Daily Oregraph: 夏の読書
本日の船上セキュリティ・チェックポイント……といっても、ごらんのとおり、(行ったことはないけど)なんとなく中国の町の裏通りの景色みたいな感じがする。しかし風呂場の腰かけみたいな椅子の配置が美的でよろしい。
今日は待ち時間がやたら長い仕事だったから、持参した文庫本をときどき開いては読んでいた。博覧強記の親玉である南方熊楠の『「摩羅考」について』という奇文がおもしろかった。
どなたもご存じのように、摩羅は penis のことである。熊楠大先生にはタブーというものが一切存在しない。眼耳鼻、手足が大事というなら、 penis だって vagina だってもちろん立派な学問の対象なのである。だからなんでもズケズケ平気でいう。超人的な読書量と異常な記憶力をもとに、ありったけの知識を惜しげもなく披瀝するのだ。
知っているのに知らないそぶり、などと乙に澄ますようなケチなマネはなさらないのである。このあたりが正統派大秀才の見本みたいな柳田国男とは大いにちがうところなのだろう。
文章もあるいは格調高く、あるいは俗調をまじえ、八方破れといっていいほど自由自在である。読んでいると精神が解き放たれたような気分になる。修身道徳をやかましく唱える人々にありがちな偽善やうさんくささがないからだと思う。
暑苦しい夏の夜に読むなら熊楠先生の文章がおすすめ。ただしぼくみたいな無学な男にとって、けっしてスラスラ読めるような文章ではない。かなり手ごわい。しかし痛快なのである。
陰陽交接を辞書通りに、コピュレイションなど言っては、無学な英米人に通ぜず。普通の書籍にみえぬながら、プッシュとかフォク(注:fuckであろう)とか言わば、小児、庸婦にも判る。
小児、庸婦、つまり女こどもにも判るというのは先生も口が悪いけど(笑)、たしかにスピードラーニングの教材に copulation なんて単語は登場しないだろうなあ。なあに、知らなくたって、こちとら英米人じゃないから、無学を恥じるには及ばないのだが(注)。
(注)そうはいっても、OED は fuck を第一に to copulate と定義しているから、学生諸君はぜひ覚えておくべきである。この種の単語ならすぐに覚えられるはず。
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Comments
先日宮城に帰ってきて仙台のホテルに泊まったところ、館内の自動販売機のあまりの高さに、ホテルを出て近所のコンビニに向かったところ、あちらこちらの小さな居酒屋の店先に写真のような座席が設けれ・・・
こりゃあ、仙台だからできる商売だな・・・大阪なんて今の季節暑くて暑くてとてもって感じですからね・・
Posted by: 三友亭主人 | August 12, 2013 23:31
>三友亭さん
写真の椅子ですけど、ちょいと低すぎやしないでしょうか。仙台版やいかに?
> こりゃあ、仙台だからできる商売だな・・・
う~む、釧路を基準にすれば、仙台だって十分暑すぎるんですけど(笑)。
Posted by: 薄氷堂 | August 13, 2013 22:19