今日の釧路はついに気温30度に達するという、記録的な暑さになった。
「なんだ30度か」などと鼻で笑うのは、事情をご存じないからだ。
釧路・根室地方、とりわけ沖合を寒流が流れる海岸地帯は、北海道内でもその冷涼な気候をもって知られ、真夏でもめったに摂氏25度を越すことはない。
観光客の方が夏に札幌や帯広など内陸地帯を訪れ、なんだ北海道なのに暑いじゃないかとこぼすのは、そもそも選択を誤っているのだ。地理の時間に習った大陸性気候ということばを思い出していただきたい。
涼を求めるなら、迷わず釧路市、それも海岸部へ直行すべきだろう。地元びいきなどというケチな気持からいうわけではなく、これはまぎれもない事実なのである。
……と、釧路を売り込んだところで(笑)、本題に入りたい。
春採湖畔のニュースとしては、ツリガネニンジンが咲いたことだろうか。温根内では咲きはじめたミゾソバも、ここでは葉っぱだけ一人前に成長したものの、花はまだみあたらない。
目新しいニュースを追い続ける軽薄なマスコミとは一線を画している当社としては、今日は長年のテーマであるミヤマニガウリの特集を掲載したい。
これは先日(11日)お目にかけたのと同じ木の幹。
ここ数日の暑さのせいか、ツルはぐんぐん伸びて、かなりの高さにまで達した。もう少しすると、この付近は一面ミヤマニガウリの葉っぱで覆いつくされ、そのすさまじい光景は思わず息を呑むほどだ。
ここでミヤマニガウリをみつけるためのコツをおさらいしておきたい。
まずバットマンのマークみたいな葉っぱに注目しよう。ただし花の近くの葉はやや小ぶりでシワが多く、ちょっとカールしている。いずれ果実が生長すると、まるで保護するかのように小葉が果実を包むのである。
そしてツル。こいつはときとして精密なコイルのようにラセン状に曲がり、触手の先端は巻きつくものを求めて空中をさまよう。
-あの、質問があるんですけど。
-なんですか、太郎君?
-北海道新聞も釧路新聞も、地方版でまったくミヤマニガウリを取り上げないではありませんか。薄氷堂さんはひいきにしていますけど、ほんとに値打ちのある植物なんですか?
実際太郎君のように、有名すなわち価値があることと思い込んでいる人が多いんじゃないかと思う。
月下美人が咲いたとか、釧路でバナナがなったとか、その手の話題にはマスコミは敏感である。弥生町の薄氷堂さんが食べ残しのパイナップルをみごとに育てたとしたら、釧路新聞もきっと黙ってはいまい。
万物を覆いつくさんばかりの大勢力を誇るミヤマニガウリがポピュラーでない理由の一つは、おそらくその花が小さいことだろうと思う。
小さいがゆえに、実際アマチュアが写真に撮るのはむずかしく、ぼくも何度地団駄を踏んだことだろうか。
十回シャッターを切って、一枚なんとかピントが合えば御の字、それだってよく見ればずいぶん甘い。この暑さの中、アルコール依存症の人間が手を震わせながらシラフで撮るのは至難の業といえよう(ほんと、ピントが甘い。イヤになってくる)。
湖畔の道をブラブラ歩いていたって、わずか数ミリの花に目をとめる人は少ないだろうと思う。
しかしハッタリが横行し、見かけ倒しが肩で風切って歩く世の中だからこそ、ミヤマニガウリの控え目で小さな花には値打ちがある。そもそも人に見せようとして咲いているのではないからだ。
実はこのあと猛暑をものともせず(?)、温根内へ足を運んだ。ミヤマニガウリの親戚であり、やはり実力のわりには脚光を浴びることの少ないゴキヅルを撮るために。
明日の記事は温根内のゴキヅル特集である。乞うご期待。
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