« Daily Oregraph: 2007-10-28 (1) 鶴はいずこ? | Main | Daily Oregraph: 2007-10-28 (3) 鶴の立つ影 »

October 29, 2007

Daily Oregraph: 2007-10-28 (2) 五十石駅に舞う鶴

071028_11 孤高のおじさんランナーのことばどおり、このあたりはタンチョウ観察地帯らしく、まもなく「たんちょう スピード落とせ」という掲示のある廃屋が見えてきた。

 文法的にはやや問題なしとしないが、もちろん無学文盲のタンチョウに飛行スピードを落とせと呼びかけているわけではなく(笑)、たっぷり学問のあるあなたに車のスピードを控えるよう訴えているのである。

071028_13 う~む、それほどタンチョウが多いのか……忠告にしたがってゆっくり車を走らせつつ、注意深く道路の左右を観察したのだが、ウシはいくらでもいるのに、ツルのツの字も見あたらないのであった。

 話がちがうといいたいところだけれど、あとで苦情がこないように、おじさんは「運がよければ」とつけ加えていた。

071028_12 どうせ運も悪ければ、もともとツル好きでもなし、(たぶん)カラマツの黄葉などをながめながら、次なる目的地へひた走ることにした。

 目的地とは……なにを隠そう、五十石駅である。

 この無名の駅をめざすのは、なんと約40年ぶり。地図をながめているうちに無性に行きたくなったのだ。

 五十石を訪れたのは高校3年のとき、忘れもしない、受験勉強などそっちのけで、正月の3日に友人のO君といっしょに釧路川へ釣りに行ったのである。

 ぼくは釣りをしないから焚火の係、朝から夕方まで立ち枯れた木をへし折っては、雪原におこした火にくべていた(自然保護の観念に乏しい当時のこと、まして乱暴ざかりの高校生のこととて、どうかご勘弁いただきたい)。

 ひっきりなしに川を流れる薄氷にはばまれて釣り針を水中に投ずることはならず、結局魚は一匹も釣れなかった。しかし無数の氷と氷とが触れあうときに発する、この世のものとも思われぬオルゴールのように美しい金属性の音を、いまも忘れることはできない。

 そして夕暮れの五十石駅の木造駅舎。待合所で石炭ストーブにあたりながら汽車を待ったことも、昨日のことのようにおぼえている。

071028_14 五十石駅を示す道路標識はなかったので、いったん通り過ぎてしまい、「待てよ、いま奇妙なものがあったな」と気づいて引き返し、やっとみつけたのがこれ。

 ああ、これが五十石駅とは!

 古い車両をリサイクルした駅舎には、日本伝統の様式で川らしきものが描かれ、鶴のいるはずの鶴居村ではお目にかかれなかったタンチョウがその上を優雅に舞っているのであった。

071028_15 40年の歳月がまるで400年の夢まぼろしとも思え、無常の風に吹かれつつホームへ回って、標茶方向を見たのがこの写真である。

 高倉健がフラリと姿を現してもおかしくはないあの木造の駅は影もかたちもなく、なんと評していいものか、ぼくは言葉を失った。

071028_16 駅舎内というべきか、列車内というべきか、とにかく中をのぞいてみると、備えつけのノートと鉛筆があって(写真左)、旅行者がてんでに感想らしきものを書きつけているのだった。

 かれらもまた40年後にここを訪れて、あの列車を再利用した駅舎がなつかしいというのかもしれない。いや……40年後にこの駅や鉄路が残っているものかどうかは疑わしいけれど。

 このあとぼくは本物のタンチョウに出会えたであろうか? 待たれよ、次回。……今夜はほんとうにひっぱっているのである(笑)。

|

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/62056/16912975

Listed below are links to weblogs that reference Daily Oregraph: 2007-10-28 (2) 五十石駅に舞う鶴:

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)