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May 02, 2012

Daily Oregraph: 疲れちゃったの

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 今日もうっすらと霧がかかっていた。冬に脱ぎ捨てたコートを着るほどではなかったが、ちょっと肌寒い。それでも春採湖畔を歩いているうちに体が温まってきた。

 道内でもあちこちで桜が開花したらしい。しかし釧路の開花予想は18日だから、当分花見の写真は無理というものである。

 しかたがないので、ゴシック・ロマン風味たっぷりの不気味な写真を撮って、本日の一日一枚とした。カラーである意味がまったくないので(笑)、えいやっとばかり白黒に変換してしまった。

 なにしろ春採湖畔にしか行っていないから、まるでネタがない。また『ジェイン・エア』に頼るとしよう。

 わけあって屋敷を出奔したジェイン嬢は、わずかの所持金を使い果たし、職を得ようにも知らぬ土地ではままならず、気の毒にも野宿をしたり物乞いをしたり、しまいには餓死寸前のありさま。ある夜遠くに見える明かりに誘われ、最後の力をふりしぼって、とある一軒家にたどり着く。

 窓から室内の様子をうかがうと、テーブルのそばでは婆さんがひとり靴下を編んでいる。暖炉の前では、少女がふたり、椅子に座って熱心に本を読んでいる。

 その本というのがふつうではない。ドイツ語の本、しかもシラーの戯曲なのだから恐れ入る。ドイツ語の文章が引用されているのにはギョッとしたが(笑)、巻末注に訳文があったのでホッとした。どうやらふたりは辞書を頼りにドイツ語の勉強をしているらしい。

 使用人とおぼしき婆さんには(この時点ではジェインにも)、もちろんドイツ語などさっぱりわからない。そんな勉強をして、なにかいいことでもあるのかね、などと現実主義丸出しのことをいう。

 「いつか教えるつもりなの。ほんの初歩だけでもね。そうすれば、いまよりもお金が入るでしょ」

 シラーを読んで感激するほどの実力があれば、かならず夢はかなうだろう。一家の経済に寄与しようというんだから、えらいなあ。

 「そうだね。でも勉強はもうおやめ。今夜はもう十分」

 「十分よね。私疲れちゃった。メアリ、あなたは?」

 「とっても。だって先生はいないし、辞書だけで外国語をこつこつ勉強するのはたいへんなんだもの」


 -君、見たまえ、少女でさえ倦まずたゆまずドイツ語の本を読んでいるのだから、君も酒を食らってばかりいるわけにはいかないじゃないか。ちっとは反省してはどうだい。

 -へい、ごもっともです。だけど私も今夜は疲れちゃったから、一杯やりながら反省いたしましょう。

 -ばかな男だ。ところで、この話のつづきはどうなったんだい?

 -へへへ、あなたも知りたいでしょう? ぼくもなんですよ。

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Comments

>だって先生はいないし、辞書だけで外国語をこつこつ勉強するのはたいへんなんだもの

あの時あんたはこう言ったた言わなかったなどと、他人の言質をとることばっかりに汲々としている世の中、少しはこんな姿勢を見習ってほしいと思うこと頻り・・・・

>君も酒を食らってばかりいるわけにはいかないじゃないか。

そうはいかなくっても、こんなご時世、酒でも飲まなきゃあ・・・

まあ、どんなご時世でも酒ばっかり食らっているんでしょうが・・・


Posted by: 三友亭主人 | May 02, 2012 at 22:59

>三友亭さん

 ていねいに読み返してみたら、ふたりの少女をちょっとだけ若く見積もりすぎたかもしれませんが、大意は変わりません。

 『ジュード』の主人公も、貧乏で学校へ行けないから、ギリシャ語やラテン語をコツコツ独学するわけです。そうするとひどく能率が悪く、時間が何倍もかかりますよね。ジュード君は、ああ、身近に教えてくれる人がいればなあ、と嘆いておりました。

 じゃあ、人間学校へ行けば勉強に励むかといえば、必ずしもそうじゃない。せっかくの機会をたいていムダに過ごしてしまうものです。

 おのれの愚かさに気づいたときには、長年の飲酒のせいか(笑)、すでに頭が相当劣化していますからねえ。

Posted by: 薄氷堂 | May 03, 2012 at 08:39

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