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August 02, 2011

Daily Oregraph: 2011-08-02 真夏の夢

110802minatomachi
 夏向きの話をしよう。

 いつの間にか自分は四畳半ほどの古い和室にいた。記憶にあるようなないような、なつかしいような初めて見るような部屋である。どうも部屋は二階にあるらしかった。

 室内はものをぼんやり識別できるほどには明るいけれど、不安を感じるから灯りがほしい。やけに高い天井には旧式の蛍光灯があって、そこから長いヒモがぶら下がっている。

 しかし何度ヒモを引っぱっても電気はつかない。ヒモを引きながら見上げると、点灯管は一瞬青白く光るのだが、蛍光管は沈黙したままなのである。

 あきらめて窓際へ行き、引き戸になっている木製の窓を開けると、北国らしい二重窓である。外側の窓はひどく離れていて、そこから見える空はちょうど室内と同じ明るさであった。なぜか永遠にそれ以上明るくも暗くもならぬように思われた。

 内側と外側の窓の間にはアロエの小さな鉢がある。頭でっかちのアロエは、根元のあたりから折れそうになっている。アロエはぼってりしているからきらいだ、とぼくは思った。

 -しかし折れるのはいやだ。折れたらどうしよう。

 折れ曲がっているあたりにさわってみると、皮一枚でつながっている感じがした。いやな気分である。

 ばかに大きな綿ぼこりがいくつも漂っていて、部屋の中をふわふわ上下している。ふと天井の隅を見上げると、そこはほかよりも少し明るく、なにかの影が動いていた。

 -魚だ。ずいぶん大きいが、金魚だろうか。

 水槽は見えないのに、魚の泳ぐ影が天井際の壁に映っているのである。長い間人の住んだ形跡のない部屋に魚がいるからには、餌をやらなくてはならない、とぼくは思った。

 影の動いている手前-あいかわらず水槽は見えない-に、小さな青い紙箱が見えた。金魚の餌である。手を伸ばしてそれを取ろうとしたが、クモの巣やほこりがじゃまをしてうまくいかない。

 -ああ、この部屋はだめだ。第一空気が濁っている。風を入れなくてはいけない。

 外側の窓は遠い。手前にはアロエの鉢がある。そこでいったん外へ出ようとドアを開けて廊下に足を踏み出したとたん、部屋の中から猛烈な風が吹いてきた。見ればドアのまん中にはまった長方形のガラスがそっくり割れていて、風はそこからも吹き出してくるのであった。

 ぎょっとして立ちすくむと、部屋の中にいきなり人影が現れた。顔かたちはわからぬが背の高い男がひとり、その左側に女がひとり、右側には男の子らしい影がひとつ。なんだか遠い昔に出会ったことがあるような気もするが、思い出せない。

 しかしそれも一瞬のことで、人影も金魚の影もアロエの鉢も、なにもかもが部屋とともに消えてしまった。

(Canon IXY 30S)

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Comments

なんか漱石の「夢十夜」でも読んでいるような気分になってしまいましたよ。

Posted by: 三友亭主人 | August 03, 2011 at 14:02

>三友亭さん

 いえ、そんな上等なものじゃありませんが、漱石のようなエラい作家でもぼくみたいな凡人でも、夢の内容にはそんなにちがいはないような気がしますよ。

 夢の中身は目が覚めたらたいてい忘れてしまいますが、イヤな夢というのは案外細部まで記憶に残るものです。

Posted by: 薄氷堂 | August 03, 2011 at 19:12

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