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January 05, 2012

Daily Oregraph: 歩く理由

120105morning
 いかに車社会の釧路といえども、歩いたりバスを利用して通勤する人はもちろんいる。朝のこの時間、わざわざ凍結した歩道を歩く理由として、通勤や通学はもっともふさわしいものだろう。

 しかし通勤するでも通学するでもなく、犬を連れて散歩するでもなく、足元に気を配りながらよたよた通りを歩くおじさんという立場は微妙なものである。格好つけて横文字を使えば、いい年をしてアイデンティティが不確かなわけだ。

 もし運転免許証がなければ、どこそこのなんとかさんということさえ証明できないから、ツルツル道路で転倒し、頭を打って気を失ったとしも、せいぜいいあわせたおねえさんに「まあ、このおじさん気の毒ね」とかなんとかいわれるのが関の山、ひょっとしたらたまたま通りかかった大学の先生に「たぶんグローバリズムの犠牲になった unemployed のおじさんでしょう」などと推理されるかもしれない。

 -へえ、先生、そんなことがわかりますか?

 -お巡りさん、ウソだとお思いなら、内ポケットをあらためてごらんなさい。所持金せいぜい数千円、きっと名刺なんてありませんよ。

 -あ、2千と520円か……ほんとだ。やっぱり名刺もないや。さすが大学の先生は頭脳明晰ですね、たいしたものです。

 -なあに、それほどでも。

 とまあ、空想はつぎつぎとふくらんでくるのだが、幸いぼくは行き倒れにはならず、第一今朝は凍った歩道を歩くれっきとした理由を持ち合わせていたのである。

 母の手術につきあって病院で半日を過ごし、その間に小西甚一先生の受験参考書『古文研究法』を20頁ほど読んだのである。もし行き倒れになっていたら、この参考書の存在が身元の割り出しをややこしくしたにちがいない(笑)。

 おかげさまで手術はうまくいったけれど、リハビリに数週間はかかるだろう。年が年だから気の毒だが、こればかりは耐えてもらうしかない。もっともぼくにとっては、その間通りを歩く正当なる理由を得ることにはなるのだが。

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Comments

へえ・・・小西甚一先生の受験参考書『古文研究法』ですか。お名前だけはかねがね・・・

何せ受験勉強もほどほどに国文科に入ってしまったものですから、その頃はそんな本などあることは噂ではしっていたものの・・・・御目にかかったことはなく・・・

このほど復刊されたらしいですね。今さら購入して・・・なんてのも気恥ずかしいのですが、一からやり直すってのも・・・おつなものなのかな?

Posted by: 三友亭主人 | January 05, 2012 at 22:20

>三友亭さん

 いや、どうもおはずかしい(笑)。

 しかし受験参考書というのは、速成で勉強したいときには最適だと思いますね。要領よくエッセンスがまとめられていますから。

 『古文研究法』はその昔三分の一ほど読んだ形跡(笑)があります。ところが、このたび読み返してみたら、ちっとも覚えていないんですよ。しかし読み物としても抜群におもしろく、異色の参考書といえるでしょう。

 小西先生の参考書では、もう一冊『国文法ちかみち』というのを持っていますが、こちらは麦穂亭からもらったものです(あいつ、放り出したんだね)。おもしろさという点ではこっちが上かもしれません。

 国文学を専攻された方がいまさら『古文研究法』をお求めになる必要はないと思います。しかし『国文法ちかみち』なら、楽しくお読みになれるのではないかと思います。

 「グラグラするから Grammar だ」とか「人によって頭の出来はいろいろだからな」なんてことが書いてあり(笑)、内容もかなり高度で、高校生には過ぎたる参考書でしょう。ぼくもせめて通読だけはしようと思っています。

Posted by: 薄氷堂 | January 05, 2012 at 22:49

新年のご挨拶がすっかり遅くなりまして・・・
今年もよろしくお願いいたします。

実を申せば、どうも今年はスンナリと「明けましておめでとうございます」と言いたくない気分なんです。
年のせいのヒネクレか??
昨年は長く心(の中だけ)の支えだった友が急逝し、舅のように可愛がってもらっていたコロラドの叔父が亡くなり、厳密に喪中ではないのですが、なんだか常以上に無常感に捕らわれています。

なぁどと・・・新年早々陰々滅滅なことを書いてしまって済みません。
薄氷堂さんでしたら解ってくださるかと・・・えへへへへ

追記
あの黒豆は毎年私の担当でして、小袋二袋分、大どんぶり一杯がすっかり無くなります。

Posted by: りら | January 06, 2012 at 05:08

>りらさん

 そうでしたか。親しい人が亡くなるのはつらいことですが、みなさん宇宙へ還ったのだとお考えになればよろしいかと。

 あなたもわたしもビッグバンのなれの果ですから、ドラマなどで「亡くなったお父様は空の星におなりになったの」というのは、科学的にもそうひどい間違いではないと思います。どうです、少しは気が晴れたんじゃないでしょうか。

 星というのはかっこよすぎるかもしれませんが、ぼくだっていつかは宇宙をさまよう塵くらいには出世するはずですから、アメリカの夜空を見上げて線香の一本も上げてくだされば幸いです。

 ところで、黒豆がアメリカ人に好評とは意外でしたね。わが家でも黒豆は煮るんですけど、ハシをつけようとしないものだから、毎年叱られているんです(笑)。

Posted by: 薄氷堂 | January 06, 2012 at 20:13

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