Daily Oregraph: 東京 穴守稲荷編
2011年9月15日。朝食後ホテル前から羽田空港行きバスが出るまでの間に、約 1時間半の散歩を楽しんだ。いや、楽しんだというのはいささか無理がある。
二日酔い気味のW君は部屋で休んでいたらしい。ぼくもたいして調子はよくなかったけれど、与えられた機会は最大限に活用したいから、暑さの中を汗を流しながら歩いたのである。この元気、あと何年持続することだろうか。
ホテルのロビーにあった大田観光協会刊の「多摩川 かわめぐり地図」(写真はその一部)をながめて、目標を稲荷神社に定めた。神社マニアの血が騒いだわけである。歩いたのはおおむね赤い線で囲んだ範囲だが、記事を穴守稲荷編、鴎稲荷・白魚稲荷編、羽田路地編の三回に分けて掲載したい。
穴守稲荷神社。たびたび付近の堤防に大穴が生じたことから、文化元年(1804) に創建されたという。もともと現在の羽田空港敷地内にあったのだが、敗戦後空港拡張のため米軍によって強制退去させられ、この地に移転したのである。
ずいぶん無茶な命令だけれど、敗者の運命がどういうものかよくわかる話だ。道理が通らないのは北方領土問題も同じである。
広大な敷地とはいえないけれど、境内はそこそこの広さがある。通勤の人たちが通り抜ける、一種の生活道路としても機能しているようだ。
写真にはないが、神楽殿前にはベンチや灰皿もしつらえられ、住民の憩いの場にもなっているのは、いかにも町中の神社らしく好感がもてる。この開放性こそ神社の魅力のひとつだろう。
手水舎に用意された手ぬぐいには、工務店の名前が見える。使いこんだ感じが悪くない。
本殿。豊受姫命を祀る。
狐塚。お稲荷さんに狐がいるのはあたりまえだが、この神社の狐にはなかなか迫力がある。
いずれも眼光鋭く、さればこそ霊力も高いのであろう。
中にはこういうかわいらしいのもある。
あとになって気づいたのだが、この瀬戸物の(?)狐はおみやげとして販売しているのかもしれない。小さな鳥居をひとつと狐をふたつ購入すれば、あなたの部屋もたちまち神社に変わるわけだけれど、そんなことがゆるされるのかどうかは不明。
境内には入れ子のようにいくつかの小さな稲荷社がある。人々の狐に対する信仰がこれほど篤いというのに、わがキタキツネがみすぼらしい姿でうろついているのはどうも納得がいかない。ブラキストン線からこっちは信仰が足りないのかな。
この鳥居の列をくぐった先に、穴守稲荷神社でもっとも興味深い建物がある。
奥之宮である。この神社のサイトの説明によると、ここは「お穴さま」とも呼ばれ、
ここの「お砂」を持ち帰り、敷地内または玄関等に撒く。或いは身につけると所願がかなうと、古くから大勢の信仰を集めています。
という。
しまった! お砂をもらってくればよかった。いや、笑ってはいけない。ご利益のない宗教にいったいなんの価値があるだろうか。
ぼくは神社マニアのくせに信心が足りないからよくわからないけれど、所願のかなった人々が奉納した小さな鳥居をここに納めるのだろうか? ちょっとシュールな感じのする場所である。
穴守稲荷神社の見物を終え、鴎稲荷神社へ向かう。
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Comments
お稲荷さんのはしごですか・・・
それにしてもお稲荷さんは本当に赤い鳥居が好きですねえ。
Posted by: 三友亭主人 | September 17, 2011 23:18
>三友亭さん
お稲荷さんのハシゴとは、われながら物好きですが(笑)、知らぬ土地で神社を探しながら歩くのもまたオツなものですね。
わが国には恐るべき数の神社がありますから、死ぬまで歩いてもキリがないでしょう。いつかお狐さんの前でバッタリ倒れるかも……
Posted by: 薄氷堂 | September 18, 2011 21:17