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December 31, 2012

Daily Oregraph: 2012 年末句会

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 今日は外出していないので、29日に撮った知人海岸の写真を今年最後の一枚にしておく。

 さて昨日の夜は雨。まさに、

  
雨だれや歳末の街夜となる

というとんでもない天気であった。出来はともかく、まずはぴったりのこの一句、原始的な自作俳句作成プログラムが出力したものである。

 いまから18年ほど以前に作成したこの MS-DOS のプログラムは、上五・中七・下五それぞれのファイルから、乱数によって一語ずつ選んでむりやり俳句を作成し、六句ずつ画面に表示するとともに、結果をすべてファイルに保存するというもの(残念ながらこのプログラムは Windows 7 では動作しない。XP までである)。

 季語などのチェックは一切なしというひどく乱暴なプログラムだけれど、その乱暴なところが意外におもしろく、人間なら絶対に作らないような奇妙な句ができあがる。もともと上五・中七・下五それぞれ200語だったものを、このたびは280語ずつにしてみた。

 なんだ、たったの280語か、というなかれ。280の三乗だから、全部で 21,952,000句も生成する計算になるのである。もちろんめちゃくちゃなものがほとんどだから、まともな句はその平方根、つまり 4,685句程度ではないかというのがぼくの予想である。しかしかなりヘンだけどおもしろいというものも勘定すると、少なくともその数倍にはなるだろうと思う。ただし数が多すぎるから、実行して確認するのはまず不可能に近い。

 あまりにもバカバカしいから、年にいっぺんくらいしか走らせないのだが、まあ年末のお遊びとしておつきあいいただきたいと思う。

 今回は必死に Enter
 キーを叩いて(笑)、約二万句を出力したが、それすら多すぎて、チェックしたのはほんの数千句にすぎない。

 当然のことながら、一番多いのはまるで無意味な句である。

  
うぐひすや何で年よる女学生

  
雪深し窓の外には蝉の声

  
蛍火や思ひがけなき年の暮

  
冬の雨暑さ忘るる年の暮

 いくら異常気象とはいっても、これは無理(笑)。どんどん削除する。

 次は月並調。NHKの「昼のいこい」なら採用してくれるかもしれない。

  
夏木立町まで行くや僧ひとり

  ちらほらと氷流るる運河かな

  講堂にひとりふたりと春の雨

  冬近し淋しさにたへ城下町

  春の海日のさしてゐる台所

  春燈や女ばかりの別れかな

  少年や道遅れゆく春の風


  
秋の雲いづこより来る少女たち

  
身にしむやわれも旅人冬の月

  
なんとなく少女うつくし雪の朝

  
下京や去りゆく人に夜の霧

  
病人の筆はかどらぬ花ぐもり

  ひとしきり路地暗くして柿を食ふ


  
都にもただなんとなく冬の雨

  
外套の東に西に祇園かな

  
外は吹雪色失ひし人歩む

  
旅立ちや教師の娘雪白し

  
礼拝堂歌流れくる田舎道

 いや、中には「昼のいこい」の水準をはるかに超えた、かなり出来のいいものもまじっており、そうバカにしたものではない。自分ではとても作れそうにないものばかり(笑)。最後の句などは無季だけど、19世紀英文学の世界じゃないか。

 つぎはちょっとヘンな句を。

  
かげろふや強き女よ狙撃兵

  
冬近し銃声空に化粧かな

 これらはパルチザンの女を歌ったものだろう。

  
内科医師風吹きすさぶ台所

 帰宅したら妻が逃げていたのである。

  
水鳥やコロツケを買ふ遍路かな

 水鳥とコロッケ、そしてお遍路という意外な取り合わせ。近景と遠景とが立体感をもたらしている(ような気がする)。

  
春燈や人を恐るるヴアイオリン

 麦穂亭を連想した一句。「人の恐るる」では、弾き手の人柄が正しく伝わらないからダメ。

  
手術台われも歌はん雛祭り

 これは麻酔をかけられる直前であろう。

  
長き夜や鼓を鳴らすピアニスト

 ピアノではなく鼓であるところに値打ちがある。

  
炎天や鐘打ちならす台所

 これは解釈がむずかしいけれど、暑さで主婦が錯乱したというのが一解。

  
朝霧や見渡すかぎり老人会

  武装して鐘打ちならす老人会

  芋焼酎危険な空想老人会


 老人会三句。こういう句はちょっと作れない。

  
病人の流れて来たる水の音

 この不気味な感覚は人間離れしていると思う。

  
木枯しや女ばかりの伊豆の海

  木枯しにただなんとなく受験生


 木枯し二句。これは最初の句のほうが意外性もあり上出来だと思う。木枯しと受験生ではつきすぎているからだ。

  
長き夜や腹わづらひて印度人

 明らかに食い過ぎである。ひょっとしたら料理に古い油を使っていたのかもしれない。

 最後にちょっと気に入ったものをいくつか。

  
木枯しや犬吠えかかる京の町

 カメラを持ってウロウロしているとこういう目に会う。他人事ではない。

  
少年やナイフ冷たし夏木立

 これ、ちょっとひんやりしていい感じじゃないだろうか。

  
尼寺や文読みかへす夜の雪

 明らかに月並調ではあるが、恋の句ということで……

  
冬の月かたち正しき焚火かな

  正座して東京の人冬の月


 四角四面の気分にさせるのは冬の月ならではだろう。

  
国滅び強き女よ山の春

 いまの日本国にふさわしい一句……だとはお思いにならないだろうか?

  
長き夜や麦わら帽子数知れず

 秋と夏がぶつかっているようだが、そんなことはどうでもいい。意味はよくわからないけれど(笑)、ぼくは気に入った。

 一年の最後にバカバカしいお遊びにおつきあいいただき、まことにありがとうございます。来年ももし Windows XP マシンが無事であれば句会をと考えておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 みなさまどうかよいお年をお迎えください

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Comments

いやあ・・・いろいろありますなあ・・・
お気に入りをあげてみると

少年や道遅れゆく春の風
国滅び強き女よ山の春
少年やナイフ冷たし夏木立
なんとなく少女うつくし雪の朝

・・ってとこでしょうか。

自分でも、一句ひねることがかなうならばと思うのですが・・・なかなか・・・

ということで来年もお願いいたします。

Posted by: 三友亭主人 | December 31, 2012 at 20:30

>三友亭さん

 お気に入りがあったようでなによりです。デタラメなようでいて、案外まともなものもあるでしょう(理屈からいってもあるはず)。

> 自分でも、一句ひねることがかなうならばと思うのですが・・・なかなか・・・

 それはお互いさまですよ。だからこそ機械に作らせようなどとけしからんことを考えるわけです。ご専門の方なら烈火の如くにお怒りになるかも(ごめんなさい)。

 では来年も(もうすぐですけど)よろしくお願いいたします。

Posted by: 薄氷堂 | December 31, 2012 at 21:32

僕らが平素使っている日本語のボキャブラリーだって
そんなに多いものではないみたいです。
こういうソフトだと適当な文字合わせの中に
意表を突いた意味や味わいを生み出す意外性に面白さがあるかも。
それって芭蕉以前の俳諧の面白さでもあるかもしれません。

侮れませんね。

Posted by: 根岸冬生 | January 01, 2013 at 01:09

後厄の 早く出てこい 初日の出

もう年なんで、とにかく早く目が覚めちゃって、窓から初日の出を待ってます。
今、出てきました。拝

Posted by: アナログ熊さん | January 01, 2013 at 07:11

>根岸冬生さん

 おっしゃるとおり、話しことばのヴォキャブラリなんてたいして多くはありませんよね。

 ところが小説ともなると、一万語程度の単語力ではとても満足には読めないのだから、人間の頭の処理能力とは恐ろしいものです。

 そういえば、ぼくのソフトからはこんな句も出てきましたよ(笑)。

 元日や女に惚れる嵐山

Posted by: 薄氷堂 | January 01, 2013 at 19:58

>アナログ熊さん

 おめでとうございます。

> 窓から初日の出を待ってます。

 そこで一句。

  テデイベアとともに日の出を拝みけり

 あ、これは機械出力じゃありませんけど、なんだか自動俳句のほうが上等かも(笑)。

Posted by: 薄氷堂 | January 01, 2013 at 20:02

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