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April 17, 2011

Daily Oregraph: 2011-04-17 化け物屋敷

040807fest
 今日たまたまTVを見ていたら、放射線医療の専門家という先生が、微量の放射線など怖くない、むしろ健康にいいのだという説を唱えていたのでビックリした。ホウレンソウでもなんでもモリモリ食べて問題なし、なんなら自分が事故現場へ行ってもいいという勢いである。

 もちろんどなたがどんな意見を発表しようと自由だけれど、問題なのは番組をこの先生の独演会にしてしまったこと。公共の電波で流した影響は計り知れないから、不見識きわまりない話である。

 もうひとつはネットで見た、藤田祐幸氏の講演「福島原発は今? どう向き合う核汚染!」(4月6日 京都)。この方は筋金入りの反原発活動家だから、当然推進派からの風当たりは強く、ネットにはとんでもないやつだという書き込みもある。しかし藤田さんのお話はぼくには素直に納得できる内容だった。

 小出さんにしても藤田さんにしても、おまえはどうして信用するのだという疑問をお持ちになる方もおいでかと思う。その理由はハッキリしている。いま起こっている事態が、まさに彼らが従来から主張している事故のシナリオどおりに進行しているからである。

 小出さんの講演録(2008年)に説明されている、柏崎原発の事故の流れは、今回の福島原発の事故のそれと恐ろしいまでに符合している。いちいち納得できるから、信頼度抜群なのである。

 さらに原発は絶対安全だとして建設を進めてきた「原発推進派学者の重鎮たちが原発の「安全神話」崩壊に懺悔を繰り返している」というニュースでも明らかなように、事ここに至っては彼らでさえ過ちを認めざるをえなくなったという事実を考え合わせると、どちらを信用すべきかはおのずと明らかだろう。

 藤田さんの講演はなにぶんにも1時間45分を越す長時間だから、ここでは上映されたスライドをいくつか掲載するにとどめたい。興味をお持ちの方は、お時間があればぜひご覧いただきたいと思う。どう評価するかは、もちろんご自由である。

Fujita01

 左はいわゆる生体濃縮を説明した図。右は年齢と被曝の影響との関係を示したもの。

Fujita02

 政府は原発事故現場で苦闘している作業員の年間被曝量を、特例とはいえ、100ミリシーベルトから250ミリシーベルトにまで引き上げた(アメリカでは50ミリシーベルト)。これはほとんど死ねといっているにも等しい。

 右のグラフは浜岡原発で働いていた青年の被曝量を示す。彼は18歳から原発のセンサー交換などの業務にあたり、毎年約5ミリシーベルトほど被曝していたが、累積被曝線量が50ミリシーベルトを越した年に白血病を発病し、一年間の闘病後死亡した。

 ところが今日TVで独演会をしていた先生によると、微量の被曝を繰り返しているうちに抵抗力がつき、逆に人間はガンになりにくくなるそうである。どうしてそんなことが平気でいえるかというと、被曝とガンや白血病との因果関係を証明するのは簡単ではないからである。

 政府が原発住民の避難を遅らせて平気な顔をしているのは、因果関係立証の困難さを勘定に入れ、裁判になっても逃げ切れるか、少なくとも長丁場に持ち込めるという読みがあるからだとぼくは思う。

Fujita03

 小出さんの講演録には、

 国や電力会社は事故を過小評価し、できればなかったことにしようとします。一刻を争うような事態になっても、おそらくは情報がでてこないでしょう。

とある。これは福島原発事故以前の発言だが、詳しいデータがなかなか発表されず、放射性物質の拡散予測も最近まで諸外国のデータに頼らざるをえなかったことを思い出せば、まさに図星である。

 現在流されているこの程度の汚染なら野菜も魚もだいじょうぶという大宣伝は、「経済性のためには、少々の安全は犠牲にされる」という予言に符合する。被害者である農民や漁民への補償金をケチるつもりなのだろう。次に起こることは被害者の切り捨てにちがいない。

 さて今日スーパーに行ったとき、週刊誌をいくつかめくってみたら、事態を深刻だと煽り立てるのはとんでもない、いまの放射線量などたいしたことはないという特集が目についた。毒(金)が回ったにちがいない。

 原発推進派の学者たちがかろうじて良心の存在を示したにもかかわらず、与謝野馨は「原発を推進してきたことは決して間違いではない」と言い放った。これがまともな人間のいうことだろうか。化け物屋敷のぬらりひょんである。そして化け物の仲間はほかにもたくさんいるらしい。

(2004年8月7日撮影。Nikon D70 + Ai 50mm F1.2S)

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Comments

薄氷堂さん おばんです。

そろそろ小出先生達への中傷が始まるのではと、心配になりますね・・・この国は、本当に腐っているのかもしれません・・・恐ろしくなります。

Posted by: ひげ | April 17, 2011 at 23:11

>ひげさん

 小出さんへの中傷ですが、ネットにはすでにその恐れを示唆する書き込みがありますね。

 今日見た動画の中でも、藤田さんご自身身の危険を感じたことがあるという意味のことをおっしゃっていました。

 金にものをいわせれば何でもありの世の中ですし、権力がその気になれば冤罪をでっちあげるくらい朝飯前、本当に心配です。

Posted by: 薄氷堂 | April 17, 2011 at 23:30

2011-04-16「花一輪」のコメントで紹介した平井憲夫氏のプロフィールに「被爆」とありますが、これは「被曝」の間違いですね。
「放射能」と「放射線」の違いも混同されますが、こちらは厳然と区別するべきもののようです。誠に失礼しました。
というのも、ご本人(平井憲夫氏)が作成されたwordファイルを、氏の死後に入手された方が拡散(これは転載の意味です)される過程において、Original Message の前に、転載する人が挿入した前文を私がコピペしたものでした。
ご承知の事と思われますが、原発&核実験で瞬間的に浴びるのが「被爆」で、原発や自然界で長期永続的に浴びるのが「被曝」です。

この違いを巧みに利用して、自説を構成する輩が多いようです。

Posted by: アナログ熊さん | April 18, 2011 at 02:16

http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/terasima/diary/200812

子供の時から思い込みが強いほうで、損ばかりしている。
子供のころは、「日本は必ず勝つ」という軍国主義の神話を教えられ、それを固く信じていた。
この軍国主義は、原爆であえなく崩れ去った。
戦後は、「平和利用の原発は絶対に安全である」という原発主義の神話を教えられ、それを信じていた。
この原発主義の神話は、今回の東日本大震災であえなく崩れ去った。

何せ、我々は、丸暗記と受け売りの学校教育しか受けていないので、問題の解決能力はない。
だが、事態を台無しにする力を持っている。だから、世の中は難しい。
この無軌道が我が国を迷走させる原因となっていて、自分自身にとって危険なものになっている。

Posted by: noga | April 18, 2011 at 04:16

海へのさらなる漏洩汚染が心配です。私も同感です。私は最初、よくわからなかったので、単位も含めて放射能物質を調べました。知れば知るほど原発事故は怖いですね。今回の原発事故に対して、迅速な対応ができかった原因はいろいろあると思いますが、私は事故の復旧に対して、政府が東電を含めた物理、原子力関係者だけ任せすぎたためではないかと思います。今回の事故の収束には化学的な要素技術を導入した幅広い「餅は餅屋」の英知の結集が必要ではないかと思われます。硬直化した縦割りの官僚組織と同様、有事には役に立たない諸悪が露呈した感があります。いかがでしょうか?

Posted by: tetsu | April 18, 2011 at 08:54

>アナログ熊さん

 平井さんの文章、読ませていただきました。

 ネットには平井氏はウソばかり書いているという記事も出回っています。しかしぼくの読んだかぎり、ひょっとしたら平井さんにも思い違いはいくつかあるのかも知れませんが、とてもウソとは思えませんね。

 現場技術者の発言ならではの迫力がありますし、なるほどこういうことはあるだろうなあと、素直に受け取れる内容でした。熊さんは職人さんですから、きっと思いあたることがいくつかおありだったんじゃないでしょうか?

>nogaさん

 世に「絶対安全」なものなどありえないとぼくは考えています。車は衝突するし、船舶は沈没するし、列車は脱線するし、飛行機は墜落します。

 だから原発だってリスクがあるのはしかたがないだろう、と主張する人々がいるけれど、それはちがいます。

 第一「絶対安全」という建前と真っ向から矛盾します。第二に、事故が発生したときの影響があまりにも巨大すぎるため、原発から得られる利益がいくばくかあるにしても、到底ソロバンにはあいません。

 原爆が落ちるまで(いや落ちても)敗戦を認めようとしなかった大本営、現実に原発の大事故が起きたのに事態の深刻さを認めようとしない政官学、イメージが重なりますね。

>tetsuさん

 ほんとうに海洋汚染は心配ですね。汚染は拡散して薄まるから大丈夫などという学者がいるのにはビックリ仰天です。

 そういえば水俣病のときも真相解明を遅らせた「学者」がいましたよね。「諸悪」のほうに金や権力が集中しているのだから困ります。

 日本としてはちょっと情けないけれど、ことは太平洋の汚染ですから、専門家の国際的協力を仰ぐ必要があるんじゃないかと思います。いや、協力だけじゃなくて監視も必要なのでは。

Posted by: 薄氷堂 | April 18, 2011 at 19:55

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