Daily Oregraph: 旧弥生中学校ウォッチング
スリップしてタイヤの空転する音が聞こえてきた。好天つづきでかなり路面の状態は改善されたとはいえ、凍った上り坂の途中でいったん停止すると発進はむずかしいのである。しかしそこはプロ、まもなくタクシーは無事動きはじめた。
こちらも歩行協会のプロだから、なんなく坂を上って、ひさしぶりに旧弥生中学校の校舎を撮影。これも一種の定点撮影である。地元紙としての勤めのひとつだね。
校舎の裏手に回ってみた。窓をふさいだコンパネの表面には、あちこち心霊写真風の模様が浮き上がっているけれど、これでは幽霊の這い出る隙間もあるまい。
スプレーのペンキを使っているのだろう、ところどころにイタズラ書きをしてあるのだが、どれも社会性もセンスもゼロなのは悲しい。どうせ落書きするなら、人をうならせるような文句を考えてはどうだ。
太平洋を見下ろす崖の上に立つこの校舎は、長年放置されたまま。資金の問題だけではなく、簡単には取り壊せない事情もあるらしい。かりに取り壊したとしても、跡地をどう再利用するのか、ぼくの生きているうちに片がつくのか(笑)……まあ、体の動くうちは、ときどき観察することにしよう。
『エマ』のノートをやっと読み終えた。ノートの残りはあと約千ページ。それを廃校同然の頭でやらなくちゃいけないのだから、なんだか気が遠くなってきた。
【付記】
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Comments
太平洋を見下ろす・・・
いいなあ、何でこんな立地の学校が廃校になってしまったのか・・・もったいないなあなんて思っちゃいますが・・・
そう言えば、私の卒業した中学校からも、高校からも太平洋が見えました。
高台にあった高校は3.11後に避難所に、海抜1m程の場所にあった中学校は・・・津波にそのどてっぱらを貫かれてしまいました。
Posted by: 三友亭主人 | January 19, 2013 23:02
>三友亭さん
すばらしい立地ですよ。晴れた日には北米大陸が見えましたしね(笑)。
ぼくは一貫して学校嫌いでしたが、やはり多くの時間を過ごした校舎にはなつかしさを感じるものですね。
この中学校の跡地には、末期老人ホームでも建てるといいんじゃないかと思っています。太平洋を眺めながらこの世を去るというのは、なかなか詩的で悪くありませんよ。
Posted by: 薄氷堂 | January 20, 2013 07:47
過疎化の現実というのは
こうした写真を見ることによって
いろいろと感じさせられ、考えさせられますね。
東京辺にいるとますます人が増えて
過疎化の想像さえしにくいです。
Posted by: 根岸冬生 | January 20, 2013 10:11
>根岸冬生さん
釧路あたりは一応地方の中核都市だから、まず当分は大丈夫でしょうが、高齢になり車を運転できなくなったら、買い物にも行けない、病院通いも困難と、田舎暮らしはむずかしくなります。
やがて面倒を見てくれる身よりのない老人がバタバタと孤独死していき、あちこちに倒壊寸前のボロ家が残って、田舎だけでなく地方都市もさらに荒廃していく……とまあ、あまり夢のある話じゃありませんけど、このままだとそうなるんじゃないですか。
一方大都市はどうかというと、逆に老人の吹きだまりになり、みんな金持ならめでたいけれど、そうはいかないから、対策にひどく苦労するでしょう。都市計画も含め、一大転換期にさしかかったことはたしかでしょうね。
どうも最近の流れを見ていると、老人は働けるだけ働かせて、さっさと死んでほしいというのがお上の本音のようです。
それに協力しているのがマスコミで、年を取ってもこれこのとおり元気で働いている人がいる、百歳になってもしゃきっとしている人がいると、数少ない幸福な例を挙げて、おまえも甘えるんじゃない(笑)という大キャンペーンを展開しています。
株価さえ上がれば万事めでたしということらしいですよ。
Posted by: 薄氷堂 | January 20, 2013 12:09