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July 21, 2012

Daily Oregraph: 性格の悲劇

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 亀よりものろい歩みながら、『フロッス河畔の水車場』もやっと Book III にたどり着いた。この巻には Downfall という副題がついている。下へ落ちるのだから、文字どおり「没落」である。

 一家に没落をもたらしたものはマギーの父親の性格である。他人の難儀を黙って見過ごせぬ侠気を持ち合わせた好人物なのだが、自信過剰で軽率なところがある。訴訟沙汰を繰り返しているから、いつか痛い目に会うだろうという親戚一同の予言が的中したわけである。

 性格の招く悲劇には防ぎようがあるかどうか、というのはずいぶんむずかしい問題で、文学の永遠のテーマのひとつでありつづけるにちがいない。このたびの大津の中学校いじめ自殺事件にしても、ぼくが注目しているのは、いわゆるいじめ問題ではなく、加害者の性格である。事件の異常性は明らかに「いじめ」のレベルを越えており、性善説に立脚した教育などで解決がつくのだろうか、という疑問を拭えないからだ。

 さて物語のはじめでは9歳だったマギーちゃんは13歳になった。ぼくは深刻な話はどうも苦手なのだが、いまさら本を投げ出すわけにもいかないから、最後までマギー嬢の苦闘におつきあいすることにしよう。

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Comments

>性善説に立脚した教育などで解決がつくのだろうか、という疑問

確かに難しい問題ですね。ただそうではあっても、生徒を疑ってかかってしまってはたして学校教育が成り立つのかどうかということを考えた時、そこに何かしらの空しさを感じてしまいます。

Posted by: 三友亭主人 | July 22, 2012 at 07:07

 人間はクオリティ・コントロールをすませて出荷される工業製品じゃありませんから、バラツキが大きいのはしかたがないと思います。そこをなんとか調整しながら、みんなで生きていくために教育があるのでしょう。

 しかしものごとには限度というものがあって、たまに出現する特異人格に対しては、ふつうの教育では間に合わないんじゃないかという気がするのです。

 たとえば今回の事件など、「いじめ」ですませてしまっていいものかどうか。ほんとうに自殺なのかという疑問さえ湧いてくるほどの異常性を感じます。

 自己保身をはかる学校や教育委員会はもちろん責められるべきにしても、かりにもう少しまともないじめ対策を取っていたら、あの事件は防げたのだろうかという疑問があるんですよ。

 排除の論理は好まないけれど、常識的に考えて、ふつう羊の群に狼を同居させる人はいないでしょう。どちらにも生きる権利はあるにしても、狼の権利を守るために、むざむざ多くの羊の生命を犠牲にするわけにはいきませんから。

 もちろんヘタな制度を作ってしまえば、悪用される可能性がありますから、拙速は禁物だと承知はしているんですが……

Posted by: 薄氷堂 | July 22, 2012 at 09:54

>たまに出現する特異人格に対しては、ふつうの教育では間に合わないんじゃないか

確かにそうですよね。悲しい話ですが・・・
昔、アメリカの学校を視察した友人の教師が行っていました。
むこうじゃあ、ピストルを持った警官が廊下をうろうろしている、と・・・
是か非はは別にして、情けない話ですがこの国もそれに近づいてしまっているのじゃあないかなんて気持ちになってきます。

Posted by: 三友亭主人 | July 22, 2012 at 20:58

>三友亭さん

 ここは自分がもし教師だったら……という想像力を働かせてみることも必要でしょうね。

 ことなかれ主義を批判するのは簡単だけど、じゃあ、あなただったらどうしますか、なにができますか、ということですよ。

 加害者にせよその家族にせよ、話してわかる相手だったらまだしも、もしそうでなければ、あなたご自慢の理性と判断力はまるで無力かもしれません。そうかといって、あなたにはなんの権限も強制力もない。さあ、どうしましょう?

 加害者にも人権が……などという人も多い世の中ですから、教師自身、身動きの取れぬ状態にあるんじゃないでしょうか。

 打つ手なしという状態に追いこんだ世間が学校と教育委員会を袋叩きにしても、気分は多少スッキリするかもしれないけれど、なにも解決しませんよね。

 意地悪程度のいじめなら、もちろん教育の出番でしょうが、恐喝、暴力となると話はまるでちがってくると思うのです。打つ手を考えないと、犠牲者は跡を絶たないでしょう。

Posted by: 薄氷堂 | July 22, 2012 at 21:50

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