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July 31, 2013

Daily Oregraph: 続・お菊虫

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 七月の終わりを飾るにふさわしい、まことにしょうもない写真である。スランプがつづきすぎて、まともな写真を撮ろうという気力が失せてしまったらしい。

 こういうときは無理をせずに、夏向きの肩のこらないお話をしよう。『耳嚢』五の巻より、「菊むしの事」を選んでみた。

 お菊虫については以前記事(2011-01-04)を掲載したが、『耳嚢』によると、落語版とはずいぶん話がちがう。以下、ざっと現代文風に(専門外なのだから、細かいツッコミは入れないように(笑))。

 寛政七年(1795)頃、摂州岸和田の侍屋敷の井戸から、異様な虫が無数に現れて飛び回るのを捕らえてみれば、玉虫か黄金虫のような形なのだが、虫眼鏡でよく見ると、手を後ろ手にした女の形をしていたという。

 素外という俳諧の宗匠が旅の途中で一二匹懐に入れ、江戸にやってきたとき知人に見せたその虫を、わが屋敷に出入りする者もはっきり見たというのである。

 津富という宗匠も虫を一匹もらって取っておき、翌年の春、人に見せようとして取り出してみると、虫は蝶に変わって飛んでいったそうな。

 この虫の由来はこうだ。

 元禄年間青山播磨守が尼崎藩主であったとき、家臣に喜多玄蕃という家禄少なからぬ者がいた。その細君はひどく嫉妬深く、玄蕃が菊という女になにかと目をかけているのに腹を立て、こっそり茶碗の飯の中に針を仕込み、それを菊に運ばせた。

 飯を口にした玄蕃が大いに怒ると、「菊の仕業でございますよ」と細君が讒言したので、玄蕃は非情にも菊を縛り上げ、古井戸の中へ頭から逆さまに放りこんで殺してしまった。それを聞いた下女の母(下女奉公していた、菊の母?)も古井戸に身を投げて死んだという。

 その後玄蕃の家は廃絶になったそうな。いまでは尼崎の領主も変わって歳月も過ぎ去ったが、去年は百年忌に当たり、菊の怨念が残って奇怪な虫に姿を変えたのであろうか。『播州皿屋敷』という浄瑠璃もあったが、この事件に基づいて作られたものでしょうかと、この話をしてくれた人がいったことである。


Okikumushi2 ずいぶん奇妙な話である。蝶に変わるのだからサナギなのだろうが、サナギが玉虫や黄金虫に見えるものだろうか? 無数のサナギが井戸から飛び出てきたというのも解せない。『耳嚢』はおもしろい本だが、ときどき無茶なことを書いているから、あまり信用できないしなあ(笑)。

 ええい、もうひとつおまけだ。上の話の少し後に見える『於菊虫再談の事』である。

 前に記したお菊むしのことについて。御奏者番を勤める土井大炊頭の実兄に当たる、尼崎の当主松平遠江守は、土井家で見せたその虫を殿中にも持参し、それを私も見た。

 先に聞いた形とは少しちがって、後ろから見れば女の形に似ているのである。後ろ手に縛られたのではなく、コオロギのひげのようなもので、小枝様のものに繋がれているのであった。略図を左に記しておく。


 この記事の最後に、

 委細の書記(文書)も土井家より借(り)てみしが、別に記(し)ぬ。

とあるのだが、もしどんな内容なのかわかったらまたご紹介したい。 

 それにしてもお菊虫の正体、またしてもわからなくなってしまった。図の虫はゴキブリめいて見えるから気味が悪い。ぼくとしてはサナギ説を採りたいのだが……

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July 27, 2013

Daily Oregraph: 裏庭画報 サヤエンドウの花

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 今年初めてまいたサヤエンドウは、つい先日までひょろひょろ背が伸びるばかりで、さっぱり花が咲かなかった。

 花が終わって果実ができるという順序だから、ひょっとしたら失敗かなあと思っていたら、やっと花が咲いた。これが本日の good news である。

 Bad news は例のハムシ。去年も悩まされたのだが、今年も大発生し、第二次小松菜と白カブの葉が相当の被害を受けている。ボロボロになった葉もあり、まともには成長しないのではないか。

 しかしサヤエンドウの葉にはほとんど被害がないところを見ると、ハムシの分際でえり好みをするらしい。こしゃくな虫である。

 地面を見ると無数のハムシがうごめいている。家の裏手の壁にもたくさんへばりついていた。あまりにもグロだから、さすがに写真を撮る気にはなれなかった。

 たまりかねてハムシ掃討作戦を実施した。といっても、野菜の近くで殺虫剤を使うつもりはないから、地面のほうはあきらめて、壁に集結した連中を庭箒をふるって撃退するのである。

 ゲリラ相手の戦いが不利であることは承知している。バッタバッタと五百匹ほど叩き落としたが、敵はどこから湧いてくるのか、次から次へと現れてくる。少なく見積もっても兵力数千、もしかしたら万を数えるかもしれない。

 箒をにぎる手にタコができそうになったときには汗まみれになってしまったので、本日はいったん作戦終了。ハムシ作戦、明日も続行することになりそうだ。

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July 25, 2013

Daily Oregraph: 裏庭画報 今年の白カブ

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 今年の白カブは品種のちがいもあるのだろうが、去年のものより一回り以上も大きく、まずまずの出来であった。

 サイズにかなりムラがあるのは、たぶん間引きを怠ったせいだろうと思う。例によって今の時期はハムシが大発生し、葉っぱにかなりの被害を受けてしまった。カブの葉好きとしては、もう少し早めに収穫すべきだったかもしれない。

 それでもカブと葉と茎とを一緒に炒めて食べたら味は上々であった。カブ本体の味わいはなかなか mild。

 カブの間引きをさぼるくらいだから、雑草の勢いもすごい。雑草は必ずしも根絶やしにする必要はないという説もあるけれど、やはり見た目がよろしくないので気になるものだ。

 おまけにハムシかなにかは知らないけれど、地面に無数の卵を産みつけ、そいつをアリがせっせと運んでいるのを目にして、気が遠くなりそうになった(笑)。この気味の悪い眺めは wild。

 注: mild と wild で韻を踏んでいるのだから、ぜひ苦心を買っていただきたい(笑)。

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July 23, 2013

Daily Oregraph: 梯子ふたつ

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 奈落の底へ降りる梯子……といえば、参院選後の日本国の運命を連想するけれど、実はTween Deck(中甲板)から Lower Hold へ通ずる梯子。開け放ったホールドからの光が一筋の希望のように見えるところは救いである。

 いや、待てよ、あれは地獄の炎が放つ光かも知れない。足を踏み外したら無事ではすまぬ。文字どおり Go to hell. である。

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 こちらは色づかいといいデザインといい、立派なモダン・アートである。仕事中でも常に美を求める(笑)ぼくはすっかり感心したのであった。

 実はデッキ・クレーンへ至る梯子なのだが、これまた足を踏み外したらただではすまぬ。地獄に堕ちることはないにせよ、天国行きは確実である。

 さてあなたはどちらをお選びになるだろうか?

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July 21, 2013

Daily Oregraph: 日は西に

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 7月20日。十勝港では日は山の端に沈む。

 地図を確認すればなんの不思議もないのだが、海に沈む釧路港の夕日を見なれているから、おや、方角がちがいやしないか、という錯覚に陥るのである。

 さて写真をよく見ていただくと、本船から岸壁にかけてホースが延びていることにお気づきになるだろう。

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 実はこのホース、少し離れた岸壁上の給水栓につながっている。正面奥に見えるのは自動給水装置(4月24日の記事ご参照)である。

 4月にこの装置を見たときは、ホースのありかや接続場所がわからなかったけれど、これで疑問氷解。どんなつまらぬ疑問でも解決するのはうれしいことだ。

 船舶代理店の方にお聞きしたところ、ホースは代理店が保管しているとのことであった。給水の能率は時間あたり約15トンだという。

 なお十勝ブルーのみごとな青空にもご注目いただきたい。風の心地よい、さわやかな一日であった。

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July 20, 2013

Daily Oregraph: 7月19日チェックポイント

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 昨夜は入浴後某氏とビール・焼酎を飲み、不覚にも沈没してしまった。日中粉まみれになって汗を二升ほどかいたのだから無理もない。

 しかしジャーナリストの面目にかけて、船上セキュリティ・チェックポイントはしっかり撮影したので、一日遅れで掲載する次第である。

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 さていくら絵日記にすぎぬとはいえ、写真一枚では愛想がないからもうひとつおまけ。ハッチカバーの番号を塗り直しているところである。

 3A という文字だが、もちろん3年A組ではなく、3番ハッチのAFT(船尾側)という意味。A を見たとたんに船尾を連想するのは、まあ一種の職業病というところであろうか。

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July 16, 2013

Daily Oregraph: 鉛筆補助軸

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 何年も前にこしらえた自作の鉛筆補助軸である。ネタがないから、とうとうこんなものまで登場することになった。

 さてこの補助軸だが、文房具店や百円ショップではいろいろのものが売られている。しかしどれもひどく使い心地が悪い。まず軸が太すぎる。次に手触りが安っぽすぎる。

 そこでぼくは鉛筆自体を軸にしてはどうだろうかと考えた。苦労したのはちびた鉛筆を挿入するパイプであった。ぴったりサイズのものがなかなか見あたらないのである。

 やっと適当なパイプをみつけてできたのが写真の試作品。ずばり結論を申し上げると、(たぶん)史上最高の使い心地である。とにかく手になじむ。おれは天才じゃないかと思ったくらい(笑)。

 もちろん特許を取るほどのものではないから、みなさまもお作りになってみてはいかがだろうか。改良点は木ネジ。頭の平たいネジのほうがよろしい。ひょっとしたら売れるんじゃないかと思うよ。

 さらにこの試作品にはもうひとつ売り物がある。

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 軸に採用した鉛筆の刻印を見るとわかるが、(いまは無き)チェコスロバキア製の ARTIST というレア物なのである。

 この補助軸は去年一年間活躍してくれたから、ちょっと汚れている。最近出番がないのは……もちろん勉強していないせいだ。

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July 14, 2013

Daily Oregraph: 裏庭画報 その後のエゾヤマザクラ

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 去年払ったエゾヤマザクラの枝のうち手ごろなものを数本選んで、裏庭の畑に上る階段の手すりなどにそのまま利用している。驚いたことに、それらの枝のあちこちから、新しく緑の葉が成長しているのであった。

 朽ち果てるのを待つばかりの枝から顔を出したみずみずしい葉を見るのは、枯れる一方のジジイとしてはうれしいかぎりである。絶望の中に見出した希望、とでもいうところだろうか。ひょっとしたらおれだって……(笑)。

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 さて草むしりをしながらふとエゾヤマザクラの木を見上げると、色あざやかな実がたったひとつだけ残っていた。

 そいつをもいで部屋に持ち帰り、記念撮影。ついでに、直径約 1 cm というこの実を、有毒ではなさそうだから、ちょっとだけかじって味見してみた。やわらかい食感はまさにサクランボだが、酸っぱくてちょっと苦味もある。果肉もほんの少ししかないし、やはり食用にはならぬようだ。

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 今日の good news はこれ。ニフティ宝くじ大当たり。今回が二度目である。たった百円でもうれしい。なんとなくぼくにも運が向いてきたような気になるのである(笑)。

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July 12, 2013

Daily Oregraph: キュウリの話

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 ひさしぶりに山花温泉へ行ったら、風呂の日のおまけとしてキュウリをいただいた。別にねらって行ったわけではないけれど、えらくトクをしたような気分になってうれしい。

 さてキュウリといえば、オスカー・ワイルド(Oscar Wilde)の The Importance of  Being Earnest(たしか邦題は『マジメが大切』)という芝居には、キュウリ(cucumber)という単語が一幕の間に八回も登場する。

 キュウリの活躍する戯曲というのはめずらしいから、サワリだけご紹介しよう……といえばカッコいいけど、実をいうと、まだ第一幕しか読んでいないのである(こういうのをバカ正直という(笑))。

 おばさんがお茶にやってくるというので、わざわざキュウリのサンドイッチを用意する。ところがおばさんが来る前に、主人みずからそいつを食べてしまうのである。やがておばさんが到着して、

 おばさん: さてお茶をいただきましょうか。それと、約束のキュウリのサンドイッチもね。

 主  人:(空の皿を取り上げて驚き) なんてこった、レイン! キュウリのサンドイッチがないじゃないか。あれほどいっておいたのに。

 レ イ ン:(まじめくさって)今朝は市場にキュウリがなかったんでございます。二度行ったのですが。

 主 人: キュウリがなかっただと!


 主従が呼吸を合わせ平気でごまかすところは、なるほど as cool as a cucumber だなあと感心させられる。

 それにしても、英国人はなんでキュウリのサンドイッチなんぞを喜んで食べるのだろうか? ぼくはそんなもの食いたくないぞ。特に最近の水気の乏しいキュウリは青臭いから、生で食いたいとは思わない。

 英国人がなんといおうと、やっぱりキュウリはいわゆる浅漬けにかぎる。反論は……一切受けつけませぬ(笑)。

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July 11, 2013

Daily Oregraph: 裏庭画報 白カブのいま

 今朝も少し草むしりをする。多勢に無勢ゆえ、あいかわらずはかどらない。ぼくみたいな短気な男には向かない作業である。

 草むしりを黙々と半日つづけられるようになれば、あっぱれ一人前の人格者といえるのかもしれないが、途中でだんだん腹が立って、もう死ぬまで半人前でもかまわんという気分になるのだから救いようがない。そもそも植物が相手では、とうてい人間に勝ち目はないような気もするのだ。

 ふと思い出してチゴユリの写真を撮ろうと思ったら、もう花の時期は終わり、葉っぱだけが残っていた。ぼくは派手なユリよりも、このコンパクトで可憐な花が気に入っているので、ちょっと残念。

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 しかたがないから白カブにレンズを向けることにしよう(まさかまた小松菜というわけにもいかないだろうし……)。

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 ちょっと失礼して中をのぞいて見ると、おお、カブらしくなってきたではないか。ぼくはカブそのものよりも葉っぱのほうが好みだから、来週中にも収穫しようかと思っている。

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 こちらはサヤエンドウ。いつ収穫できるのやら見当もつかないが、身の丈約50センチほどに成長した。うまくいったらおなぐさみ。

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July 09, 2013

Daily Oregraph: 小松菜で一杯

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 今夜は小松菜のゴマ和えで一杯。なかなかオツなものであった。アルコールの害をいくぶん抑えてくれるのではないかというほのかな期待も手伝って、いっそう美味に感じたのかもしれない。

 さて午前中ちょっとだけ裏庭の草むしりをしたのだが、今年はさぼり気味であったため敵の勢力あなどりがたく、大苦戦を強いられている。

 なにしろ敵は空軍力まで動員し、群がるグラマン、いや蚊に腕を刺されたり、散々な目にあった。無駄死にはしたくないから、ただちに撤退、いや転進を決意したことはいうまでもない。明日からは蚊取り線香をもって対抗せねばなるまい。

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July 07, 2013

Daily Oregraph: 裏庭画報 小松菜収穫

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 夏らしい一日であった。

 しばらく放りっぱなしにしていた裏庭へ行ってみると、案の定雑草がはびこっていたけれど、野菜だって負けてはいなかった。やはり野菜にも意地というものがあるのだろう(笑)。

 葉物に有効だという尿素を施した効果だろうか、昨年よりも葉が一回り大きい。これ以上成長させるとかえってまずくなりそうなので、すべて収穫することにした。

 今年はろくに間引きをしなかったせいもあり、わずかの面積ながら、びっくりするほどの収穫があった。しばらくは小松菜責めに会いそうである。

 収穫後尿素をパラパラ撒いて土をかき混ぜ、まだたくさん残っている有効期限切れの去年の種を蒔いた。小松菜は素人向けの野菜である。手間も工夫も要らぬ。土と水と太陽さえあれば必ず収穫できるのだからありがたい。

 去年苦労して復活させた地面をふたたび根釧原野に戻すわけにはいかないから、来週はさすがに草むしりをせねばなるまい。おっさんが夏の日射しを浴びて草むしりする姿は一幅の絵になる……わけはないか。

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July 06, 2013

Daily Oregraph: お出かけは自転車で

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 仕事上必要な写真を撮る日は完全に記録モードになっているから、せいぜいこんなのしか撮れないのは致し方ないだろう。気のきいた写真を撮ろうなどというのは邪念(笑)もいいところだからだ。

 日用品を買いに自転車で町に出かけるところ。船員はなかなか買い物に行くヒマがないのである。その証拠にタイヤの空気がすっかり抜けており、右から二人目の人物は一所懸命ポンプを押していた。

 かく申すぼく自身このところ早起きの連続で、お勉強をする元気はもちろん、ありあまる金(?)を使うヒマもない。ヒマになればスランプから脱出できるかというと、それも自信がない。ないないづくしである。
 

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July 04, 2013

Daily Oregraph: 十勝港スランプ絵日記

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 7月3日朝。風に乗って海から陸へ押し寄せる霧の帯。

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 7月3日の船上セキュリティ・チェックポイント。

 え、これだけかよ? いかにもこれだけである。絵日記なんてこんなものだ。ウソだとお思いなら、ご自分の小学校時代の絵日記を取り出してごらんになるといい。だんだん面倒くさくなって、しまいにはたったの一行、

 今日はいい天気でした。

 う~む、してみると小学校以来スランプがつづいているらしい(笑)。
 

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July 01, 2013

Daily Oregraph: Hold Cleaning

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 カーゴ・ホールド(貨物艙)内の清掃風景。一般の方はあまりごらんになったことがないと思う。

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 特に次の航海で別の貨物を積む場合は、手抜きのできない重要な作業である。面積が広いから、なかなかの重労働。楽をしては金を稼げないということだ。

 スランプが長引き、こんな写真しか撮れない(笑)。いつになったら脱出できるだろうか?

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