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September 29, 2008

Daily Oregraph: 2008-09-29 北海道四分の一周 (10)

080906monbetsu1 明けて9月6日。

 早朝の市内を散歩する。

 やはりどの通りからも海の見える町はいい。

 逃げ道といおうか、出口のない山国の町は、港町に育ったものには息がつまるのである。

 

080906monbetsu2 紋別の飲食街は「はまなす通り」というらしい。

 1番街から3番街まで確認したが、人口わずか2万5千人の小都市にしては充実している。これまた港町の特徴かもしれない。

 小さな新聞社があった。とても他人とは思えない(笑)。

 がんばれ、オホーツク新聞社。

080906monbetsu3 つまらない写真をたくさんお見せしてもしようがないから、そろそろよそう。

 ホテルに戻る途中、大胆にも大通りのまん中にうずくまっているネコをみつけた。

 あやしい他所者のおじさん、紋別のネコににらまれるの図。

 さて近そうにみえて案外遠いのが紋別~網走間である。約110キロ近くあるから、ほぼ釧路~帯広間に匹敵する。

 途中サロマ湖や能取湖などの見所もあり、時間があればゆっくり見物したいところだが、今回はじっと我慢することにし、横目で景色をながめながらひたすら走る。網走よりも東にあるオホーツク沿岸の駅をいくつか回るのが、この日の目的だったからだ。

080906saromako ところが強烈な逆光のため標識を見誤り、いつしかサロマ湖の西岸に迷いこんでしまった。

 ふと見れば、小さな神社がある。

 ははあ、こいつは神さんがおれを呼んだものとみえる(笑)。比布駅同様、縁があったのだ。

 先を急ぐ旅人を呼び止めるだけあって、小さな祠はどことなく異国風のデザインで、ちょっと心を惹かれる。歴史の浅い北海道も捨てたものじゃないと思う。

 こういう発見があるから旅はおもしろいのだが、神さんに呼ばれるたびにあちこち立ち寄っていては時間がいくらあっても足りないだろう。そうかといって時間が自由になるときには金に不自由するだろうし、馬力もなくなっているだろう。とかくこの世はままならぬ。

 茫漠としたサロマ湖はぼくの腕前では絵にならず、写真はキッパリあきらめてオホーツク国道(238線)に復帰し、網走へ。

 何度か訪れたことのある網走市内は給油しただけで素通り。オホーツク海沿いの国道244号線を東に向かい、次にめざしたのは釧網本線のJR藻琴駅である。

 紋別~網走間はほとんど写真を撮っていないけれど、ここからはマジメに撮影に励むことになる。マジメに撮ったから写真の出来がいいとは限らないが(笑)……待たれよ、次回。

(2008年9月6日 撮影)

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September 28, 2008

Daily Oregraph: 2008-09-28

 連載を片づける前に、どこでも仕事ができる環境を整えようと、まずは二年越しの宿題を片づけることにした。

 ベッドを置いてある隣室に LAN コードを引くという大工事(?)である。

 食料・アルコールの買い出しをすませた後、ひさびさに家電量販店へ立ち寄り、15mの LAN ケーブルを仕入れる。

 なあに、そんなに広いお屋敷ではないのだが、途中何ヶ所かケーブルを折り曲げて押入の中の壁際にはわせる都合上、余裕をもたせたわけ。

 厄介なのは、部屋の仕切りにケーブルを通す穴を開ける作業である。これあるがゆえに、二年もサボってきたわけだ。

080928drill 四五年ぶりに電気ドリルを取り出すと、おやおや、ひどく錆びている(笑)。幸いスイッチを入れると回転してくれたから、押入のガラクタを取り出して中へもぐりこみ、無理な格好でガリガリ穴を開けるところは、立派な工兵隊員である。

 ところがふたつの部屋の壁と壁との間には空間があって、ドリルの刃が届かない。両側から穴を開けなくてはいけないのであった。

 実にめんどうくさいけれど、世界に冠たるトンネル掘削技術を誇る日本の市民がへこたれるわけには行かない。

 隣室に回ってベッドを動かし、大嫌いな電気掃除機をかけ、だいたいの見当をつけてもう一ヶ所ドリルで穴を開ける。背中は痛くなる、腰はだるくなる……いやはや、大仕事であった。

080928lan 汗まみれになって青函トンネルのできぐあいを確認すると……残念、素人にしては上出来とはいえ、ほんの少しズレているではないか。

 ずれた穴にケーブルを通すべく針金を探したが、そんなしゃれたものはないから、クリーニング屋の針金製ハンガーを使って、難問をクリア。

 万歳、ついに開通である。

 かくして寝酒をやりながらインターネットを閲覧できる身分に昇格したのであった。

 え、連載はどうしたって?

 そんな元気が残っているものか(笑)。

 今夜は一杯やりながらインターネットで無料映画を観ておしまい。仕事どころか、だんだんムダに時間をつぶす環境が整いつつあるようだ。

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September 27, 2008

Daily Oregraph: 2008-09-27

080926dsurvey_2 昨日本船に接舷してトランシップ(貨物を船から船へ移すこと)中の内航船をドラフト・サーベイしている某氏をみかけたので、勝手にパチリ(笑)。

 いや、けっして冷やかしで撮ったわけではなく、ふつうでは絶対に見ることができない部分のドラフトマークを測読するツールをご紹介したかったのである。

 たいへん巧妙なしかけで、先端にミラーがついている(新日本検定協会特許)。一円もいただいてはいないから(笑)宣伝するつもりはないけれど、グッド・アイディアである。

 船体中央の喫水は計算上たいへん重要なので、これが読めるのと読めないのとでは大ちがいだ。もし読めなければ、左舷側の数値をもとに船体の傾きを考慮して推定するわけだから、精度がかなり落ちるのである。

080927myself_2 喫水といえば、ドラフトサーベイの連載もサボっているし、北海道四分の一周もなかなか終わらないし、どうも弱ったなあ。

 お詫びのしるしに筆者近影。本日撮り立てである。

 そんなもん、見たくもないって? ……ごもっとも。ぼくだって見たかない。

 しかし影だけ見れば、おれも若いなあ(笑)。

 なんて、バカをいっている場合じゃない。そろそろ滞っている連載を片づけなくてはなるまい。

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September 26, 2008

Daily Oregraph: 2008-09-26 北海道四分の一周 (9)

080905nakashibetsu どこも秋祭りの時期らしい。

 車を走らせながらときどき道ばたに立つ祭りのノボリを見ると、いつの間にか神社の名前が変わっているのだった。

 中士別でみかけた商店。

 この造りはなつかしい。昔でいうよろず屋さんだろう。

 天塩川沿いの道をさらに東へ進むと、「通行止解除」を知らせる立て看板をみかけた。

 士別からしばらくは平野の間を走っていたのだが、次第に山が間近に迫ってくる。元は林道だったかと思われる道の途中で、なるほど大規模な土砂崩れがあったらしい。道路の中央に鋼板で巨大な壁を設けて、大がかりな工事をしていた。

 通行止め解除になったのは運がよかったのである。

080905iwaonai やがてダム湖が見えてきた。

 岩尾内湖である。ダムの脇のスペースに駐車して、一枚だけシャッターを切った。

 このあたりではもっと写真を撮りたかったのだが、狭い山道では車を停める余裕がなく、結局そのあと滝上町の道の駅で小休止するまで、休みなく走りつづけた。

 車の旅は距離を稼げるけれど、ひたすら走るだけでは散漫な印象しか残らぬものだ。実際このときもダム湖から滝上町までの道中はたいして記憶に残っていない。

 写真に頼らなければ記憶がよみがえらないのは歳のせいか?

 滝上町からは渚滑(しょこつ)国道(273号線)を約30キロ突っ走ってオホーツク海に突きあたり、オホーツク国道(238号線)を南下すればすぐに紋別である。

080905monbetsu1

 紋別はこれが二度目。最初に訪れたのは真冬であった。

 恐ろしく寒い日で、氷に閉ざされた港を見物しようとホテルを出たはいいが、たちまち震え上がって、ものの三十分と立たぬうちに退却したのだった。

 チェックインして部屋から港を望む。季節がちがうとまるで別の街である。

080905monbetsu2  潮の匂いやホタテを加工しているらしい匂いを嗅ぎながらさっそく港をぶらつくと、なになに、パ・ルースキ(=「ロシア語で」)商店か。

 少し前に店からちょっと顔を出したおねえさん(?)がロシア語でロシア人漁船員の買い物の相手をするのだろうか。

 やはり写真を撮るには歩くのが一番だ。テクテク、パチリというリズムがいいんだな。

080905monbetsu3_3

 なあに、 どうせたいしたものは撮らないのだが、さしてめずらしくないものでもよその土地でみかけると新鮮に見えるから、ついシャッターを切りたくなるのである。

 ふん、コマイの丸干しが840円とは、けっこうなお値段だね。観光客向けの値段だろうか?

 ……などと冷やかしながら一時間ほど散歩してホテルに戻る。

 明日の早朝は街を一回り散歩をするつもりだが、そろそろ疲れも出てきたし、さてどうなることか。

 (2008年9月5日 撮影) 

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September 24, 2008

080924cpoint_4 人はなぜ写真を撮るのか、とりわけ船上チェックポイントの写真を撮るのか?

 The answer, my friend, is blowin' in the wind,

 いや、実際今日は風が強かった。こちらのほうが吹き飛ばされそうなくらい……

 まあね、たいして理屈はないんだ。書かなくてもよさそうなことをダラダラと日記に書くように、撮らなくたってよさそうなことを撮るだけの話。

 乗船者名簿に乱暴な字で記帳すると、"Thank you, sir." といってくれるわけだが、あのね、sir は余計だよ。おれはそんなにえらくはないのだから。

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September 23, 2008

Daily Oregraph: 2008-09-23 ゴキヅル 2008

080914gokizuru 今日は一日家にこもっていたので、先週撮った温根内湿原のゴキヅルの写真でも。

 今年のゴキヅルに例年の勢いは見られず、なんとなく数が少ないという印象を受けた。

 そういえば春採湖のミヤマニガウリも、今年は気のせいかいつもより控えめである。

 おまえもちっとはおとなしくしろ、というお告げかもしれない。

 はいはい、明日は早出だし、今夜はさっさと寝ることにしましょう。

(2008年9月14日 温根内にて撮影)

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September 22, 2008

Daily Oregraph: 2008-09-22 北海道四分の一周 (8)

 美瑛~旭川間は約24キロ。

 旭川の中心街は混んでいるだろうと判断して、新神楽橋を渡り大雪通へ。途中ちょっと寄り道して飲み物などを仕入れてから、秋月橋を通過して国道40号線に入り、ガソリンを補給して士別をめざす。

 旭川市はこれで二度目なのだが、前回は仕事をすませてトンボ返り、今回も時間の余裕がないためほとんど素通りになってしまった。全国の旭川ファンのみなさまにはまことに申し訳なく、次の機会にはぜひ市内をじっくり見物したいと思っている。

 見物といっても、マイナー路線が売り物の当社としては、例の動物園などはどうでもよく(笑)、古くから開けた街だけに、市内のところどころにたぶんまだ残っているであろう古い建物の取材が目的……実は前回タクシーの窓から目をつけていたのである。

 旭川より北はぼくにとって未知の土地である。とにかく北海道は広く、知らない土地のほうが多いのだ。

080905pippu_st1 旭川市を抜けると比布(ぴっぷ)町……正直いって比布町という町の存在はほとんど無意識下に沈んでいたのだが、道路標識に「比布駅」の名をみつけたぼくは、ブラックホールに引き寄せられるように、駅へ向かってハンドルを切ったのであった。

 たいして用事もないのにフラフラと立ち寄る-これを日本語では「縁」があるというらしい。

 ピンク色、いや「スキーとイチゴの比布町」とあるからにはイチゴ色に塗られた駅舎をよく見ると、案外クラシックなデザインの建築であることがわかる。

 まだ昼食には少し早いから入りはしなかったが、かつて事務所だった部分は軽食喫茶になっていた。

080905pippu_st2 待合室をのぞくと、驚いたことに、列車を待つ若者がひとり。

 いや、駅に乗客がいるのはあたりまえなのだが、ローカル駅ではめったにお目にかかれないからビックリしたのである。

 いつもシナチクの入らぬラーメンみたいな写真ばかり撮っているから、ついうれしくなってしまった。

080905pippu_st3
 やはり縁があったのだろう、ホームへ出るとまもなく旭川方面から列車が滑りこんできた。

 こうこなくちゃいけない。

 東京の山手線とはちがって、めったに列車はこないのだから、なんとなく胸が高鳴り、まるで子どもみたいなものである。

 列車が停車したので、さきほどの若者が乗るのだろうと見れば、ひとりではなく二人づれだったらしい。

 先日さとう公彦さんにこの写真をお見せしたところ、ああ、これは登山客ですね、とのこと。

 二人の乗った列車が名寄方面へ走り去るのを見送りながら、普通列車、昔でいう鈍行に乗って旅行したころを思い出す。

 ぼくはよそよそしい飛行機やお上品な豪華客船の旅がほんとうの贅沢だとは思わない。いまや最高のセイタクとは、時間に縛られず、コッペパンをかじりながら(笑)鈍行で旅をすることではないだろうか。

 盛岡から青森まで、英語よりも難解な土地の方言を聞きながら列車に揺られたこと、二重連の蒸気機関車に牽引された函館から釧路まで通しの鈍行では、途中夜明けを二回迎えたこと……もちろん三十年以上も昔の話だが、そんなことをふと思い出したのである。

080905pippu_st4 比布駅前。

 美瑛の駅前とはえらいちがいだが、こちらのほうがぼくにはしっくりくる。

 時間さえたっぷりあれば、せっかく縁あって立ち寄ったのだから、町内を歩いてみたかったのだが、ふたたび国道40号線に戻ることにした。

 ところがここで道に迷い、どこをどう走っているのかわからなくなってしまう。太陽の位置から方角を判断してやっと国道に復帰するまでにかなりの時間を要してしまった。

 塩狩峠ではちょっと休憩しようかどうか迷ったけれど、結局素通りして剣淵町の道の駅でトイレを借りた。この町は「絵本の里」を売り物にしているらしいが、このときはどうして絵本なのかさっぱりワケがわからなかった。番外編でご紹介するつもり。

080905shibetsu_st1 剣淵を過ぎるとまもなく士別市である。

 士別駅の駅舎はバカバカしいほど横に長く、どうにも写真の撮りようがないのには閉口した。

 いったいどうしてああいう設計をしたものか、首をひねらなければ全体を見渡せないほど細長いのであった。やむをえず一部だけ撮ったのがこれ。

080905shibetsu_st2 士別駅の内外に人影はほとんどなく、駅舎は堂々たる長さを誇るというのに、人口(約2万3千)ではさして変わらぬ富良野の駅よりもずっと活気がないという印象を受けた。やはり観光客の有無がものをいうのだろうか。

 それでも Kiosk 代わりに小さな売店があるし、「そば」のノボリを見てホッとする。

080905shibetsu_st3 ろくに街も歩いていないのに第一印象に引きずられてはいけないと承知しつつも、ついさいはての駅みたいな写真を撮ってしまう。

 宗谷本線の終着駅は稚内だから、どうか誤解なきよう。

 
080905tanukiya やはり縁あって立ち寄った士別の街もまた、時間不足のため歩くことができず、不満が残る。

 金が欲しくないといえばウソになるけれど、もっと欲しいのは時間である。

 大学で貧乏学を専攻したぼくはパンをかじりながら車中泊をしても耐えられる男だから、いつか北海道をゆっくり回ってやろうと思う(さすがに今回のように連れがいてはムリだろうけど(笑))。

 せめてもの記念に、駅前のソバ屋さんで昼食をしたためることにした。

 手打ちソバをおいしくいただきながら、さてこれからどうしようかと思案した。

 名寄まで北上して東に進路を転じ、興部経由で今夜の宿泊地である紋別をめざすか、それとも士別からこのまま東へ向かい、滝上町経由で紋別へ行くか、どちらのコースもたいして距離は変わらぬだけに、おおいに迷ったのである。

 結局士別滝の上線(道道61号線)を通って紋別へ向かい、あこがれの名寄市はまたの日に訪れることに決定した。

(2008年9月5日 撮影)

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September 21, 2008

Daily Oregraph: 2008-09-21 北海道四分の一周 (7)

 美瑛中心街の映画のセットのような町並みをはじめて見ると、だれしもビックリ仰天するにちがいない。

 どの商店もこぎれいでツルツルピカピカ、建物のかたちはそれぞれ異なるのだが、どれもこれも同じように見え、ほとんど個性が感じられない。たぶん統一感ある景観をめざしたのだろう。

 浦河の街でも似たような経験をしたけれど、ここはもっと徹底している。

 汚らしさを一掃した、豊かさと清潔感にあふれる町並みは、しかし現実感がひどく希薄で、なんとなくウソくさく、落ち着かない気分にさせられるのである。どのお店でもリカちゃん人形が店員として働いているんじゃないかとさえ思われるのだ。

 ぼくは「映画のセットのような」と書いたけれど、適切な表現ではないかもしれない。映画のセットならもっと現実に似せて作るだろうからだ。

080905biei_1_4 美瑛駅に着いて駅前を見渡すと、これまた日本離れというか浮世離れした景色が広がり、なんと形容していいやら、ことばがすぐには浮かんでこないのである。

 どこにでもある田舎町といっしょにしてくれるなとでもいいたそうな街なのであった。田舎町にも上流階級があるとすれば、ここがそうなのかもしれない。

 釧路市の山の手からやってきたぼくでさえ(笑)、なんだか自分が場違いな存在に思えてならず、ズルズルと下品な音を立ててラーメンを食ったり、芋焼酎に酔って放歌高吟するなどもってのほか……あの、ここで北海道弁ば使ってもいいんだべか?

 
080905biei_2 こざっぱりした駅舎内には、ゆったりとした待合室もある。

 立ち食いソバ・コーナーは見あたらなかったが、この街の駅にゴボウ天ソバは似合わないからしかたあるまい。

 しかししゃれた喫茶コーナーでもあればなあと思った。

 -おねえさん、コーヒー一杯。

 -ウィ、ムッシュ。

 なんてね。

 
080905biei_3
 ホームを見ると、本来実用一点張りでかまわないはずの連絡橋までしゃれた造りなのはさすが美瑛である。

 ホームの「名所案内」には、意外なことに、なんとかの木がたくさんある美瑛の丘は紹介されていなかった。

 
Bieimap 観光客の押し寄せる丘の名前が名所案内に見あたらないのはちょっと奇妙に思ったけれど、駅前の案内板「丘のまち びえい」という案内板にはちゃんと詳しい地図が示されていた。

 ご参考までにその案内図の一部を掲載しておくことにする。

 すべて回ろうとすればほとんど一日がかりだろうから、図の左上、だいだい色のエリアを見物することにした。

080905biei_4 地図が頭に入っていないからウロウロ走っていると、道ばたに一台の乗用車が停まっており、観光客が遠くへカメラを向けていた。

 見れば、なだらかな丘の上に木が数本。

 はてな、なんの変哲もない木じゃないかと思ったが、しばらくしてから、あれが「親子の木」らしいと気がついた。

 だれが名づけたかは知らないが、なるほど大きいほうが両親で、真ん中の小さいのが子どもというわけか。

080905biei_5
 ふ~ん、と少しだけ感心して(笑)、あたりを見回すと、JALのジェット機が超低空を飛んでいたので、ついつられて航空写真の分野にまで足を踏み入れてしまった。

 車輪の出ているのが見えるから、すぐ近くの旭川空港へ着陸するところだろう。

 
080905biei_6 お次はこの木である。

 「ケンとメリーの木」という、口にするのも気恥ずかしい名前がついているのは、かつて人気の高かった日産スカイラインの広告に由来するらしい。

 道路を隔てて広い駐車場があるのには驚いた。たしかに目立つ木ではあるが、正直いってそれほどの銘木とまでは思えない。

 まだ午前10時前だったせいか、それほどたくさんの観光客は集まっていなかったが、バイク乗りの若者などがやってきて写真を撮っていた。

 近くに見える建物は Pension Ken & Merry というから、経営をこの木に依存しているわけだ。恐るべき木である。

080905biei_7 ついでだから……と立ち寄ったのが、この「セブンスターの木」である。

 こちらはセブンスターの広告に使われたのだろう。ぼくにはこれまたごくふつうの木に見える。

 近年嫌煙権なるふしぎな権利(?)が幅を利かしているというのに、人気が衰えないのはどうしたことか?
 
080905biei_8 ここにも広い駐車場があり、やがて観光バスが停まると、観光客がぞろぞろとやってきた。

 もちろんたかが木だけを目当てに観光客がやってくるわけではない。

 この一帯のなだらかな丘陵に展開する、仮想現実の町美瑛にふさわしい一種の巨大な人工庭園ともいうべき美しい風景とセット販売の観光スポットなのである。

 それは納得できるのだが、やはりこの木の集客力(笑)にはくやしさをおぼえるのだ。

 釧路にだって探せばかたちのいい木はいくらでもありそうだし、名前のつけようもあるだろう。しかし問題は売り込みかたで、なんだかしらないが見物しなければソンだと思わせる名所を作るには、よほど敏腕のプロデューサーが必要にちがいない。

 そんなことを考えながら、ぼくは美瑛の丘をあとにした。「マイルドセブンの丘」というタバコ・シリーズもあったのだが、そちらはパス。

 次回はなんと比布駅。われながらワケのわからぬ展開である。

(2008年9月5日 撮影)

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September 20, 2008

Daily Oregraph: 2008-09-20 春採湖へ

 ここ数日更新をサボっていたのは、ひさびさにパソコンいじりをしていたからである。

 デジカメの写真ファイル吸い上げ用に安いモバイル・パソコンを買ったはいいが、モバイルといえども一丁前のパソコンには変わりなく、セットアップやソフトウェアのインストールはやはり一日では終わらない。昔は楽しんで作業したものだが、いまではほとんど苦痛に近い。

 おまけにネットであれこれ調べたところ、BIOS を更新しなければ「突然死」の恐れありと脅かされ(笑)、あわててフロッピーを取り出して MS-DOS の起動ディスクを作成したとお思いいただきたい(少し前までは、それが普通の手順だったのである)。

 ところが……フロッピーでは容量が足りぬため、必要なファイルが収まりきれず、更新できないのであった。そんなバカなといささか焦ったけれど、調べてみると USBメモリから DOS を起動できるのだという。USB メモリなどという洒落たものは持っていないから、さっそく買いに走る。

080919mdos なるほど、USB メモリが DOS のシステム・ディスクとして使えるわけか。うまいことを考えるものだ。

 無事 BIOS の更新も終わって一息つき、今度は 外付けの DVD ドライブでシステムのバックアップを取る。この機種では、万一の場合OSだけのまっさらな状態にしか戻せないからだ。

 バックアップを取り、念のため確かめてみると……ちゃんと DVD から起動もするし、リストア画面も表示されるのだが、自分から立ち上がったくせに、このドライブは使えないというつれないメッセージが出て、そこから先へ進まないのである。

 さてどうしよう?

 やめた。時間がもったいないからやめることにした。システムがダウンしたら、そのときに考えることにしよう。

 彼は昔の彼ならず。もうそんな根気もなければ、パソコンへの興味もすっかりさめてしまったのだ。

080920mizosoba_2 外は雲一つない上天気である。家の中でパソコンいじりなどしている場合じゃない。

 そこで春採湖へ来てみれば、まだミゾソバが咲いていた。もうそろそろ時期も終わりじゃないかな。

 太陽の光が強烈すぎて、この場面ではどう調整しても適正露出などありえないと思う。

 曇ったら曇ったで文句をいい、天気がよすぎればまた苦情をいい、まあ人間なんて勝手なものだな。

 晴れ渡る空のもと、心地よい風に吹かれて湖畔の路をブラブラ歩くのは愉快である。MS-DOS などくそくらえという気分になる。

 

080920yamabudo_2

 そういえばヤマブドウはどうなっただろうか?

 おお、まだ実は青いし、つまんでみるとずいぶん固いから、熟すまでにはだいぶ間がありそうだけれど、立派な粒がたくさんついている。

 熟したヤマブドウの実を撮るのはたいへんむずかしい。時期がくると、抜け目ない人がさっそく採りに来て、あっという間に木を丸裸にしてしまうからである。



080920yamabudo2 熟していなくたっていいから、せっかくの自然の恵み、ほんの少しだけでも味わいたいものだ。

 例によってネイチャー・センター前の水道できれいに洗い、口に含む。

 おや、先日のエゾスグリもそうだったが、意外に酸っぱくない。

 秋の味をしっかり楽しんで正気を取り戻したからには(笑)、美瑛の記事を書かなくては……

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September 16, 2008

Daily Oregraph: 2008-09-16 臨時休業

080916kunimare_2 今夜はいよいよ美瑛編だな……そう考えていたところへ、スコップさんがまたしてもおみやげをくださった。

 日本最北の酒蔵として名高い、増毛町は国稀酒造の「国稀」である。

 スコップさんはマラソン本番の前夜も一升瓶を離さないという、二日酔いで高田馬場へ駆けつけた堀部安兵衛のようなお方である。

 そのスコップさん一押しのお酒とあらば、さっそくごちそうにならないわけにはいかない。第一失礼だしね。

 そこで以前物川先生からいただいたギヤマンの杯を取り出し、晩飯前に一杯やったのが運の尽き、今夜は予定を変更して飲みつづけ、ブログは臨時休業することにした。

 美瑛だけじゃなく、宿題をどっさり抱えているのだが、まあ、いいさ。

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September 15, 2008

Daily Oregraph: 2008-09-15 床潭から太田屯田兵屋へ

0809daisuki50 白樺台さん発行のKUSHIRO DAISUKI 第50号(50号おめでとうございます)の巻頭特集「シーサイドライン完全制覇への道 床潭~末広~東根室」を拝見したところ、厚岸の小島が紹介されていた。

 大黒島は知っていたが、小島というのは初耳である。

 人家らしきものも写っているし、これは行くしかない……というわけで、さっそく床潭へ行ってきた。

080915kojima1 白樺台さんはピリカウタ広場という場所の展望台から島をお撮りになったらしいけれど、展望台への道がみつからなかったので、ぼくはやや東寄りの海岸線沿いの道路から撮影した。

 おお、小さな島の平地には人家が密集している。大シケになったら大丈夫かと心配になるほどである。ちょっと感動的な景色。

 

080915kojima2 ズームの倍率を最大(450ミリ相当)にしてもう一枚。画像が甘いのは安物レンズのせいが半分、三脚を使わなかったせいが半分。

 このくらいの焦点距離になると、双眼鏡をのぞくのといっしょで、ファインダの画面がブルブル震えるのがわかるから、かなり速いシャッタースピードでもブレる。手抜きをしてはいけないのである(笑)。

 画面左側に見える赤い屋根の建物は、どうも神社らしい。

 神社の近くにある階段を登りきったところにあるのは展望台だろうか? 興味津々だが、船で渡らなければならないのが残念だ。

080915shirepa レンズを西に向けて、尻羽岬をねらってみた。

 等倍で確認すると、岬の先端あたりに例の鳥居が見える。

 岬への小径を埋めつくしていたフキもそろそろ枯れただろうし、もう少し秋が深まったら尻羽岬を歩くことにしよう。

 

080915suehiro_2 さらに東へ進んで、こちらは末広海岸の少し手前。

 洗濯物が干してあるとシャッターを切りたくなるのは、ぼくの悪いクセ(笑)。

 もちろん末広海岸の写真も撮ったけれど、そちらは KUSHIRO DAISUKI 50号をお買い求めになってごらんいただきたい。

 末広海岸は意外に大規模な集落なのに、ぼくはいままでその存在を知らなかった。

 床潭へそれて末広海岸を通過し、北上するとふたたび北太平洋シーサイドラインに合流する。すばらしいドライブ・コースである。

 

080915kiritappu_centre このあと東根室をめざして北太平洋シーサイドラインを完全制覇することはできなかったが、霧多布湿原センター(写真左)をはじめて訪れ、茶内から円朱別原野茶内線を北上して上風連大別線へ抜け、若松・別寒辺牛を経て西へ向かい厚岸標茶線に至る。

 なんでこんなに立派な道路が? もちろん片側一車線だが、交通量が極端に少ないから、高速道路なんていらないじゃないか、といいたくなるほど快適なコースである。

 そこから南下してめざしたのは太田屯田開拓記念館。ここも以前白樺台さんの雑誌に紹介されていたので、ぜひ一度訪れたかったのである。

080915ohtatonden1_2

 

 地図には開拓記念館とあるのでどんなに立派な施設かと思ったら、民家の裏手にひっそりと建つ、ごく小さな建物であった。

 屯田兵の住宅を昔建っていた同じ場所に解体復元したものだから、余計な装飾を施していないところに値打があり、これはこれで見識ある保存方法だと思う。



 

080915ohtatonden2
 住宅というより大きめの物置といった印象を受けるが、木造家屋ファンにはこたえられない建物である。

 受付や案内所などはなく、玄関脇に置かれた木札には、さりげなく「ご自由にご観覧下さい」とあるのがゆかしい。

 

080915ohtatonden3 壁にガラス窓などはないから、中はひどく暗い。玄関を入ってすぐのところにあるスイッチを押すと電灯が点くけれど、それでもまだ暗いので、戸を開けっ放しにしておく必要がある。

 雨戸から漏れたわずかの光が障子越しに射しこむからには、隙間風も自由に侵入したはずで、真冬の寒さには想像を絶するものがあっただろう。

 写真左が台所。右は土間から囲炉裏のある板張りのスペースと六畳間を見たところ。左側の障子を隔てて四畳半一間という、ごく質素な造りである。便所は台所の裏にあった。

 屋内にはこのほかさまざまなものが展示されており、見学者は用意されたスリッパを履いて自由に室内に立ち入ることができる。備えつけのノートには、はるばる東京や関東からここを訪れた人々の名前が記帳されていた。

 まさに奇跡のように残ったこの貴重な空間は、ぜひとも見学する価値があると思う。

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September 14, 2008

Daily Oregraph: 2008-09-14 北海道四分の一周 (6)

080904furano_st1 愛される富良野駅。

 なるほど駅前で記念写真を撮ってもらう熟年夫婦もいるし、人々に愛されているらしい。

 富良野はこれまで列車で通過したことはあったが、駅舎を訪れるのははじめてである。

 

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 この駅は根室本線の途中駅でもあり、旭川へ至る富良野線の始発駅でもある。

 釧路~札幌間の特急が新得から石勝線経由になった現在では、鉄道路線としてはもちろん富良野線の重要度のほうが高いにちがいない。

 駅舎内の構えも堂々たるもので、Kiosk はもちろん駅ソバ・コーナーも完備、旭川への通勤圏内でもあるから、ちゃんと商売が成り立つのである。

 富良野市は人口約2万5千人の小さな都市だが、いまや北海道を代表する観光都市として大変知名度が高い(Wikipedia)。しかし以前書いたように、かつてはそれほど有名なマチではなかったはずだ。



 

080904furano_town1 残念ながら中心街をゆっくり見物するゆとりはなかったが、このマチの売り物はヘソらしい。

 ちょうど北海道のヘソに位置するところから、北海へそ踊りなるものを発明し、駅にも街角にもヘソ人形(?)が立っている。

 しかしへそ踊りやたこ踊り目当てに観光客が押し寄せるとはとても考えられず、首をひねったりヘソをひねったりしながら歩いていると「北の国から」資料館なる立派な建物があり、旅人はなるほどと納得するのである。

080904furano_town2_3 ほくは「北の国から」というTV連続ドラマにはまったく思い入れがないから、資料館をパスしてすずらん通り商店街をパチリ。

 しかし「北の国から」の影響力には想像以上のものがあり、あちこちに点在するドラマに登場した家のセットを巡礼する観光客があとを絶たないと聞く。

 肝腎のドラマはまともに鑑賞していないから、えらそうに批評する資格はないのだが、断片的に見たかぎりでは、たいへんアクが強く、いささかわざとらしさを感じさせる芝居という印象を受けた。ぼくはどうも倉本脚本とは肌が合わないのかもしれない。

 しかし今もって観光客が富良野をめざすからには、「北の国から」によって北海道のひとつのイメージが定着し、それが多くの人々の支持を得たことは認めざるをえないのだろう。

080904furano_town3 北の国の住人のくせに「北の国から」には冷淡なぼくだが(笑)、倉本聡氏が関わっているといういう喫茶店には感心した。

 この日泊まったホテルの近くに朝日ヶ丘総合公園という広い公園がある。その公園の一角に建つログハウス風の「北時計」という喫茶店なのだが、内装もすばらしいし、コーヒーも観光客相手のボッタクリ価格ではなく良心的。

 公園を散歩して一杯の熱いコーヒーにありつけるのはありがたいし、釧路の春採湖畔にもこういうお店があってもいいんじゃないかと思った。

 よそのマチのいいところは断然マネすべきだ。春採湖のネイチャーセンターでもコーヒーは飲めるようだが、開館時間などの制約も多いし、内容も中途半端。もっと活用してはどうだろうか?

 ドラマのセット見物はともかく、富良野近辺には景色のいいところがたくさんあるらしく、時間さえ許せばじっくり回りたかった。せめて美瑛でも……というわけで、次回はもうひとつの観光のメッカである美瑛をご紹介したい。

(2008年9月4日 撮影)

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September 13, 2008

Daily Oregraph: 2008-09-13 秋を味わう

 金さえあればうまいものは食える……あたりまえである。

 それじゃおもしろくもなんともないから、金を出さずにうまいものを食おうというのが今日のテーマ。

080913ezosuguri1_2 といっても、デパートの地下で試供品をつまもうというせこい話ではなく、青空の下で自然の恵みを味わおうではないか。

 ひさびさに春採湖畔にやってきたのは、毎年楽しみにしているエゾスグリ試食会のため。

 こいつはほんとうにすっぱい。

 見た目はうまそうだが、思わずペッと吐き出してしまいそうになるくらいすっぱいのである。

 しかし秋を味わうにはエゾスグリがいいと、ぼくは勝手に決めているのだ。

 
 

080913ezosuguri2 いただくのはたった一粒。

 ネイチャーセンター前の水道できれいに洗って手のひらにのせれば、いや、実に美しいものだなあ。

 えいやっと口に放りこんでみると……おや、今年の実は意外に酸味が少ないのにビックリ。完熟の秋の味。

 

080913chidorikeman たった一粒のエゾスグリに満腹したあとは、やはりタダで遊ぼうという趣向。

 チドリケマンの果実を指でつまんでみると、あらふしぎ、ミサイルのように発射台(矢印)から勢いよく飛んでいくのである。

 次々と無害なミサイルを発射するのはおもしろい。

 いい年をしたおじさんがおもしろいと思うのだから、きっと子供もおもしろがるにちがいない。ぜひお子さんとご一緒にお試しいただきたい。

080913miyamanigauri ついでだから、わが友ミヤマニガウリに挨拶をする。

 小さな小さなミヤマニガウリの花のとなりでは、もっと小さなクモが網を張り、小さな獲物にしがみついていた。

 金をかけずにうまいものを食って、楽しく遊んで、リッチな気分……これがこの秋のトレンドである(笑)。

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Daily Oregraph: 2008-09-13 北海道四分の一周 (5)

080904ikutora_st1 根室本線幾寅駅。

 クラシックな木造駅舎がいい味を出しているけれど、あちこちに白塗りの案内板が目につく。

 ここは高倉健主演の映画『鉄道員(ぽっぽや)』のロケが行われたので、観光の目玉として駅舎の付近に建てられたセットを保存しているのである。

 

080904ikutora_st2 映画の撮影にあたって手を入れたかもしれないが、まさかこの駅舎までセットとして新築したわけではあるまい。

 幾寅駅ではなく映画で使われた駅名である「幌舞駅」を名乗っているのが、ぼくにはなんとなく気になった。

 建物自体は北海道人にはなじみのある、なつかしい造りである。最近の無国籍風建築よりは断然すぐれていると思う。

 自転車がたくさん置かれているところを見ると、そこそこ利用者もいるらしく、落合駅とは格がちがうようだ。

080904ikutora_st3 駅舎内にも『鉄道員』の看板が掲げられ、かつての駅事務所内には映画ロケに関係する資料-健さんの着た鉄道員の制服や、ロケ風景の写真、出演者の色紙などが展示されている。

 たぶん観光客がわんさと押し寄せた時期もあったのだろうが、この日は駅舎内はガランとして人っ子ひとりみあたらなかった。

 だれもいない駅舎内のテレビには、映画本編か撮影風景かは、注意して見なかったからわからないけれど、ビデオがエンドレスで流されていた。

 映画のロケがこの地の住民に深い印象を与えたであろうこと、「町起こし」の格好の材料になるとはりきったであろうことは想像に難くない。それはわかるんだけどなあ……

080904ikutora_st4 ホーム側に出てみると、幌舞駅-幾寅駅という二重構造(?)になっているのがまたしても気になる。

 観光用なのは理解できるけれど、幾寅駅が幾寅駅であってなぜいけないのだろうか?

 ヤクザ映画時代からの健さんファンであるぼくも、映画『鉄道員』は観ていないので思い入れがないせいか、ちょっと首をひねったのである。

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 ホームには連絡橋もなく、落合駅より地味な造りである。

 写真は上が滝川方面、下が新得・帯広方面。

 あたりまえの話ながら、さすがに駅名票には幾寅と表示されており、ホッとした(笑)。

 

 

 

080904ikutora_st6 ふたたび駅前に出て、「だるま食堂」のセットを見物する。

 すばらしい。実によくできている。

 今では見られなくなった、昔なつかしい駅前食堂をみごとに再現したこのセットを取り壊さずに保存しているのはえらい。

 ……と感心したものの、「鉄道員オープンセット」の案内板は目立ちすぎじゃないかと思った。もっと控えめならいうことはないのだが。

 ぼくの考えはこうである。

 まずこの案内板を撤去して、ついでにほかの案内板もひとつを除いて片づけてしまう。だるま食堂には本日休業の札を掲げておこう。もちろん駅舎から幌舞駅の看板をはずし、本来の幾寅駅に戻すのである。

 そのほうが効果抜群、この食堂を目にしたものは今どきこんな食堂が残っていることにビックリするにちがいない。駅舎内の案内パネルを見て、はじめて映画のセットであったことを知り、そうだったのかと納得するわけ。

 そうそう、駅舎内のビデオ放映もやかましいからよしたほうがいい。せっかくの建物にふさわしくないからだ。

 ここは独特の雰囲気が漂い、一見に値する場所であるだけに、知名度がいつまで持続するものかしれない『鉄道員』という特定の映画にあまり寄りかからず、「鉄道をテーマにした映画のロケに選ばれた場所」くらいにとどめておいたほうがいいと思うのである。

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 うっかり写真を取り忘れたけれど、駅の向かいにあった理髪店も映画のセットだったと記憶している。

 セットは実にうまくできているので、周辺建物のどれもがなんとなくセットのように見えてくるのであった。

 駅の近くの倉庫で目にした、ぼくにはなじみのない「北紡毛糸」の看板も、わざわざ映画用に作ったんじゃないかと疑い、帰ってからネット検索したところ、これは本物であった(笑)。


080904ikutora_st8 こちらはすべて本物の幾寅市街。

 これはこれで味わいのある通りだと思う。

 まったくうるさい観光客で申し訳ないが(笑)、ケチをつけているどころか、幾寅駅が気に入ったからこそなんだかんだと書いたまでで、どうかお気を悪くされぬようお願いしたい。

 さて、そろそろ富良野も近い。

(2008年9月4日撮影)

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September 11, 2008

Daily Oregraph: 2008-09-11 北海道四分の一周 (4)

080904karikachi 狩勝峠を越えるのは、いったい何年ぶりのことだろうか。

 素通りするのは惜しいので、峠のみやげ物屋の駐車場に車を止め、展望台からの眺望をパノラマ合成用に撮影した。

080904karikachi2 狩勝峠。標高644米。日本新八景の一。

 日本新八景とはどういうものかよく知らないが、たしかに眺めは悪くない……いや、悪くなかったにちがいない。

 ところどころ山をバリカンで刈ったような跡が目立ち、どうにも痛々しい印象を与えるのである。

 みなさまが狩勝峠を車でお通りになる機会などあまりないだろうし、なんとも風変わりな十勝小唄なる歌碑があったので、ついでにご紹介しよう。

   ランランラントセ カネガフル
   トカチノヘイヤニ カネガフル
   狩勝峠で東を見れば
   雲か海かや只茫々
   十勝平野は涯しも知れず

   あれさ日本一豆の国

 カネガフルというのはもちろん「金が降る」だろう。日本一豊かな豆の国を賛美する、えらく景気のいい歌詞である。なにしろ空から金が降ってくるのだから、うれしさのあまり、ついランランランと鼻歌のひとつも出ようというわけ。

 実際に金が雨霰と降ってきた日にはインフレ必至、大変な事態になるだろう……などとバカなことを考えながら(笑)、十円玉一枚降らぬ峠をあとにした。

080904ochiai_st1 峠を下って上川支庁に入り、最初に車を停めたのは根室本線の落合駅である。

 これといって特徴の見あたらぬ駅舎だが、山あいにひっそりとたたずむ姿は印象的で、ぼくは気に入った。

 この写真だけを見ると、いかにも駅がポツリと孤立しているような感じがするけれど