Daily Oregraph: 2008-05-17 裏庭自然公園
おじいさんは山へ柴刈りに行った。いや、ほんとうに刈ったのである……あのなまけもののおじいさんが。
この上天気、日本一遅い裏庭のサクラもきっと咲いたことだろう。
そう思ったおじいさんは、カメラをぶら下げて、よっこらしょと立ち上がり、荒れ放題の裏庭へ向かったのだが……ああ、これではまだ開花宣言は出せぬわい。
エゾヤマザクラ(左)はまだ開ききっていないし、チシマザクラ(右)もつぼみのまま。15日には釧路、16日には根室で開花宣言が出され、サクラ前線はついに日本列島を縦断せりとマスコミは報じたけれど、それは誤報である。日本一遅いサクラはわが裏庭にあり。
それにしても荒廃の度を加えた裏庭はひどいことになっていた。去年の枯草がそのまま残った上に草が伸び、このまま放置すればいずれヤチボウズが出現するのではないかと疑われるほど。
古来荒れ果てた庭は、にぎやかなりし過去とさびれた現在とを対比させる好材料として、しばしば文学に登場する。
旅の坊さんがこういう庭を通りかかると、白髪の翁に出くわしたりするのだけれど、これが実はただ者ではない。もとはなんとかの中将の幽霊だったりするのである。
このおじいさんはもちろんもと中将ではないが、ふらふらした足取りは幽霊に近い。ブツブツいいながら、伸びに伸びてチシマザクラを圧迫しているバラの枝などを容赦なく切り払い、そいつを束ねてヒモでくくったやつを、近日中に資源ゴミとして出そうと運ぶ姿は、とんと出来そこないの二宮金次郎。
ニリンソウが気をそろえたかのように一輪ずつ開花した。毎年のこととはいえ、おじいさんはうれしいのである。
-こうして撮れば荒れた庭は他人には見えぬ。可憐な花の咲き乱れる花園としか思えまい。写真などでは虚実はとてもわからぬことよ。
……と、ワケのわからぬことをつぶやきながら、おじいさんは低く笑うのであった。
ニリンソウの葉の間から顔を出し、反り返るほどの勢いで開ききっていた。先日はしょんぼり花を閉じていたのが、五月の陽光を浴びて精一杯存在を主張しているのだ。
おじいさんの顔だってほんのり赤みがさして、見ようによってはこのカタクリのようなのだが、芋焼酎の飲みすぎによる酒焼けだからお話にならない。
野の花咲き乱れるこの裏庭は、荒れたりといえども立派な自然公園なのである。
公園管理人のおじいさんは、このあと部屋の網戸の網を張り替えるなど、この日はめずらしくこまめに働いたのであった。
ごぼうびは……もちろん imoshochu on the rocks、いっそう頬の赤みが増したようである。
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