Daily Oregraph: 生活欄読むべし
ひさびさの雪。たいした降りではないが、これから明日いっぱい降りつづくらしいから、雪かき必至だろう。
大手スーパーの文房具コーナーで、手帳代わりに愛用しているA6判のノートを数冊買ったついでにカメラ店の店先をのぞくと……
コダックのフィルムが一本178円也。この写真界の巨人の運命を忘れぬために、保存用として購入した。時代の流れとはいえ悲しいものがあるなあ。
さて今日のジャパン・タイムズ古新聞だが、2011年8月16日の記事(ワシントン・ポスト提供 "Mother of 11 kids says alone time is overrated")から。生活欄のいわゆる心温まる記事を読むのは、あまりぼくの柄じゃないのだが、おおいに考えさせられるところもあった。
2010年の人口調査では、アメリカの家庭のこどもの数は平均で一人を切っているそうだが、この記事では、12歳から1歳まで11人もの子育てをしているキルマーさん一家の暮らしぶりを取り上げている。
ご主人は53歳の高校教師、奥様は45歳の主婦。こどもの数からもわかるとおり、カトリックのご家庭である。
学期中の奥様の一日はこうだ。
起床は午前5時。こどもたちの衣服を用意し、弁当を作ってから6時半にはミサ。ご主人と大きいこどもたちを送り出してから、朝食の後片づけをすませて、ベッドメーキングと洗濯に取りかかる。洗濯は毎日4回から5回の分量があるという。
こどもたちが午後3時までに帰宅し、おやつを食べたり宿題に取りかかると、奥様は夕食の支度をはじめる。その合間を縫ってこどもたちの勉強もみてやらねばならない。
午後7時半からこどもたちは寝室に下がりはじめ、大きい子たちは掃除を手伝う。午後9時にはこどもたちは全員就寝するというから、きっちりしつけしているわけだ。
やっと自分の時間ができると思いきや、台所の片づけやら、追加の洗濯、翌朝の衣服の用意などがあるから、日中の活躍ですでにぐったり疲れた奥様は、仕事に取りかかる前に20分ほど仮眠を取ることもあるという。
こういう毎日を送りながら、明るい笑顔を絶やさぬ奥様の超人的な努力には感服するしかない。しかし余計なお世話ながら心配になるのが家計である。アメリカの高校教師の月収がいかほどかはぼくも知らない。しかしかなり苦しいことはまちがいないだろう。
食費だけで週に300ドル。それに加えて、住宅ローンに車のローン、医療費もかかれば学費も必要だから、当然収支の勘定が合わぬこともある。家計の足しにするため、ご主人は夏(休み)には副業やアルバイトをしているという。
それにしてもよくやっているなあと思うのだが、周囲の人々の善意に支えられているところが大きいらしい。奥様によると、
玄関先に衣類の入った袋が置かれていることがあるんですけど、どなたがくださったものかはわからないんです。
衣類だけではない。家具や食事・食品のギフトカードなどをいただくことも多く、善意は善意を産むというわけで、キルマー家もまた不要になった衣類をよそのお宅に提供しているのだという。
一家が病気で寝込んだときなどは、それを耳にした友人たちや近所の人々、ご主人の同僚が数時間のうちにやってきて、炊事・洗濯・こどもの世話をしてくれたばかりか、二週間もの間、食事が家に届けられたのである。
いかがだろうか。もちろんアメリカのどこにでも見られる光景かどうかはわからないけれど、日本の都会では希薄になったこういう人間関係が残っているというのは、ぼくにとっては驚きであった。
天下国家にばかり目を向けていると、かえって見落としがちなこともある。アメリカの一家庭の奮闘努力ぶりを知れば、軽率に鬼畜米英などと口走ることがいかに愚かであるかわかると思う。アメリカで日本であれどこであれ、市民の家に爆弾を投下しようなどという発想はけっして湧いてこないはずである。
新聞の生活欄もバカにできないものだと悟った次第である。
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Comments
先日来の新聞関連の記事は、純然たる日本の新聞ではなくて、ジャパンタイムズだったのですね!
失礼いたしました。
ほー!こちらでも子供は一人を切っているのですか?!
私の周り(ご近所や息子たちの友達のお家)を見ると、一人っ子というのは極端に少なくて、余裕のある人たちは自分たちの子の他に養子を育てたりしますから、同じ国に住みながら、まったくそういうイメージはありませんでした。
カソリックについてのイメージも、私はちょっと違ったものを持っています。
詳しく書き始めると大変なことになりますから、一言だけ。
私の周りのカソリックの人たちはお金持ちが多いです。
この地で高校の進学校と言ったらカソリック系の私立の学校(当然、授業料は高い!)ですし。
米国は、ホント多種多様で広いです。
こちらに住んでまず思ったのは一口に「アメリカでは・・・」なんて言えないよなぁということでした。
勿論、それでは社会学などはできなくなりますから、キチンと統計をとった場合は言えるのでしょうねぇ。
Posted by: りら | January 23, 2012 15:13
>りらさん
一般常識の不足を補うつもりで、無理して読んでおりますが(笑)、読みごたえのある記事が多いですね。
> こちらでも子供は一人を切っているのですか?!
実はぼくも意外に思ったのですが、2010年の Census によると、the average U.S. family household having less than one child てなことが書いてありますので、まちがいないのでは。
元資料をちょっと見たんですが、あまりにも詳しすぎ、途中でめげました(笑)。ただ一人世帯が増えていること、こどものいる世帯の割合が減っていることは確かなようです。もしかんちがいがありましたらご指摘ください。
> この地で高校の進学校と言ったらカソリック系の私立の学校(当然、授業料は高い!)ですし。
なるほど、そういうことがこちらにいてはわからないので、隔靴掻痒の感があります。
なお書き忘れましたがこの記事の一家は、メリーランド州のロックヴィル郊外にお住まいとのこと。
> 一口に「アメリカでは・・・」なんて言えないよなぁ
今日は不法移民の記事を読んだのですが、そのことを痛感しました。特に南部諸州は連邦政府の干渉を嫌っているようですし、人種差別の風がいまなお残っているので、オバマさんはさぞやりにくいでしょうね。
Posted by: 薄氷堂 | January 23, 2012 18:27