« Daily Oregraph: 断固飲むべし | Main | Daily Oregraph: 風が変われば »

January 25, 2012

Daily Oregraph: 足元にご注意

120125ice
 いったん融けた雪が凍ると始末が悪い。気温が上がりはじめると、氷の表面に薄い水の膜ができるからだろうか、新品の冬靴をはいていてもツルツル滑るのである。

 写真のおばさんは綱渡りでもしているように見えるが、実際体のバランスを上手に取らねば危ないのだ。今日の滑りようにはぼくも恐怖を覚えるほどであった。

 というわけで、今日の古新聞記事(2011年2月10日)は危険な綱渡り状態にあるキューバ経済である。

 キューバのラウル・カストロ政権は、2010年9月に民間の起業を178の業種に限って認めると発表した。経済危機の深刻化によってにっちもさっちもいかぬ状態に追いこまれたあげくの窮余の策であるらしい。

 キューバでは現在政府が労働者の84%を雇用し、経済の90%を管理している。国家が労働者に支払う給与は月約20米ドルにすぎないが、そのかわり医療や教育は完全に無料で、交通、住居や水道などはほぼ無料に近い。配給手帳によって、食料の一部は補助金で抑えられた価格で販売される。

 ところが世界経済の下降、ニッケル価格の下落、2008年に襲った3つのハリケーンによる被害、タバコ・ラム・砂糖による歳入の減少、海外在住のキューバ人からの送金の減少などによって情勢はどんどん悪化するに至った。

 経済成長率は2009年が1.4%、2010年が2.1%と、途上国としてはあまりにも低すぎる。しかしその数字すら怪しいものだと見る専門家が多い。キューバでは、経済成長率を計算する際、社会事業に対する国家支出をもカウントしているからだ。

 しかも労働者は低賃金ではとてもやりくりできないから、国営企業では盗みが横行し、国家財政に大きな打撃を与えている。アメリカとの通商が禁止されているため国際通貨機関からの借り入れもできない。

 こうして大量に抱えた余剰人員の雇用を維持する余裕がなくなり、最近では職場での無料ランチは廃止され、配給手帳の対象品目も削減されたという。そこでレイオフを断行して、新たに育成する民間企業に吸収させようというもくろみらしい。

 しかし高い税金、原材料の不足、ベースとなる顧客の確保、お役所の複雑な規則、開業資金や店舗の確保のむずかしさなど、独立開業するには高い壁がある。

 たとえばピザ屋を開業するにしても、店舗は自宅に構えるとして、非力な銀行には余力がないから、開店資金を調達するのはむずかしい。あらゆるところで不足している物資の確保も問題だ。そもそも月給20ドルの人々が一枚1ドルのピザをどれだけ食べてくれるだろうか。政府内でも起業家の多くが一年以内に行きづまるだろうと予想しているほどである。

 それでもめげないのはキューバの国民性だろうか、様子見している人々も多い半面、起業ライセンスを取得した人は1月7日までにすでに7万5千人、最終的には25万人に達すると専門家は見ている。

 もしこの自由経済の実験が失敗すれば、多くの失業者を路頭に迷わせることになる。まさにキューバの命運がかかっているわけだが、またしても古新聞の悲しさ、現在どうなったのかは不明である(調べろよ、という声が聞こえる)。

 しかし独立開業を目前にして意気盛んなおにいさんの写真の笑顔を見ると、心から成功を祈らずにはいられない。

 なおオバマ政権がキューバへの送金をアメリカ国民一人あたり年間2千ドルまで認める決定をしたことをご存じだろうか。世の中知らないことだらけである。

|

« Daily Oregraph: 断固飲むべし | Main | Daily Oregraph: 風が変われば »

Comments

冒頭の写真を見ただけでだめです。
キューバまで辿りつけない。
僕には予知能力があって
あんな写真を見ていると
そのあと、つるりんとド派手にコケている
自分の映像がコマ割りで頭の中を流れてきます。

Posted by: 根岸冬生 | January 26, 2012 at 07:49

>根岸冬生さん

 東京の道路も相当滑ったみたいですが、当然ですね。そもそも靴がいけません。あんな靴でこちらの冬道を歩いたら、十秒に一度は転倒してしまうでしょう。

 キューバは暖国だから、経済崩壊寸前でもなんとか持っているんでしょうね。

 新聞記事には、ピザ屋を開業する予定のおにいさんのほかに、屋根もなく瓦礫だらけの洗濯会社の廃虚でスポーツ教室を開いている武術の心得のあるおばさん(!)が紹介されています。

 ビンボーでもたくましいですね。ぼくも見ならわなくては(笑)。

Posted by: 薄氷堂 | January 26, 2012 at 12:04

>いったん融けた雪が凍ると始末が悪い

いやあ・・・この道の恐ろしさは、郷里にいたころ幾度も経験しました。かえって雪が降ったばかりの時の方がずうっとましだったのを覚えています。

大和に来てからはそんな経験も全くありませんが・・・

それでも今日の大和は雪がちらつくような日でした。こんな日はいつもなら少々寒くても酒は燗もせずに飲んでいるのですが、今晩はちょいと暖めた酒を飲んじゃいました。

Posted by: 三友亭主人 | January 26, 2012 at 18:58

>三友亭さん

 雪が雪のままでしたらそう滑りはしませんよね。融けて凍ったら最悪です。

 今日はちょっとだけ港へ行ったんですが、岸壁はツルツルでした。転んでケガをするのはごめんなので、早々に退散しました。

 雪のちらつく大和の国で燗酒というのはいいですね。冬ならではの楽しみ。夏じゃとてもねえ(笑)。

Posted by: 薄氷堂 | January 26, 2012 at 22:10

The comments to this entry are closed.

« Daily Oregraph: 断固飲むべし | Main | Daily Oregraph: 風が変われば »