Daily Oregraph: 釧路のブルーベル
春採湖畔のツリガネニンジン(キキョウ科 Adenophora triphylla)。めずらしく少し近寄って見たのだが、これはツリガネといっても西洋風の鐘である。英国の小説によく登場するブルーベル(bluebell)という花はたぶんこの仲間だろうと思いついて調べてみた。
辞書を引くと、ブルーベルと呼ばれる植物にはいくつかあることがわかる。つまり特定の花の名称ではなく、一般に青いベル状の花をそう呼ぶらしい。英国では北と南では種類がちがい、OED によれば、
スコットランド・北イングランド……Campanula rotundifolia(キキョウ科)
南イングランド ……Scilla nutans(ユリ科)
となっている。
手元にある『野草の写真図鑑』(日本ヴォーグ社刊)は英国と北西ヨーロッパの野草を扱った図鑑だが、これにはユリ科の Scilla non-scripta というのが掲載されている。ツリガネニンジンの花を細長くしたような紫がかった花である。
キキョウ科でベルのかたちをした花には、ホタルブクロなど学名が Campanula (小さな鐘)ではじまるものと、ツリガネニンジンのように Adenophora (乳腺のある)ではじまるものがある。
いずれにしてもツリガネニンジンが bluebell の仲間であることはまちがいない。なおニンジンというのは、「白く太い根を朝鮮人参にたとえたもの」で、「漢名 沙參(シャジン)を慣用」(『牧野 新日本植物図鑑』による)。
さて本日の読書。マギー嬢のセリフから、
むずかしくてわからないことだらけですけれど、ひとつはっきりいえるのは、私は人を犠牲にして自分の幸せを求めてはいけないし、そんなことはできないということです。
こういう人物は、悲しいことに、なかなか楽な人生を歩むことはできないものである。
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Comments
>人を犠牲にして自分の幸せを求めてはいけないし
世の中、こんな考えの人ばっかりだったらさぞかし住みやすくなるんでしょうね・・・この国も(他所の国も事情は一緒か)・・・これを煎じ詰めて行けば、宮澤賢治の「宇宙全体の幸福」となって行くのでしょうが、実現不可能な絵空事であることは確か・・・けれども、その実現不可能な絵空事をできるだけ多くの人が望むようになればとは思っているんですが・・・・
果たして自分がそうであるかということすら、自信がない・・・
Posted by: 三友亭主人 | August 13, 2012 06:55
>三友亭さん
現実には選択肢に直面するたびに困難な道を選ぶことになりそうですから、悲劇的な感じがしますよね。
それこそひとつはっきりいえるのは、こういう人は政治屋なんぞになってはいけないし、またなれもしないということでしょうか。
Posted by: 薄氷堂 | August 13, 2012 09:23
曲がったことは大嫌い。
まっすぐ言ったらぶつかっちゃった。
という人はよくいますね。
ということは恙なく生きるということは
必ずしもよい人生ではないのかもしれません。
昔、「道頓堀川」という宮本輝の小説で
八卦見に、親父が父子の運勢を占ってもらおうとしたとき、
「何が幸せやと思いますか」と聞かれ
「苦しいことやつらいことが起きない人生」と答え
そのあとに
「いや、そんなことがあっても、へこたれんと生きていけるかどうかや」と言い直す場面があります。
そのせりふを思い出しました。
Posted by: 根岸冬生 | August 13, 2012 21:58
>根岸冬生さん
世間との交渉をつづけるかぎり、いかに意志強固な人といえども、心の揺れる場面から逃れることはできません。それがいやなら尼寺へ行くしかないでしょうね。
今日読んだところでは、わがマギー嬢も人生最大の選択を迫られ、おおいに動揺しています。作者がどういう結末を選択するのか、興味のあるところです。
Posted by: 薄氷堂 | August 13, 2012 23:07