬ(笑)。

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 漁港近くの床屋さん。思わずアッと声を上げそうになったほどすばらしいデザインである……これまた反論は受けつけませぬ。美の基準はわれにあり。

 広尾町の売り物は「サンタランド」なのだが、実はワンダーランド。散歩は楽しまなくちゃね。

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August 14, 2013

Daily Oregraph: 夏の想い出

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 まずは夏の空。

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 こちらは夏の海。

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 そして夏の一皿。

 生存証明として写真を掲載したけれど、面倒くさいから(笑)詳細は省略する。みなさまも名人三遊亭圓朝にならい、写真をもとに三題噺をこしらえてみてはいかが?

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August 10, 2013

Daily Oregraph: 夏の読書

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 本日の船上セキュリティ・チェックポイント……といっても、ごらんのとおり、(行ったことはないけど)なんとなく中国の町の裏通りの景色みたいな感じがする。しかし風呂場の腰かけみたいな椅子の配置が美的でよろしい。

 今日は待ち時間がやたら長い仕事だったから、持参した文庫本をときどき開いては読んでいた。博覧強記の親玉である南方熊楠の『「摩羅考」について』という奇文がおもしろかった。

 どなたもご存じのように、摩羅は penis のことである。熊楠大先生にはタブーというものが一切存在しない。眼耳鼻、手足が大事というなら、 penis だって vagina だってもちろん立派な学問の対象なのである。だからなんでもズケズケ平気でいう。超人的な読書量と異常な記憶力をもとに、ありったけの知識を惜しげもなく披瀝するのだ。

 知っているのに知らないそぶり、などと乙に澄ますようなケチなマネはなさらないのである。このあたりが正統派大秀才の見本みたいな柳田国男とは大いにちがうところなのだろう。

 文章もあるいは格調高く、あるいは俗調をまじえ、八方破れといっていいほど自由自在である。読んでいると精神が解き放たれたような気分になる。修身道徳をやかましく唱える人々にありがちな偽善やうさんくささがないからだと思う。

 暑苦しい夏の夜に読むなら熊楠先生の文章がおすすめ。ただしぼくみたいな無学な男にとって、けっしてスラスラ読めるような文章ではない。かなり手ごわい。しかし痛快なのである。

 陰陽交接を辞書通りに、コピュレイションなど言っては、無学な英米人に通ぜず。普通の書籍にみえぬながら、プッシュとかフォク(注:fuckであろう)とか言わば、小児、庸婦にも判る。

 小児、庸婦、つまり女こどもにも判るというのは先生も口が悪いけど(笑)、たしかにスピードラーニングの教材に copulation なんて単語は登場しないだろうなあ。なあに、知らなくたって、こちとら英米人じゃないから、無学を恥じるには及ばないのだが(注)。

(注)そうはいっても、OED は fuck を第一に to copulate と定義しているから、学生諸君はぜひ覚えておくべきである。この種の単語ならすぐに覚えられるはず。

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August 07, 2013

Daily Oregraph: ジャックナイフの謎

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 写真は錆びた安物の肥後守である。いまどきこんなナイフを使う人はめったにいないだろう。

 肥後守:小刀の一種。折込式で柄も鉄製、「肥後守」と銘を入れる。(広辞苑)

 「肥後守」は登録商標だという。写真のものは「肥後ナイフ」の銘があるから、氏素性はあやしいかもしれない。

 なんでこんな写真を載せたかというと、理由はふたつある。第一には、先日「ジャックと豆の木」の宿題を出した方が、今度はジャックナイフのジャックを調べてよ、というからである。第二には、西洋式のジャックナイフは小型の肥後守とはちがって「大型のポケット用折り畳みナイフ」を指すけれど、無い袖は振れないから代用したのである。

 なんだか夏休みこども相談室みたいな気分になってきた(笑)。

 -あのね、それは君もいまに大人になればわかるの。

 しかし、ほんとうに大人になればわかるのだろうか?

 各種辞書の語源欄を参照したところ、18世紀初めアメリカで使われ出した単語らしいのだが、語源は確定していないようだ。しかし OEDには 'cf. jackleg knife s.v.(次の語を見よ)JOCKTELEG.' という注記があり、Random House には [1705-15, Amer.; JACK (cf. JOCKTELEG) + KNIFE] とある。

 そこで jockteleg (= jackleg) を OED で引いてみると、「スコットランドおよび北部方言:(大型の)折り畳みナイフ」とあり、詳しい解説も載っている。かなりの長文なので、うんとはしょってご紹介しよう。

 1776年頃の Hailes 氏『スコットランド語彙』には「このことばの語源は不明であったが、近年刃物職人 Jacques de Liege の銘を入れた古いナイフが発見された」とあり、19世紀の書物にも、刃物職 Jacques 氏のナイフは欧州中に知られていたという記述がある。

 また、kの後のd→tという変化はスコットランド語ではめずらしくないという。つまり(Jacques→)Jock+(de→)te+(Liege→)Leg=jockteleg だというのである。

 へえ、そんなものかと感心して読んでいると、

 だが現在のところ、スコットランドの古物研究家たちは、ナイフ・文書いずれにおいても、上記 Hailes 氏記事の確証を得ておらず、Liege においてわれわれのために行われた調査の結果 Jacques なる刃物職がいたという証跡はやはり得られていない。

とあるのにはもっと驚いた。われわれのために行われた調査(inquiries made for us)の「われわれ」とは辞書の編集部にちがいない。どうやらこの単語ひとつのために現地(リエージュはベルギー)に問い合わせをしたらしい。いや、どうも恐れ入りました。

 有名な刃物職だったはずなのに存在の痕跡もなく、ナイフの現物がひとつも確認されないのは不自然だから、OED としては従来の語源説に対して懐疑的な立場を取っているようだ。ふしぎなことばである。

 -結局答はどうなの?

 -あのね、大人になってもわからないことってあるんだよ。

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August 05, 2013

Daily Oregraph: 裏庭画報 サヤエンドウの研究

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 サヤエンドウの初収穫。なんだ、これっぱかりか? と笑ってはいけない。二三虫食いがあったので、これ以上食われるのはシャクだからもいだのである。これから少しずつ収穫できるはずだ。

 そういえばサヤエンドウを英語でなんというのだろうか。エンドウ豆を pea というのは知っていたが、サヤエンドウは知らなかったから調べてみた。われながらマメなものである。

 まっさきにみつかったのが snow pea である。雪とは縁がないのにどうして snow なのかというと、花の色が白いかららしい。

 別名 mange-tout (pea) の項目を見よというからすなおに調べてみると、こちらはフランス語で、直訳すると eat-all だとある。なるほどサヤごと食うから納得。

 もうひとつ sugar pea といういい方もある。こちらは花の色=白砂糖の白というわけではなく、甘みがあるからということらしい。ついでに sugar pea を引くと snap pea というのも登場する。複雑にして怪奇である(笑)。

 さらにもうひとつ snap bean というのも辞書に載っている。リーダース英和には「さやごと食用とする各種のマメ科植物, さや豆《サヤインゲン·サヤエンドウなど》」とある。

 そういえば、サヤエンドウはスナップ・エンドウとも呼ぶらしい(厳密にはちがうらしいが、ぼくには区別がつかない)。ついでだからなぜスナップなのか調べてみよう。そこまでやるのがお勉強(笑)。

 OEDには、「snap-bean は米語なり。名詞 snap の18を見よ」とある。なんだか双六をやっているような気分になるが、指示どおり調べてみると、語義のかわりに引用文をいくつか挙げ、そちらを見なさいという。

 フレンチ・ビーン(French beans)とスナップ(snaps)とは同一なり。

 スナップ(Snaps)とはグリーン・ビーン(green beans)なり。

 スナップとはサヤに入った若いキドニー・ビーン(kidney beans. インゲンマメ。腎臓形をしているから)なり。

 かようなマメは、英国ではキドニー・ビーンまたはフレンチ・ビーン(French-beans)として知られるが、こちらではストリング・ビーン(String-beans)またはスナップ、また時にスナップ・ビーン(Snap-beans)と呼ばれる。


 思うに、サヤからマメを取り出すときに、サヤの端をポキンと折り取る(snap off)からスナップというのだろう(それとも茎からプチンともぎ取るから?)。ストリング・ビーンというのは、サヤのスジ(string)を取って食うマメをいう。

 英和辞書に載っている以上、サヤエンドウのことをスナップ・ビーンということもあるのだろうが、ふつうはインゲンマメを意味するようだから、スノウ・ピーあたりを覚えておけばいいんじゃないかと思う。

 というわけで、芋づる式ではなくマメづる式に調べてみたが、こんなヒマなことができる日本は天下太平(ピーズフル、いやピースフル)だなあ。

【追記】 たった今 Cambridge Dictionaries Online を調べたら、snap bean (米)は sugar (snap) pea なりとある。それなら snap bean もふつうに使えそうだが、はて? 徹底追及してまとめてみたい気もするけど、キリがないからやめておこう(笑)。

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August 02, 2013

Daily Oregraph: 夏の日の幻想

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 ひさしぶりに夏らしい一日であった。これは薬をもらいにいった某内科医院の駐車場から撮った写真。

 地獄の業火はもちろんごめんだが、天国の永遠の命にだってそれほど魅力があるわけでもない。永遠に生きつづけるというのは、ぼくには拷問の一種としか思えないからだ。なんでそんなものを欲しがるのかな。

 さていつものとおり処置室で体重を測ると、3 kg も減っていたものだから、看護婦さんが驚いて、

 -あ、体重が減りましたね! 運動ですか?

 まさか恋わずらいでやせましたともいえないから(笑)、いいえ、食事の量を減らしましたと正直にお答えしたが……たまたま減量に成功したからいいようなものの、もし永遠の命を授かったら、来る日も来る日も永遠に、体重のせいで一喜一憂しなければならぬわけだ。つまらない。

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 薬をもらってから床屋に寄って散髪。身も心もすっきりしたところで裏庭へ行ってみると、猛威をふるったハムシの姿はウソのように消えている。

 
しかし小松菜の葉の多くは、食い荒らされてボロボロになっていたから、すべて引っこ抜いて種をまき直した。

 サヤエンドウはどうなったかというと、おお、ひとつだけ実がなっているではないか。だがよく見るとサヤの一部がかじられている。

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 かじったのがハムシかどうかは不明だけれど、実にイヤな感じがする。来年は箒を二本用意してハムシにそなえねばなるまい。

 さてマメといえば「ジャックと豆の木」である。ジャックが豆の木をどんどん上って高いところへ行ったらハイ・ジャック(笑)。なんとこれがお勉強のタネになるのだから驚くではないか。

 飛行機のハイジャック(hijack or highjack)は「ジャックと豆の木」が語源ではないか、さっそく調査せよ……という宿題を、つい先日ある方からいただいた。

 ご存じのとおり、ジャックは巨大に成長した豆の木をよじ登り、雲の上に住む巨人から財宝を奪って金持になる。高いところで人様のものを盗み取るのだから、ハイジャックというわけである。

 当たり外れはともかく、ぼくは出題者の想像力にすっかり感心したから、どれ調べてみようかという気になった。夏の日の幻想だね、これは。

 当然ながら、まずは OED。「もと米俗語(現在は一般に通用)」という断り書きにつづく語源欄を見ると、おやおや Origin unknown (わかりまへん)とは残念。それならアメリカの辞書にあたってみよう。

 Random House 第2版によると、19世紀末からあることばらしく、「トラックやほかの車両を止めて(積荷を)奪う」というのが本来の意味だから、スカイジャックの意味で使われだしたのはあとの話である。

 それにしても、どうしてハイジャックなのか? ランダムハウスの語源欄には hijacker からの逆成とあるので、そちらを見ると、「HIGH(WAYMAN)+jacker」とある。なるほど highwayman(追いはぎ)から来ているのか。

 問題はジャッカーの語源だが、同書によれば、jack(夜間ジャック・ライトを持って狩りや釣りをする)に er をつけたもの。ジャック・ライトというのは、ポータブルのランタンや懐中電灯をいうらしい。へえ、はじめて知ったよ。

 結局「ジャックと豆の木」とは直接の関係はなさそうである。しかし、jack には俗語として「(車や、車からなにかを)盗む; 奪う、押し込み(強盗)を働く」という意味もあるから、巨人の城からものを盗み出すジャックの姿が浮かんでくることはたしかだ。

 ついでに「人様のサヤエンドウを勝手に食い荒らす」という語義も追加してほしいものである。 

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