October 18, 2021

Daily Oregraph: 嘆きの秋

 本日の最高気温は12.1度。晴れ。今朝の最低気温は0.6度だから、いっぺんに寒くなった。

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 先日も書いたように、強風のため多くの葉を落とした南大通付近の街路樹はさびしい姿をさらしている。

 Bleak House はやっと315頁。スローペースもいいところだが、ディケンズはときどきわかりにくい文章を書くから仕方がない。しかしストーリーは練りに練られていて感心する。

 ぼくが最初に読んだ長編は Oliver Twist (1838年) であった。これはべらぼうにおもしろい小説だが、ストーリーは出たとこ勝負もいいところで、オリバー君は主人公とは名ばかり、周囲に振り回されるでく人形みたいなものである。

 分冊連載ものなので読者の反応をうかがいながら書いたせいもあるのかなと思ったけれど、1853年の Bleak House だって分冊ものだから、やはり15年もたつと小説家としての腕前がよほど向上したにちがいない。さすがにえらい人物はちがうものだ。

 ところが読み手の実力は何年たっても向上しないから困る。心にグサリと刺さる(笑)マザーグースの歌を29年前の拙訳でご紹介しよう。まずくても文句をいってはいけない。なにしろこちとら29年たってもさっぱり進歩の見られないアホなんだから。

  When I was a boy
  (餓鬼の頃から)
     I had but little wit;
     (おつむが鈍く)
  'Tis a long time ago,
    (年をとっても)
     And I have no more yet;
      (このとおり)
  Nor ever, ever shall
  (だめはだめだよ)
      Until that I die,
     (死ぬまでは)
  For the longer I live
   (長生きするほど)
     The more fool am I.
       (あほになる)

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October 11, 2021

Daily Oregraph: 風の音にぞ

 本日の最高気温は19.3度。曇り。

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 昨夜の強風はすさまじく、やかましいのなんの、なかなか寝つけなかった。風は早朝にはおさまったけれど道路はこのありさまで、多くの街路樹が葉を落とし、景色はいっぺんにみすぼらしくなった。

 相変らずマジメに読書をつづけているが、ここ二三日はさっぱりはかどらない。知る人ぞ知る、ディケンズは手ごわいのである。読みやすくて助かるわいと思ってホクホク喜んでいると、いきなり判じ物のような文章が出現する。それが何頁もつづく。なんじゃ、これは?

 二三度読み直せば少しはわかるけれど、五六ぺん読み返したからといってその倍理解できるわけではない。エゲレス人の諸君はどなたもこいつをスラスラと読めるのだろうか? しょうがないから七八ぺんまでは読み返し、大体意味が取れたところで先へ進むことにしているのは、そうしなければ死ぬまでかかっても結末にたどりつけないだろうからである。

 こんな本の読み方をしたって一文の得にもならないし、いわゆる生産性やコストパフォーマンスとは無縁の世界である。ぼくみたいなバカは、とても竹中平蔵先生の弟子にはなれそうにない(死んでもなりたくないけど(笑))。

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October 06, 2021

Daily Oregraph: 明窓浄机?

 本日の最高気温は15.4度。晴れのち曇り。

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 明窓浄机という言葉には麻薬的な魅力があり、こういうすっきりした部屋(2002年9月撮影。金福寺芭蕉庵)に小さな机を置いて、塵ひとつない机の上には本と辞書が一冊ずつ、主は端然として正座し、宇治の煎茶を啜りながらゆっくり頁をめくる……というのは実に格好がよろしい。理想的である。読書人とはこういう人をいうのであろう。

 しかしそううまく話が運ぶはずはない。明窓はともかく、浄机はまず無理な注文である。辞書だけで少なくとも数冊、それに参考書が何冊か加わるから、液晶ディスプレイに場所をふさがれた机にはとてもすべてを置く余裕などない。余った分はどうしたって床に転がさざるをえないではないか(しかしこれが案外便利だから困る)。

 しかも日によってはさらに参照する辞書や本が増えるので、しまいには新世界の飲食店街みたいな様相を呈することになる。当然片づけるのがおっくうになってそのまま放りっぱなしにするから、まさか坂口安吾の部屋ほどではないけれど、数日もすれば雑然混沌として、とても掃除機を使うどころの状態ではなくなってしまう。

 これではいけない! 第一不潔である。今朝奮然として立ち上がり、数週間ぶりに掃除をしたというのが個人的大ニュースなんだから、われながら情けない。バカじゃないかと思う。

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October 01, 2021

Daily Oregraph: サンマを食う

 本日の最高気温は21.0度。曇りのち雨。いやに暖かい。

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 たかがサンマの分際で結構なお値段だが、年にいっぺんくらいはよかろうというのでお買い上げ。さすがに一尾100円のものとは一味ちがってうまかった。

 さてサンマとはなんの関係もないけれど、『バーチェスターの塔』を読了したので、ぼくの読んだテキストの解説者ハーラン・ハッチャー先生(Harlan Hatcher, 1898-1998)の文章に従って、作者についてメモしておこう。

 アントニー・トロラップの母親は50歳にして文筆に手を染め、その後25年間に114冊を書き上げたという、ちょっと信じられぬ女性である。朝は家事の始まる前の4時に起き、日課として何頁と決めてコツコツ書き続けたというから驚く。アントニーはこの母の血を引いていたわけである。

 経済事情が許さなかったため大学へ進学できなかったアントニーは、ロンドン郵便局にわずか年収90ポンドの職を得た(薄給である)。『バーチェスター』の主要な登場人物はオクスフォード学閥に属するから、本人はよほどオクスフォードへ行きたかったのだろう。

 トロラップはあらかじめ週にこれだけ月にこれだけの語数を書くと決め、日記にその日の成果を記録した。生涯朝の5時半に起きて、コーヒーを飲んでから3時間執筆する。15分間に250語というスピードである。その後郵便局の勤めに出たわけだ。

 彼は仕事柄出張が多く旅に明け暮れた。しかし汽車に乗れば車内で、船に乗れば船内で、いつもどおり執筆を続けたのである。小説を一編書き上げてまだ時間が残っていればすぐさま次の作品に取りかかったというのは、職人芸としても信じられない話だ。

 自伝に創作の秘密をあまりにも正直に書いたため、機械的に文章を書く男として、当時批評家からは不評を買ったらしい。漱石が「トロロープは、汽車に乗っておって一時間に何ページとか書く」と書いたのは、たぶんトロラップの自伝を読んだのだろう。また「あまり傑作もできないようであった」と付け加えたのは、当時の批評を意識したのかもしれない。

 さらに出世作となった『バーチェスター』は、調子よく万事めでたしめでたしで話が終るし、ときどき作者が表面に出すぎたり、たまに月並調が表われたりするところが漱石先生のお気に召さなかったのかも知れない。

 しかし波瀾万丈の大活劇が展開するわけでもないのに、決して読者を飽きさせない手際は見事だと思う。物語は水が流れるように進行し、登場人物はそれぞれの性格に従って自然に行動する。機械的に書いたなどという印象はまったく受けない。執筆スタイルと作品の出来とはたいして関係ないという見本かも知れない。

 全体に話のうまいおじさんが毎晩夕食後に語るのを、ワインを啜りながら聴いているような心地よさがあるから、いまだに熱心な読者が少なくないこともうなずける。図書館でみかけたら、だまされたと思って(笑)お読みになってみるといいだろう。

 次はどうするか少し迷ったが、時代遅れの19世紀小説愛好者としては、ひさびさにディケンズに戻って『荒涼館(Bleak House)』を読むことにした。大長編だからかなり時間がかかると思う。

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September 28, 2021

Daily Oregraph: スマホぎらい

 本日の最高気温は18.4度。晴れ。

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 とうとうスマホに替えた。決して替えたかったわけではなく、au は来年、他社も数年後にはガラケーが使えなくなるというからやむをえない。

 そこで半日ほどいじってみた結果、予想どおり、ぼくとしてはガラケーに軍配を上げざるをえない。

 まず電話としては形状的にガラケーのほうが圧倒的に使いやすい。ポケットに入れるのも邪魔だし、なんだろうかこの扱いにくいサイズとかたちは。

 次に(これはガラケーも似たようなものだけれど)タッチパネルをちまちま押しながら作文なんてできたものじゃない。ぼくは英文タイプライタ育ちだから生粋のキーボード人間(笑)である。おまけに短気ときているので、こんなタコな機械でメールなんて打ちやしませんとも。

 第三にやはりタッチパネルの欠点だが、知らぬうちにアイコンに触れると画面がパッと変ってしまう。ばかやろう、余計なことをするんじゃないよ。

 第四に電池の消耗が早すぎる。ガラケーなら十日以上放りっぱなしでも問題ないけれど、どう考えてもこいつはそれほど持ちそうにない。

 電話としてはガラケーに負け、文書作成はいうまでもなく、インターネット閲覧もはるかにノートパソコンに劣り、いかにも中途半端なオモチャだというのがぼくの下した結論である。こんな代物をありがたがる人が多いのは謎中の謎というしかない。

 歩きスマホなど滅相もない。町歩きにこんなものは不要である。以上。

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September 25, 2021

Daily Oregraph: マジメに読書の秋

 本日の最高気温は19.9度。晴れ時々曇り。

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 しばらく間を置いたのはマジメに本を読んでいたからである。トロラップ(わが国ではトロロープで通っている)の『バーチェスターの塔(Barchester Towers)』は前作よりも一段と滑稽味や皮肉が効いているし、作者の職人芸を楽しめるから、決して退屈はしない。最初はだらだらと読んでいたが、だんだんスピードが上がってきたのはその証拠である。

 この作品を当然読んでいたはずの漱石は、『人工的感興』という文章で「イギリスのトロロープは、汽車に乗っておって一時間に何ページとか書く。これなぞはあまり物事を苦にしないほうではあろうが、しかしあまり傑作もできないようであった」と書いており、かなり点が辛い。

 しかし『猫』の調子にはいささかトロラップの影響を受けたかと思われるふしもあるし、ぼくなどは『バーチェスター』のほうが漱石のたいていの小説よりもおもしろいと思う。世間様の評価に逆らうようで申し訳ないが、『それから』のような小説は、狭い路地でウロウロしているような感じがして、短気なぼくには退屈でつまらなかった。

 もう一息で読み終わるから、そろそろ次の作品を選ばねばならない。 

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September 19, 2021

Daily Oregraph: 読む前に貼れ

 本日の最高気温は24.7度。晴れのち曇り。昨日は雨が降って寒かったのに、なにをとまどったのか、夏の最後っ屁みたいに気温が上がった。

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 17時17分。日暮れがどんどん早くなり、短い散歩をしているうちに、街灯はすべてともっていた。

 さてほかにネタもなし、傘張り浪人みたいな地味な話だけれど、本の補修について。

 ご存じのとおり、英米のペーパーバックスの造本はきわめてお粗末である。日本の文庫本は最近でこそ英米並みに雑になってきたけれど、戦前の岩波文庫などはしっかりした造りで、いまだにびくともしない。

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 この本は1950年代出版のものらしく、ふつうのペーパーバックよりも紙質は数等上だし造本も丁寧、メリケン製にしてはかなり優秀なほうだと思う。しかしすでに約70年も経っているから徹底的に乾燥しており、読んでいるうちに地震で地割れが出来たように裂けてしまう。

 そこで活躍するのが木工用ボンドである。こいつを割れ目に流し込んで(写真上)、半日ほど重しをのせておくと復活するのだが、いったんこうなると繰返し地割れが発生する。そのうちに背表紙もろとも本が真っ二つに分かれてしまうこともめずらしくない。

 それを予防するために愛用しているのが幅広のスコッチテープ(写真下)。これで背表紙を補強するとかなり効果がある。ペーパーバックだけでなく、ハードカバーの本や辞書などにも大いに役に立つからおすすめである。

 もちろん見た目はよろしくない。長年愛用しているランダムハウス英和辞典などは、韋編三絶、木工用ボンド+スコッチテープで何度も処理しているから、辞書界のフランケンシュタインみたいになってしまった。

 それでも本は補修が効くからまだいいけれど、人間様の頭や体はそうはいかないから悲しい。固有名詞はなかなか思い出せないし、膝はギクシャクするし、いずれバリッと音を立てて二つに割れてしまうんじゃないだろうか。

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