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January 21, 2011

Daily Oregraph: 2011-01-21 近眼という不幸

110121evening

 少しずつ日が長くなってきた。ちょっと前までは、この時間になるともう真っ暗だったのである。

 さて『病牀六尺』には、当然病苦のつらさを訴えたり、病人らしいわがまま勝手を並べたりしているところもあるのだが、一方ではずいぶんノンキなことも書いてあり、とても重病人の文章とは思われない。そこがかえって子規の恐るべき気力を示しているともいえよう。

 「四十八」には双眼写真というのが登場する。これはいわゆる立体写真を見る装置である。

二つの写真が一つに見えて、平面の景色が立体に見えるのには、少し伎倆(ぎりょう)を要する。人によるとすぐにその見やうを覚(さと)る人もあるし、人によると幾度見ても立体的に見得ぬ人がある。この双眼写真を得てから、それを見舞に来る人ごとに見せて試みたが、眼力の確かな人には早く見えて、眼力の弱い人即ち近眼の人には、よほど見えにくいといふことがわかつた。

 これは本当である。近眼のぼくは立体視が大の苦手で、これまでに写真が立体的に見えたのはほんの二三度。それも散々苦労した末にやっと見えたのである。

 ただし近眼でも立体視の得意な人はいるようだから、例外少なからずと考えたほうがいいんじゃないかと思う。

これによつて余は悟る所があつたが、近眼の人はどうかすると物のさとりのわるいことがある、いはば常識に欠けて居るといふやうなことがある。その原因を何であるとも気がつかずに居たが、それは近眼であるためであつた。

 どうも話が妙な方向に発展してきたようだ(笑)。

近眼の人は遠方が見えぬこと、すべての物が明瞭に見えぬこと、これだけでも普通の健全なる眼を持つて居る人に比すると既に半分の知識を失ふて居る。まして近眼者は物を見ることを五月蠅(うるさ)がるやうな傾向が生じて来ては、どうしても知識を得る機会が少くなる。

 なんだか泣きたくなってきた。ひょっとしたら図星ではあるまいか。

人間の知識の八、九分は皆視官から得るのであると思ふと眼の悪い人はよほど不幸な人である。

 とうとうとどめを刺されてしまった。寝たっきりの重病人にこうも同情されては、まるで立つ瀬がない。

 そうか、おれが劣等生だったのは、やはり近眼のせいだったのか。しかし知識が足りなくともさほど不幸と感じていないのは、毎晩摂取するアルコールのご利益ではないだろうか。

 人生の楽しみの八、九分はアルコールから得るのであると思うと、下戸はよほど不幸な人である。だが……八、九分というのはちと多すぎかもしれない。依存症である(笑)。

(RICOH CX2)

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Comments

子規の時代に、「平行法」による立体視画像があったとは、意外そうで結構古くからあるのかもしれません。
同じものを二つ並べて、見えるか見えないかは本人次第というものですからね。
それに対して、なんだかわけがわからない画像の中に、意味のある画像が立体的に見える「交差法」は、つい最近のものでしょう。
画像掲示板にYouTubeの立体視動画を載せておきます。
今や動画でこれが出来るんですよ!

Posted by: アナログ熊さん | January 22, 2011 at 23:23

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