Daily Oregraph: 地図捨てるべからず
書店に寄って昭文社の『文庫地図 大阪』を買ったので、大阪市内で唯一ぼくの知っている日本橋のあたりを見ると、さっぱり覚えていないのには呆れてしまった。東京は案外歩きやすい街だけれど、大阪ははるかに地理がわかりにくいように思う。
40年以上も前の話だから、忘れても仕方がないといえばそれまでだが、当時どうやって日本橋までたどりついたものか、なんでも四条烏丸あたりから阪急に乗ったような気がするけれど、いま迷わずに行けるという自信はまるでない。
日本橋のあたりの地図を見て思い出すのは、高島屋の別館くらいのものだろうか。たしか通天閣を見た覚えがあるので、地図をチェックすると日本橋の南にあるから、記憶はまちがいないようだ。
もっとも当時は観光にはまるで興味がなく、ジャンク屋をひやかしたり、電気部品の専門店で抵抗やコンデンサを買ったりするだけだったから、通天閣のすぐ近くまでは行かなかったと思う。観光はおろか、とにかく資金の余裕というものがなかったので、うどんもたこ焼きもお好み焼きも食べた記憶はまったくないのである。
さてつい余計なことを書いてしまったが、古い地図を捨てずに残しておこうというのが、今日の本題である。
魔都大阪の地図はいずれゆっくりながめるとして、先日買ったJTBの『詳細地図 京都』に載っていた六条河原院跡の位置を、念のため1998年の『マップル 京都』と昭文社の2002年版『文庫判 京都都市図』で確認してみた。しかしどちらにも記載されていないので、JTBの地図がいかにマニアックなものであるかがわかる。
そこで河原院跡(実際は石碑の場所よりやや北西にあったらしい)を文庫判地図に鉛筆で記入したついでに、わが愛する(笑)八千代館の位置が気になり、JTBの地図で新京極のあたりをチェックしたところ、なんと載っていないのである。これほど詳しい地図に見あたらないからには廃館になったのだろう。
こういうことがわかるから、地図は最新のものを参照しなくてはいけないのだが、逆に古い地図が役に立つこともある。
実はぼくも八千代館の正確な位置までは記憶していない。うろうろ歩いているうちに必ずみつかったから、記憶する必要がなかったのである。しかしもし建物が取り壊されでもしたら、跡地がわからなくなる可能性大である。
9世紀の河原院ならともかく、20世紀の八千代館の場所がわからぬというのは実におもしろくない。不安にかられて1998年のマップルを見ると、あった、あった、「八千代館(映画)」として○印で示されている。河原院跡とともに史跡めぐりをすべく、文庫判地図にメモしておいたことは申し上げるまでもない。
やはり古い地図は保存しておく値打ちがある。京都の地図は1970年代のものをはじめ、これまでに数冊処分してしまったけれど、いまとなっては後悔している。
これはもちろん京都にかぎった話ではなく、釧路市内地図も同じことである。臨港鉄道の線路や各駅の位置、いまは改名されてしまった町名など、確認するには古い地図の力を借りねばならないからだ。
人は失敗から学ぶというのは本当である。地図は捨てるべからず。
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Comments
いやいや、大阪の方がはるかにわかりやすいですよ。中心部は碁盤の目になってますし。放射状に広がってる東京の方がよほどわかりにくいです。慣れの問題かもしれないですが。
Posted by: 通りすがりの常連読者 | January 12, 2012 08:51
>通りすがりの常連読者さん
コメントありがとうございます。
やはり慣れの問題なんでしょうね。
まずは東西南北の拠点となる主な地名を頭に叩きこまないとお話にならないようですから、努力してみます。
京都から日本橋までの経路は、さきほど路線図をながめているうちに、なんとなく思い出してきました。
やはり阪急に乗り、淡路経由(たしかここで乗り換え)で日本橋だったようです。
Posted by: 薄氷堂 | January 12, 2012 16:23
いぇい!大阪日本橋なら任せてください!!
難波からゴタゴタしたあの界隈、かなり詳しくなりました。
(何年かに一度でも、かなり怪しくなっている記憶装置でも、慣れるものなんですねぇ。)
なんせ、大のお気に入りの着物古手屋が日本橋商店会にあるんです。
今や私にとっては聖地です。
http://www.nipponbashi.ne.jp/syotennkai.htm
Posted by: りら | January 13, 2012 16:40
>りらさん
へえ、日本橋というと電気部品やジャンクしか思い浮かばないんですけど、古着屋さんもあるんですね。知りませんでした。
もっともぼくが女性の着物をながめて歩けば、けったいなおっさんだと誤解される恐れ十分ですけど。
何年かごとにいっぺん行かれるほうが、40年前に通ったきりというよりも、はるかに地理を忘れないと思いますよ。特に景色が一変した場所ですと、まったく見当がつかなくなることだってありますから。
Posted by: 薄氷堂 | January 13, 2012 22:21