Daily Oregraph: 特集 釧路 2000-2012 (2)
2000年8月5日(上) 2012年2月23日(下)
旧丸井今井前から撮影したもの。商店の看板に注目すると、ずいぶん変化したことがわかる。ただし上は港まつりを撮ったものだから、人口が写真のように激減したわけではない。イベントさえあれば、人々はどこからか大勢集まってくるのである。
2000年8月5日(上) 2012年2月23日(下)
喫茶リリー前から旧丸井今井方向を見る。2000年当時すでに北大通の衰退が話題になっていたけれど、それから十年以上の間に、さらに一段と変化したことはご存じのとおり。
2000年8月5日(上) 2012年2月16日(下)
すずらん通り。ここはそう大きく変化していないけれど、看板をよく見ると、飲食店はかなり入れ替わっている。
2000年8月12日(上) 2012年2月16日(下)
旧丸井今井新館前の通り。このアングルから見るかぎりではほとんど変わっていないが、画面から外れた部分では、角のお店が変わったり、いなり小路が消滅したり、やはり変化をまぬがれているわけではない。
2000年8月5日(上) 2012年2月16日(下)
川上町6の交差点にあった消防第7分団の建物はもはや姿を消した。格調の高い建築であったが、上の写真を撮ったときにはすでに老朽化しており、消滅を予感させるものがあった。
2000年8月16日(上) 2012年2月22日(下)
寿1交差点。北埠頭の入口にあたるから、バス停は「埠頭入口」である。昔上の写真の横丁にある飲み屋で先輩にごちそうになったことがある。流しのギター弾きがふらりと入ってきて、客の注文に応じて歌っていたのだから、夢のような話だ。
さてこれまでいくつかの比較写真を見てきたわけだが、2000年といえば平成もすでに12年、昭和の面影がまさに消えゆこうとしている時期だったと思う。それからさらに十年、古い建築物が取り壊された跡地には無趣味な建物がキノコのように生え、あちこちに没個性の景色がはびこって、散歩する楽しみはだんだん減ってきた。
昔はよかった、などというつもりはもちろんない。道ばたのゴミ箱にはウジがたかり、ちゃぶ台の上にはたくさんのハエが旋回し、体育館では列をなして頭にDDTを噴霧され、給食ではドブ水のようなブタ用のミルクを飲まされるような、貧乏で不潔でみじめな時代に、だれがもう一度戻りたいと願うだろうか。
しかしそれらの不快な要素をすべてレタッチして消し去れば、あらふしぎ、なつかしい風景が目の前に展開して、そういえばいいことだってあった、駄菓子屋でアメを買ったときのうれしさ、やっと手に入れた本の包装紙の手ざわりや輪ゴムの匂い、わくわくしながら見た白黒TVのアメリカン・ドラマ、小便くさい映画館で見た東映の時代劇、はじめて口にしたコーヒーのふしぎな味、どれもこれもが魔法のようによみがえるのだ。まさに映画「三丁目の夕日」がCGを駆使して再現した疑似現実である。
ぼくたちが目にし、手に触れ、耳に聞いた現実は、たとえこの世から消滅したとしても、それにともなう記憶はきっと灰色の脳細胞のどこかに残るから、その再現を求めようとするのはごく自然なことだ。年寄りの懐古趣味として一概に退けるべきではないとぼくは思う。
なつかしい記憶の一片は、ときとしてつらい思い出をたぐり寄せることだってあるのだから、じいさんばあさんは必ずしも昔を夢見つつボーッと幸福感にひたっているばかりではない。そのことを忘れずに、温かい目で見てあげる(笑)ことが必要なのである。
これからも昔の写真と同じ場面を撮ることがあったら、随時ご紹介していきたいと重う。
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Comments
12年間で変わった風景がよくわかりました。
頭の中にあるのはさらに30数年さかのぼる1960年代のこの辺一帯。いつも人で溢れていました。
Posted by: | February 24, 2012 23:53
>?さん
1960年代でしたら、山下書店のほかに日進堂書店を思い出しますね。ほんとうにマチがマチであった時期です。
Posted by: 薄氷堂 | February 25, 2012 20:08
今晩は
前回、名前を記すのを忘れました。
すいません。
そうです。
木の床がぎしぎしなっていたイメージのある日進堂書店。
山下書店には書棚を背にする女店員がいました。
客の方を見ているのですね。
いずれも人で溢れていましたね。
ほとんどこずかいを持ちあわせていなかった中学・高校時代、両書店で本を購入できるのはお盆と正月くらいでした。
港祭りのイメージは霧のイメージです。
Posted by: ミキタカ08 | February 25, 2012 22:18
>ミキタカ08さん
ぼくはマチへ行ったら、必ず両方の書店に入りました。
いまや出版界は苦境にあるようですが、当時は文化すなわち書籍でしたし、おっしゃるとおり、中高生にはめったに買えませんでしたから、その価値たるや、今では想像もつかぬものがありましたね。
たとえ一冊も買えなくとも、書店の空気を吸うだけでうれしかったものです。
Posted by: 薄氷堂 | February 25, 2012 23:13
私は、「喫茶リリー」が気になって気になって・・・
まさか、ラテ屋ではないですよねぇ?
もしかして、ナポリタンがあるようなお店かなぁ?などと想像しています。
Posted by: りら | February 28, 2012 04:49
>りらさん
「りりー」は古典的な純喫茶です。店内にクラシック音楽が流れている、老舗中の老舗ですね。
どこかに店内の写真があるはずなので、探しておきましょう。
Posted by: 薄氷堂 | February 28, 2012 09:33