Daily Oregraph: 春採湖畔 夏の抵抗
木陰はさすがに涼しいが、今日は気温が上がった。最高気温27.5度。しかも17時17分に最高を示したというのは、釧路ではめずらしい。
現在室温26度。窓を開け放っても風が入ってこないのである。しかしこれはこれでオンザロックがうまいから、たまには悪くない。
なんとなく湖水もトロリとした感じであった。油を流したように見えるのは光の加減である。
しかし一時の暑さにだまされてはいけない。ネムロブシダマの果実もほんのり色づいてきた。季節の進行をだれも食い止めることはできないのである。
これはコウゾリナだろう。全体がゴチャゴチャいるからあまり好きではないのだが、一応記録として。
本日の読書。今日はレベッカ嬢がカレーを食べる場面。
昨日掲載した挿絵で、人形をふたつあやつって即席の芝居を演じていたのがレベッカ嬢である。もう一度顔をよくごらんいただくとわかるが、一癖もふた癖もある娘で、貧乏育ちだが、英仏のバイリンガル、頭は切れるし、ピアノはうまいし、器量もいい。抜け目のなさと美貌を武器に、いずれ男をひっかけ、玉の輿に乗る機会を虎視眈々と狙っているのである。
作品の舞台設定は1810年代初期。さるお屋敷で食事の席についたレベッカ嬢、生まれてはじめてカレーを目にして、What is it? という。カレーは東インド会社経由で伝わってきたのだろうが、この頃はまだ一般的ではなかったようだ。
インドから一時帰国したこの家の息子が、「うまい。これはインドで食べているのと変わりませんよ」てなことをいっているから、インド風のレシピによるもので、ハウスのバーモントカレーとはちがうことがわかる。
インドカレーといっても種類がやたら多いから、どんなカレーだったかはわからないが、辛さに閉口したレベッカ嬢、よせばいいのに「まあ、おいしい!」とお世辞をいう。
「チリ(唐辛子)もいっしょにお上がりなさい」とすすめられ、チリなるものの正体がわからぬまま、口直しのつもりで丸のまま口に放りこんだからたまらない(笑)。
このように、古典文学というのは歴史的・風俗的資料としてもおおいに値打ちがある。もっともどうでもいい知識ばかり増えるきらいもあるけれど……
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Comments
>どうでもいい知識ばかり
私の自慢は役に立つ知識がないことで・・・(笑)
近頃本屋に行っても、「人の心を思い通りにナントカ」とか、「理想の上司がナントカ」とか、という名の役に立つ本ばかりがのさばってきて、この前の水木しげるが書いた本ようなのような役に立たない本が肩身が狭そうに本棚の隅に・・・
世の中の方も役に立つ人ばっかりがのさばってきて・・・私のようなものは・・・
お酒を飲んでいるより他はありません・・・
Posted by: 三友亭主人 | August 21, 2012 05:49
>三友亭さん
1810年代のカレーの知識などまるで役に立ちませんが(笑)、現在書店の本棚にはびこっているハウツー本や自己啓発本のほとんどはもっと役に立たないんじゃないかと思いますよ。
まあ、時間つぶしにはなるけれど、もっともらしい法螺ばかり書いてあるから、有害な場合のほうが多いんじゃないでしょうか。
一生を自己啓発本なんぞに費やして、虚しく人生を終えるのもバカバカしい話ですよね。それなら水木しげる先生の浮世離れしたマンガを読みながら一杯やったほうがずっと有意義ではないかと……
Posted by: 薄氷堂 | August 21, 2012 10:07
うふふ。この場面は痛快ですね。
>これはインドで食べているのと変わりませんよ。
だったら、相当の辛さのはず。それにチリ……。
予想つきます。当時のインドの辛さには遠慮がないはずだからね。
Posted by: 根岸冬生 | August 21, 2012 16:07
>根岸冬生さん
これ、抜群におもしろい小説ですよ。岩波文庫の新訳では全四冊です。
ところでインドの料理は船でよくごちそうになりましたが、とても種類が多いので、なにをもってインドカレーというのか、いまだによくわかりませんね。
Posted by: 薄氷堂 | August 21, 2012 22:52