Daily Oregraph: 道は遠い
病院に薬をもらいに行ったついでに北埠頭へ寄ってみると、氷がすっかり消えていた。わずかに残った氷はふたたび南埠頭方面へ流れていったのだろう。
一応記録のために一枚シャッターを切ったけれど、氷あればこそ少しは見られたものが、無残な失敗写真になってしまったのは悲しい。これではまるでお話にならない。
取り壊し中の日通倉庫はごらんのとおり最後の抵抗を示している。なかなかしぶといものである。
こういう光景に惹かれるのは男の本能じゃないかと思うのだが、ひょっとしたらおれだけだろうか。なんとなく気になるのである(笑)。
スランプついでに放っておいた『ABC殺人事件』を病院で読んでいたら、いよいよ第4の殺人を予告する挑戦状がポアロのもとに届いた。その中にこんなことが書いてある。
We've a long way to go still.
Tipperary? No - that comes farther on.
今回は D の殺人予告だから、T ではじまるティパレアリはまだまだ先の話だというのだ。しかしそれだけではない。この文章はシャレなのである。この歌を知らなければ意味が通じないだろうと思う。なにごとも奥が深いものであります。
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Comments
>ひょっとしたらおれだけだろうか。
「おれ」だけじゃあありませんよ。結構多くの「男」の人が惹かれる光景だと思いますよ。
ただそれは「最後の抵抗」そのものではなく、滅びゆく姿にだと思いますが
・・・じゃなけりゃあ、ゴジラがあんなに人気をはくしたわけがないじゃあないですか。
Posted by: 三友亭主人 | March 04, 2013 22:38
>三友亭さん
> 滅びゆく姿
リクエストにお応えして……どうかぼくの姿をごらんください(笑)。
Posted by: 薄氷堂 | March 04, 2013 23:19
おお、水面から氷が消えましたな。
僕には、この変化がけっこう感動的でした。
喜びいさんで、飛び込むわけには行きませんが。
Posted by: 根岸冬生 | March 05, 2013 15:04
>根岸冬生さん
こんな写真をごらんいただけるとは……(笑)
> 喜びいさんで、飛び込むわけには行きませんが。
だいじょうぶ、背中を押してあげますよ。
Posted by: 薄氷堂 | March 05, 2013 17:34
コメント自粛中ですが・・シッタカしていいですか?
件の建造物は、いわゆる現在の「生コン」注入ではなく、現場で粗骨材(砂利)+細骨材(砂)+セメント+水を混合して作った時代のモノでしょう。
現在の鉄筋コンクリートのコンクリ部分の粗骨材は、良筆な川砂利がほとんど入手不可能で(上流のダムで塞がれて、砂利が下流に流れて来ない)、さらに砂も良筆な川砂(同じように、ダムで遮られて砂が流れて来ない)もほとんど入手不可能です。
今、使っている砂は、山を崩した砕石をさらに振るった山砂です。
だったらどうなの・という疑問があるでしょうが、件の建造物に使われていた過去の良筆な粗骨材(砂利というか小さな丸い石)を再生して、それを新しい鉄筋コンクリート建造物の粗骨材に再利用するのです。
もちろん、中に入っていた鉄筋はそのまま鉄屑として輸出されるか国内で再利用されます。
風景として馴染んだ建造物が無くなるのは寂しいですが、その材料の大部分は再利用されます。
ご心配なく・・・ホイ
Posted by: アナログ熊さん | March 05, 2013 20:32
>アナログ熊さん
コメントを自粛される必要なんてありませんから、どんどん冷やかしでくださいませ。
どうやら昔の建物のほうがいい材料を使っているみたいですね。建物だけじゃなくて、大地震のときも、建設中の新しい埠頭が大きく陥没したのに、古い埠頭がずいぶん丈夫だったのには驚きました。
それにしても建物を破壊するというのは案外手間のかかるものですね。もっと短期間で姿を消すと思っていたんですけど。
Posted by: 薄氷堂 | March 05, 2013 21:42
あー、「男」の世界にされてるしー!
「女」の中にだとて惹かれるものは居ります。
あ、これこそ「あたしだけだろうか?」??
アナログ熊さんの解説してくださっているのをじっくり拝読いたしました。
砂にそんな差があったとは!!
Posted by: りら | March 06, 2013 03:25
コンクリートで一番大事な事を忘れていました。
水セメント比といいますが、つまり生の状態の水分量です。
水分が多いほど作業効率(ポンプで圧送しますので)が良く、水分が少ないほど作業がし難いですが強度が飛躍的に増加します。
例えれば、生コン車で現場へ来た生コンを圧送する時の硬さが「田植えの田んぼ」とすれば、ヨーロッパのコンクリは天ぷらの衣くらい硬いです。
(ベルリンの壁は軍用ですのでさらに硬いのですが、あのイメージ)
圧送するパイプは10センチしかなく、この中を砂利が通るにはそうとう水を含ませなければ・・・ってわかりますよね?
現場監督の恐怖は、圧送車のポンプが詰まった時です。
詰まった場所の特定と復旧作業している間に、順番待ちしている生コン車の
生コンが固まってくる・・・・
これを避ける為に、圧送現場で水をさらに注入します。
結果、監督も生コン屋もポンプ屋も仕事が速く終わってwin:winです。
これは建築現場の話で、土木現場では現場にコンクリートプラントを造りそこでコンクリを作ります。
さらに土木構造物の耐用年限は想定しないというか永遠にもって欲しいんで、その硬さというか強度は建築の比ではありません。
>大地震のときも、建設中の新しい埠頭が大きく陥没したのに、古い埠頭がずいぶん丈夫だったのには驚きました。
最近は土木の現場にも建築業界の毒が浸透してきたという事でしょうかね?
Posted by: アナログ熊さん | March 06, 2013 06:29
>りらさん
この光景ですが、こじつけでフロイト流に解釈すれば、建物(女性)に対して重機(男性)が暴力をふるっているように見えませんか?
もしぼくのでたらめな想像にいくぶんでも真実が含まれているとすれば、意味深ですよねえ(笑)。
Posted by: 薄氷堂 | March 06, 2013 07:53
>アナログ熊さん
う~む、この間は文地理かと思ったら、実は土木科ご出身だったとは(笑)。
なるほどコンクリにも水増しというのがあるとは…… ウィスキーだって薄めすぎはよくないですもんね。
ところでど素人考えなんですけど、古い埠頭に案外被害が少なかったのは、長年のうちに基礎部分が落ち着いて安定したという可能性はないんでしょうか? もっとも建設段階で手抜きがあればスカスカになってしまうこともあるんでしょうが。
Posted by: 薄氷堂 | March 06, 2013 08:02
>薄氷堂さん
> う~む、この間は文地理かと思ったら、実は土木科ご出身だったとは(笑)。
土木じゃなくて「建築科」です。それも高校の、それも日本で唯一の国立の工業高校の・・・です。(笑)
専門科目のレベルは非常に高度でしたが、何しろ数学/物理がダメで(全然意味が分からなかった)、いくらかでも建築に関係あるだろうと「産業社会学部」に行きました。
「コンクリートが危ない」という名著があります。URL入れておきました。
新書版ですから皆さんもぜひお読みになってください。ゾッとしますよ!
Posted by: アナログ熊さん | March 06, 2013 15:34
>アナログ熊さん
高校は建築科のご出身でしたか。先日はちらりと女性のお話も出てきたし、だんだん過去が明らかになってきましたね(笑)。
コンクリートの危険については、ずいぶん以前ですが、NHKで特集を組んでいましたね。たしか塩分が問題だったように記憶しています(ちがったかな?)。
Posted by: 薄氷堂 | March 06, 2013 18:12