April 20, 2019

Daily Oregraph: 裏庭画報 土の匂い

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 地鎮祭をしてビルを建てようというわけではない。鍬をふるって土を起こすのである。

 猫の額ほどの地面でも、すぐに息切れがする。ふだんあまり体を動かしていないから、百姓仕事にはまるで向いていないのだ。しかし細々と野菜を作って食うためには、やらねばならぬ。

 それにしても雑草にはまったく腹が立つ。特に写真左下に見える赤い根っこ(地下茎?)には毎年泣かされる。「雑草博士入門」という本を調べても、まだ正体はわからないのだが、こいつのしぶとさは尋常ではない。思い切り引っぱっても抜けずに途中で切れてしまうから、いつまでも土中に残り、夏になるとあちこちから顔を出すのである。

 NHK教育放送で「野菜の時間」とかいうのがあるけれど、あれはいけない。なにしろ畑には雑草ひとつ生えていないんだから、専門のスタッフが日頃せっせと手入れしているにちがいない。そこへ撮影のときだけタレントがやってきて、うれしそうに土いじりをするのを見るとシャクにさわるのである。ばかやろう、そんな百姓がいるものか(笑)。

 しかし春になって土の匂いをかぐのは気分のいいものだ。昔は近所のあちこちにあった肥だめの匂いまで思い出すから奇妙である。マドレーヌの味から記憶がよみがえって大長編をものした作家のようにはいかないけれど、肥だめの匂いからいろんなこと……たとえばはな垂れどものチャンバラごっこや女の子のゴム跳び、紙芝居屋のおっさんや納豆売り、それに七輪で焼くサンマの青い煙や、軒先にぶら下げて干したシシャモの映像まで浮んでくる。みんな貧乏だったけれど、いまのようにみっともない世の中ではなかったような気がしてならない。

 まもなくいろんな花がいっせいに咲き出すだろう。それを眺めながら、ジジイは野菜の種をまくのである。

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April 18, 2019

Daily Oregraph: 春の港(としておこう)

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 二週間ぶりにシャッターを切ったのだが……

 -ひでえ写真だね、こりゃあ。

と、わが大阪通信員に叱られてもしかたがない。返す言葉がないのである。

 -すまん。面目ない。しばらく間が開いたから、むりやり撮ったんだよ。

 -なにゆえヘボな写真にこだわるんだ?

 -不思議の国のアリス嬢の「絵のないご本なんて、なんのためにあるのかしら?」という意見に賛同するからだよ。

 それに……こんな写真からでも、なにかしら伝わるものはあるはずだ。

 -そうかなあ?

 -君の目は節穴かね(と、攻勢に転ずる(笑))。遠くがボーッと霞んでいる。光にかすかななまめかしさがある。見ているうちに、なんだか眠たくなってくる。冬には撮れん景色だな。題して「春の港」。

 -あきれてものもいえん。

 だからさ、また写真を撮って送ってくれよ(笑)。

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April 12, 2019

Daily Oregraph: くすのき物語

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 4月11日に当社大阪通信員が撮影した十三公園の楠。最近ぼくは低調ゆえ、写真を送ってくれるのは大いに助かる。しかしいくら写真を提供してくれても、無給であることには変わりない。すべてアベノミクスのせいである(笑)。

 たしかに堂々たる楠である。かたちもいいし、生命力に溢れている。一方の通信員君は枯れかかっている。緑の葉を茂らせる樹木と枯れゆく爺さん(失礼)との間に吹く風は、さわやかにはちがいないけれど、どことなくもの悲しくもある。

 -ねえ、こんなに天気がいいのに、どうして悲しそうな顔をしてるの?

 -う~む。それはね、君も大人になればきっとわかるよ。

 ここで通信員のお爺さんは、かつて新聞でみかけた佛教大学の広告コピーを思い出すのであった。

    人間は、
    いつか
    死ぬ。

 -ほんとだよなあ。それに、この楠だって、いつかは枯れるのだ。

    木は
    いつか
    枯れる

 -だとすれば、

    悪は
    いつか
    滅びる

ということになるな。いや、そうならねば困る。

 -お爺さん、なにブツブツ独り言をいってるのさ。はい、これ。

 そういって少年は、大阪のうるわしい習慣に従って、飴玉をひとつ差し出した。お爺さんは礼をいって、素直にそれを受け取った。賢そうな子だから、いずれあそこに見える北野高校にでも進学するのだろう。

 お爺さんの相手に飽きた少年は、教会のほうへ駆けていった。その後ろ姿を見送りながら飴玉をほおばったお爺さんは、思わず口をすぼめた。酸っぱいレモンの味がしたのである。

 -ああ、おれはこの味をすっかり忘れていた……

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April 07, 2019

Daily Oregraph: 空想花見

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 大阪の桜である(4月6日当社大阪通信員撮影)。こちらより約一ヶ月半近く早い。

 さて本日の道知事選は、自公推薦候補の勝利に終った。いわゆる中央直結という呪文の効果には、今さらながら驚かされる。世界への恥さらしともいうべき腐敗と直結してどうするつもりだとは思うけれど、それを選んだ人々のほうが多かったという事実は事実として受けとめざるをえない。

 それなら花見気分になれないかというと、それはまた別の話である(笑)。ただし木の下で泥酔して醜態をさらすのではなく、人混みから離れて、たとえばタコ焼きをほおばりながらビールを一杯やるほうを選びたい。

 隣に粋なおねえさんでもいればうれしいけれど、ないものねだりをしちゃいけない。お相手としては、左翼崩れの渋い爺さんなんてのも悪くはない。いや、頑固一徹の反米右翼爺さんも案外おもしろかろう。どっちにしても、利権とは縁のない年寄りのこととて懐さびしく、料亭でどんちゃん騒ぎとはまいらない。

 公園のベンチから場所を変えて……とはいっても、

 -おい、君、おれの部屋でつづきをやらんか。

と誘われて、ふらふらついて行くと、狭苦しい路地のはてにあるぼろアパートの二階である。六畳間のすり切れた畳には、ペラペラの座布団が二枚、無造作に投げ出された文庫本や雑誌に埋もれかかっている。すり傷だらけのテーブルの上には、いつ洗ったのかとあやしまれるほど汚れたコップが二つ三つ。

 -遠慮するな、焼酎ならいくらでもある。まあ、やれ。

 爺さんは慣れているとみえて、4リットルのペットボトルを軽々と持ち上げ、トクトクと音を立ててコップに焼酎をついでくれる。肴は途中のスーパーで買ってきた薩摩揚げ。まだ日の高いうちに飲む焼酎のストレートは効く。

 ボーッとした頭で、開け放した窓からちらりと外を見ると、ゴミゴミした家並のところどころに、桜のきれはしが見える。

 -ハハハ、これもまた花見にはちがいありませんね。

 すると爺さん、澄ました顔をして、

 -花なんぞは見えなくてもかまわんじゃないか、君。月花をばさのみ目にて見るものかは、だな。

 はてな、どこかで聞いたようなセリフだ。もしや、この爺さん……(笑)

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April 06, 2019

Daily Oregraph: 明日は選挙!

 明日は道知事選の投票日である。とにかく投票所へ行こうよ。

 いつも申し上げるように、金持の一票も貧乏人の一票も価値は同じ。その一票という武器を活用しない手はないと思う。圧倒的多数であるはずの貧乏人がたった一握りの富裕層に支配されつづけるのは、その武器を使わないでふて寝しているからだ。

 「選挙ではどうせなにも変らないよ」という人は、いわばユデガエル状態にある。変らないどころか、いつの間にか可処分所得はじわじわ低下して、生活が苦しくなっているのに、半分茹で上がってボーッとしているのだ。

 選択肢に最善がないというなら、せめて最悪を避けるのが分別というものだろう。このままではどうなるかというと、

Kichenermix

これじゃあ、お互い困るでしょう? だから投票所へ行こうよ。沖縄につづくのは北海道だ。 

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April 04, 2019

Daily Oregraph: フクジュソウ

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 もうそろそろだろうと思って裏庭へ行ってみると、やはりフクジュソウが咲いていた。しかし日陰では、昨年払ったナナカマドの枝がまだ雪に埋もれている。いつものことだが、春はまっすぐにはやってこないようである。

 さて新元号に忌まわしい「安」の字が入っていなくて安心したけれど、「令和」とはまた微妙な元号だと思う。ぼくが真っ先に連想したのは「律令」だ。あの首相のことだから、「おれの決めたことには異を唱えるな」という意味かしらと思ったのである(だから人間ふだんが大切なんだよ)。

 日本人のぼくがそう思ったくらいだから、NYTの記事に order and peace という解釈があったのも無理はない。官邸ではさっそく不快を表明したらしいが、NYT は別に断定したわけではなく、いろいろな解釈をゆるす言葉だから auspicious harmony(めでたき調和)とも解せると断っている。むきになって否定したら、かえって「あの右傾政権ならやっぱり……」と思われるのがオチだろう。

 ネット社会には少なくない古典の専門家によれば、実は中国の古典由来で、読みようによっては暗君を皮肉っているのだとも解釈できるらしい。そうだとすれば、安倍晋三氏には「自分は年号を決められる大人物(暗君?)だからえらいんだ」と妄想しているふしがあるから、なかなかおもしろい。NYT の記事に「天皇にも皇太子にも(元号)決定について発言権はない」とあるのは、たぶん皮肉のつもりであろう。

 いずれにしても、ぼくはもともと元号の使用については消極的なので、安倍氏が令和がどんな意味を持たせたか、またどう政治的に利用しようとしたかについてはあまり興味はない。ただ「国民が心をひとつにして」という意味の発言をしていたことについては No! といっておきたい。はっきりいって、それはデモクラシーとは正反対の危険な思想である。人間境遇や立場、教育的素地がちがえば、思想もちがって当然なのだから。

 飯がまずくなるから、粋な方面に話題を変えよう。

 ポール・セローの南米旅行記を読んでいたら、クスコのホテルにたまたまあった古い蓄音機で昔なつかしい78回転のレコードをかける場面があった。曲は「上海リル(Shanghai Lil)」である。

 ちょいといい曲である。ぼくの駄訳をつけておくから、まあだまされたと思ってお聴きあれ。(こちらをクリックすればもとの歌詞もあるし演奏も聴ける)。

道あれば道を
丘あれば丘へ
追うはあの娘の
おもかげ 上海リル

夜の上海 またたく星に
よみがえるときめき
浮かぶはあの娘の
おもかげ 上海リル

いとしあの娘は
つれないけれど
瞳にはきらりと
光るもの

忘れたくても
変らぬ思い
ふたたびこの目に
わたしの 上海リル

(たぶんそのまま曲に合わせて歌えるはずだから、カラオケで歌ってみてね(笑))

 上海のリルといえば、昔わが国の歌謡曲にもあったけど、たぶんこれが元歌なんだろう。

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March 29, 2019

Daily Oregraph: 花咲けど

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 大阪ではハクモクレンが終わって薄紫のモクレンが満開と、大阪通信員が写真を送ってくれた(3月28日撮影)。三月も末だから、桜もそろそろ満開だろうし、にぎやかでまことに結構なことだ。

 こちらもさすがに日中の気温は高くなってきたが、昨夜もうっすら雪が降ったほどで、どこへ目をやっても枯木と枯草ばかりである。ちょっとくやしい。

 モクレンが咲いても桜が満開になっても、すでにこの国は長期大不況によってボロボロだから、とても浮かれた気分にはなれない。いくら政権がデタラメをいったって、大多数の人々の自由に使える金が減りつづけているからには、景気が回復するわけはない。三歳の童子にもわかる理屈だろう。

 こうも悪が栄えているようでは、そろそろ逆賊追討の宣旨が出されてもおかしくはないけれど、今どきそんなわけにはいかないから、利権屋どもは選挙で退治するしかない。今の世に水戸黄門もいなければ、桃太郎侍もいない以上(笑)、「ちとこらしめてやる」には、ぜひとも投票所に出かけて意思表示をする必要があると思う。

 沖縄県民の No! を無視した辺野古への土砂投入など税金の浪費をやめさせ、消費税を下げさせ、今年は無理にしても、来年こそ明るい春を迎えたいものだと願っている。

 え、新元号に「安」の字が使われるんじゃないかって? ご冗談でしょう。まさに末世である。もしもそんなことになったら、元号は金輪際使わないと宣言している方もすでにいらっしゃるが、ぼくも同意する。

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