Daily Oregraph: Kyoto 2012 八千代館 for ever
新京極の八千代館については、これまでに何度か記事を書いた覚えがある。どうしてこの映画館が気に入ったか、こちらをお読みいただければたいていご理解いただけるのではないかと思う。しかし人があるものを好む背景には、たいてい理屈を超えた事情があって、箇条書きにして説明するのは案外むずかしいのである。
人は権利や義務によってあるものを好きになったり嫌いになったりするわけではないからだ。だからたとえば「嫌煙権」などということばを聞くたびに、ぼくはそれこそ憂鬱な気分になる。嫌うのはむろん勝手だが、それは権利などではない。もしあれやこれや、あなたがお嫌いになることをすべて権利として認めれば、そこから社会的不寛容まではほんの一歩である。
さて理屈を超えてぼくの気に入った(笑)八千代館はどうなっただろうか? まずは2002年9月24日撮影の写真から。過去に掲載ずみの写真が含まれていることをお断りしておく。
こんな姿に変わっていた。映画館廃業はまことに残念だが、たいへん格調の高い建築本体が残されているのはうれしいことだ。たぶん関係者のみなさまも取り壊すに忍びなかったのであろう。そのすばらしい決断に対し、満腔の敬意を表したい。
なおカサブランカの看板から南に入る小路には美松会館がある(あった)はずだけれど、こちらも廃業したのではないかという話をあとで耳にした。ただし未確認である。取材が不徹底であったことを反省している。
最後に後世の史家のために作成した(笑)略図をごらんいただきたい。アナログ熊さんのためにテディベアの京ベアのおおよその位置も記入しておいた。
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Comments
>人は権利や義務によってあるものを好きになったり嫌いになったりするわけではないからだ。
おっしゃる通り。権利がなくたって絶世の美人に出会えば誰だって好きになっちゃうし、大阪の白カブを見れば誰だって…いやこれは人の好き好きか・・・
まあともかく、人の好悪はあれこれ指図できぬもの・・・特に嫌いだっていうことを強制されるのはたまったもんじゃない・・・ですよね。権利じゃないけど、嫌いなものは嫌いって言える世の中であってほしいと思うのですが・・・最近どうも・・・・ね。
Posted by: 三友亭主人 | December 17, 2012 22:13
>三友亭さん
だれもぼくに歌いたくない歌を歌えと強制することはできません。歌いたい歌なら、歌うなといわれてもこっそり歌うでしょう。人間であれば、ごくあたりまえのことです。だから歌えとも歌うなともいってはいけませんよね。
美しいことば、文化、景色のある国なら、だれにいわれなくとも自然に愛情が湧いてくるのですから、お上のご指導などまっぴらご免こうむりたいものです。
ぼくが実はナショナリストなのだと知ったら、ビックリするでしょうか(笑)。
Posted by: 薄氷堂 | December 18, 2012 11:52