April 20, 2021

Daily Oregraph: 裏庭画報 そろそろ土起し

 本日の最高気温は13.0度。晴天なれど風強し。

 ディーラーにて6ヶ月点検とタイヤおよびオイル交換。冬タイヤを仕舞いに物置へ行ったついでに裏庭を観察すると、おお、いっぺんに花が咲いているぞ。

210420_01
 フクジュソウ(左)とキバナノアマナ(右)。フクジュソウは咲くのが早いから、もう盛りを過ぎていた。

210420_02
 ウラホロイチゲ(左)とエゾエンゴサク(右)。まだ咲きはじめたばかりなので、今月末あたりからが見ごろである。

P4200889
 ギョウジャニンニク。わが家では食べない。味のクセが強すぎてぼくの好みではないせいもあるけれど、毎年花が咲くのを楽しみにしているからだ。

 花がいろいろ咲きはじめたからには、そろそろ畑の土起しをしなければならない。正直いって面倒くさいのだが、一年放っておけばたちまち根釧原野に逆戻りするので、やらざるをえない。今週末にはなんとかしなくちゃ……

| | Comments (0)

April 17, 2021

Daily Oregraph: 最後のオーディオいじり

 本日の最高気温は7.0度。曇り空で寒いから、散歩を断念。せっかくなら日の光を浴びて歩きたい。

 さてこの二三日は音楽びたりである。幸い PIONEER の CDプレーヤーは順調に動作しているので、注文した品が届くまで(6月になるらしい)メカはもってくれると思う。

210417_01
 今朝ふと思い立ってスピーカーのサランネットを外したら、これまで聞こえなかった音がワーッといっせいに飛び出してきたのには驚いた。多少は違うだろうと思ったけれど、これほど変化するとは予想もしなかった。約20年ほどいじらなかったから、ほこりで目詰まりを起こしていたのかも知れないが、結局サランネットはスピーカー保護の役に立つ以外は無益の存在にちがいない。考えてみれば、薄靄を通して景色を眺めるようなものだからである。

 あちこちにあった音の凹みが、新たに聞こえはじめた音によって埋まったらしく、明らかに全音域がなだらかになった。楽音の細部がはっきりくっきり聞こえる。音の広がりや奥行き感も向上した。スピーカーの音が確実にワンランク向上したので、買い換える気持はまったく失せてしまった。これで十分である。しかも改善にかかった費用はゼロ。

 写真のとおり、お見せして自慢するようなスピーカーではない。中級ミニコンポのおまけ用スピーカーシステムだから、1本当たりたぶん1万円未満だろう。しかしこの ONKYO D-V7、それなりのアンプで鳴らしてやると俄然実力を発揮するからユニットの基本性能は高く、廉価版中の銘器(笑)といっていいのではないか。

 それにしてもこの設置方法はおかしいんじゃないか、とおっしゃる方もおいでかと思う。窓枠の上の壁に直付け、しかもスピーカー間隔が狭い(約65センチ)。教科書の教えに反していることはまちがいない。

 実はミニコンポを自室にセットする際場所に窮して、苦し紛れにネジ止めしたに過ぎないのだが、意外にも(いい音とまではいえないにしても)ごくまともな音が出る。壁にがっちり固定したのがよかったようだ。つまり大げさにいえば家と一体化したわけで、小柄なのにフルオーケストラの大音量にも耐える。

 それまでは YAMAHA の NS-690II というそれなりに名のあるスピーカーを使っていた。こいつは使いこなしが難しく、悪戦苦闘の連続であった。壁からの距離やら床からの高さやら、あれこれ工夫しているうちに月日は過ぎ去り、やがてウーファ・エッジのウレタンがボロボロに劣化してしまったのを機に、やくざなオーディオ道楽はきっぱりやめて、茶の間から撤退して自室にミニコンポを導入したのであった。

 それから幾星霜(笑)、D-V7 はそこそこ普通の音を鳴らし続けていたわけだが、新年早々かつて NS-690II と一緒に使っていた LUXMAN L-510 を引っぱり出して接続してみたら、予想外にいい音がするではないか。その後 L-510 がついに斃れて DENON PMA-1600NE を導入したら、低音は 30cm ウーファより当然劣るものの、全体としては NS-690II よりもまとまりのよい音になった……というのがこれまでのあらすじである。

 さてスピーカーの高さに問題があることは認めるとして、左右の間隔はこれでまったく問題ない。ステレオ感は十分どころか、むやみに間隔をあけるよりもすぐれている。

 その理屈を教えてくれたのは奇人江川三郎氏である。とにかく一風変った発想の持主で、スピーカーケーブルの材質による音の変化などは、この方が世に広めたのではないだろうか。もっともそれに便乗して馬鹿高いケーブルで商売する業者なども現われたから、功罪相半ばするところがあると思う。高価なケーブルなんぞに交換するよりも、サランネットを外したほうが効果ははるかに大きいからだ。

 しかし江川さんの提唱されたスピーカー設置法は大変すぐれている。半信半疑で試してみたら、たしかにおっしゃるとおりの効果があって、目から鱗が落ちる思いをした。金が一銭もかからない方法だから、ご参考までにご紹介しておこう。

Aaccessory
 ミニコンポに鞍替えしたときにオーディオ関係の雑誌や本はほとんど捨ててしまったが、これは天下の奇書だから(笑)、大事に保存していたのである。

 本書の「逆オルソン田中・江川方式のステレオ再生」という章から、説明図を引用すると、

Speakers
 要点としては、スピーカーの「左右間隔を取ればそれだけ音場の広さが確保できる」というのは「幼い思考法」であり、「スピーカー間隔を狭めることが問題解決の基本」だというのである。さらに「間隔を狭めて外向きにしたら音像がピシリと定位した」という。

 江川氏の実験結果によれば、外向きにするとかえって定位幅が広がる(つまりステレオとして聞こえる範囲が広がる)というのだが、最初はぼくも「ほんまかいな」と疑った。スピーカーを外側に向けたら、まん中は音の空白地帯になってしまうのではないかと思ったのである。ところが、試してみると高音もちゃんと聞こえるから驚いた。以来ぼくは江川方式を採用している。

 このあとさらに「左右のスピーカーの中央に仕切り板を置くとよい」てなことが書いてあるけれど、さすがに部屋の中で実行するのはむずかしいから、それは試していない。

 なお写真のスピーカーは外向きになっていないじゃないかとお思いかもしれないが、場所的に無理があるので、実はL字金具で調整可能な範囲内でわずかに外向きにしている。

 ほんとうにひさびさのオーディオいじり、これにておしまい。もう余命いくばくもないから、これからは音ではなく音楽をたっぷり味わうことにしたい。

| | Comments (0)

April 15, 2021

Daily Oregraph: 「耳」学問

 本日の最高気温は9.4度。

20210415_01 
 TEAC の CDプレーヤーが復旧したのであれこれ聴きまくっていたら、またもや時々読み込み不良が起こるようになった。たぶんピップアップ部をユニット交換する必要があるらしいけれど、このクラスの製品に修理代を出そうという気にはとてもなれない。

 USBメモリ入力かアンプの USB-DAC を使えばすむ話なのだが、注文したプレーヤーが届くまで、いちいちパソコンを起動しないと CD を聴けないのはどうも面白くない。

 そこで目を付けたのが、先日来トレイが開かない PIONEER の CDプレイヤーである。どうせ捨てるつもりでいたから躊躇なくカバーを開けてみると、CD が入ったままになっていた。やはり OPEN ボタンを押してもウンともスンともいわない。

 このプレーヤーはふだんめったに使わないから、たぶん開閉装置のどこかが固着したんじゃないだろうか……この素人判断は意外にも当たっていたらしく、手であちこち動かしてから再び OPEN ボタンを押すと……開いた、開いた。マッサージで肩こりをほぐすようなものだね。

 ところが、せっかく開いたと思ったらすぐにトレイが引っこんでしまう。何度繰り返しても同じである。開閉のセンサーかスイッチが故障したのだろうか?

 どうしようか迷った挙句、トレイが一杯に開いた瞬間、手でぐいと押さえつけて閉まるのを阻止してみたら……なんと正常に動作するようになったではないか。どうせすぐダメになるだろうと思って、なんべんも試してみたが everything is all right、何事もなかったかのようにスムーズに動作する。

 さっそく RCAケーブルでアンプに接続し、音を出してみた。聴いたとたんに、「こりゃあかん」と思った。ひどい音なのである。泥団子のような音、とでも形容すればいいのだろうか、まるで音楽になっていない。やはり四半世紀前の廉価版 CDプレーヤーを最新アンプに接続するとボロが出るようである。ダメだ、こりゃ。

 さてここで何気なく PIONEER の取扱説明書をめくってみると、驚いたことに、この古いプレーヤーには「光デジタル出力端子」があったのだ。へえ、知らなかった。

 なにしろ数十年オーディオの世界から遠ざかって、ミニコンポのお世話になっていたから、ここでお勉強。林正儀さんの「オーディオ講座」というサイトの記事を読んで、なるほどと納得した。

 つまりCDプレーヤーは「CDから拾ったデジタル信号→DAC(デジタル→アナログ・コンバータ)→アナログ信号をアンプへ」という仕組みになっている。だから音質は主に DAC の性能に依存するらしい。

 アナログ・アンプとちがってデジタル機器は日進月歩だから、CDのデジタル信号をプレーヤー内の DAC ではなく、光ケーブルで最新の DAC に直結してやれば、音質を大いに改善できる可能性がある。

 PMA-1600NE には DAC が内蔵されているので、さっそく光ケーブルで接続してみると、予想どおり音質は劇的に向上した。まるで別物だからびっくり仰天である。これなら新品が届くまでメカがもってくれれば、十分代用になるだろう。

 TEAC のプレイヤーは2013年製だけあって、RCAケーブル接続でもまともな音が出るけれど、やはり光ケーブル接続して条件をそろえ、PIONEER と聞き比べをしてみた。

 いわゆるハイファイの観点からは TEAC の圧勝。全体によりフラットですっきりさわやか、高音も繊細だし、異なる楽器の音もちゃんと分離して聞こえる。ただしややふくよかさに欠けるように思う。PIONEER のほうはどの音も丸くなって楽器の分離も今ひとつ、全体に音域が狭いうえにバランスが低音寄りで、うっすら春霞がかかったような印象を受ける。

 では古い PIONEER の音はまったくダメかというと、決してそうではないから面白い。昭和世代にとってはなじみのある、なつかしい音といえばいいだろうか、あまり聴きづかれしないので、ゆったりした気分で聴くにはなかなかよろしい。曲によってはこちらを好む人もいると思う。今マーラーの1番をかけているのだが、これはこれで悪くないなあ。

 そういえば、昔々曲によってレコードプレイヤーのカートリッジを取り替えて聴いていたことを思い出した。ガラリと音が変化するのである。金と場所に困らなければ(笑)、まるで性格のちがう CD プレーヤーを3台くらい用意するのも悪くないが、下級国民にはむずかしいよなあ。

 今回の経験から考えるに、古い光デジタル出力端子付き CDプレーヤーをお持ちの方は、RCAケーブルを外して、光ケーブルでアンプに接続してごらんになってはいかがだろうか。最近はミニコンポにもたいてい光デジタル入力端子が付いているので、試してみる価値は十分あると思う。投資は光ケーブル1本のみだから、わずか千円程度である。

| | Comments (0)

April 14, 2021

Daily Oregraph: レンズを拭く話

 本日は曇りのち一時雨、最高気温は8.9度。朝のうちは晴れていたので、昼前に散歩に出ようとしたところへ雨が降り出した。残念。

 さて本日は故障中の TEAC製 CDプレーヤーのカバーを開け、ダメ元でレンズのクリーニングを試してみた。トレーはスムーズに開閉するので、読み取り不良の原因はレンズの汚れかピックアップ部そのものの故障にちがいない。後者ならお手上げである。

 もちろんレンズの汚れは真っ先に疑ったから、湿式クリーニング・ディスクで何度か清掃したのだが、ウンともスンともいわない。となればピックアップ部が怪しいけれど、ぼくは以前からクリーニング・ディスクの効果には疑いを抱いていた。頑固な汚れは取れないんじゃないかと思うのである。ダイレクト清掃を試してみる価値はあるだろう。

 お断りするまでもなく、ダイレクト清掃はそれこそ自己責任なので、決してお勧めはできない。ぼくの場合、保証期間がとっくに切れているので、気楽に試すことができたのである。

Cdp-01
 まずは上部カバーを外すのだが、TEAC さんはプラスネジではなく六角レンチ用ネジを使っている。ぼくはたまたま持っていたからいいけれど、六角レンチ・セットなんてお持ちでない方のほうが多いと思う。

Cdp-02
 これが内部。レンズのありかはわかるが、この状態ではうまく清掃できないから、電源を入れてトレイをオープンすると、

Cdp-03
レンズが見える。これは清掃後に撮ったものだが、もともと目に見えるほど汚れていたわけではない。たぶんちょっと曇っていた程度だろうと思う。

Cdp-04
 レンズを傷つけるから綿棒にクリーニング液を付けてゴシゴシこすっては相ならんという。そこでデジタル一眼レフ撮像素子の清掃用であるニコン純正(笑)シルボン紙を麺棒の軸に巻きつけ、無水エタノール(純度100%)をちょいと付けて、丁寧にレンズを拭き取ってみた。清掃後少し時間を置いて CD をセットし、ディスクをスタートすると読み取りに成功したので、カバーを閉じる。

 アンプに接続して CD を10枚ほど試してみた。10枚のうち8枚はまったく問題なし。残りの2枚のうち1枚はまったく読み込まなかったので盤面をチェックすると、なぜか大きく深い傷がついていたから、プレーヤーのせいではないようだ。もう1枚は最初はダメだったが、CDの盤面をメガネ拭きでサッと拭き取ってから入れ直すと無事読み込んだ。これは CD の盤面汚れのせいか(これはたまにある)、レンズの清掃が不完全だったせいか、なんともいえない。

 まあ、これで一応は復活したので、注文した品が届いたら、こちらは別室用として当分は使えそうだ。それにしても、レンズの汚れは CDプレーヤー最大の泣きどころだと思う。テープデッキの磁気ヘッドはユーザーが自分で簡単に清掃できたし、メーカーでもそれを奨励していた。それを思えば、せめてレンズを清掃しやすい構造にするか、それが勧められないというなら、製造者としてなんらかの手を打つべきではないか。

| | Comments (0)

April 12, 2021

Daily Oregraph: 十勝港の春

210412_01
 本日の生存証明写真はひさびさの十勝港(広尾町)。遠くの山々にはまだ雪がうっすら残っていた。

 今日の最高気温は広尾町19.2度に対して釧路は9.1度だから、なんと10度以上の差である。ポカポカして気持がよかったので、港内をブラブラ散歩。岸壁のあちこちに釣人がいて、コロナとは無縁の呑気さである。

210412_02
 見覚えのあるキタキツネ。栄養失調で毛がごっそり抜けているのは気の毒だが、無事冬を越して春を迎えたのはなによりである。船の近くでしばらく粘っていたけれど、だれも餌をくれないので、いつの間にか姿を消していた。生きるのは大変なことだよなあ、お互い。

 仕事を終えて、午後帰釧。今月は音楽月間と決めた。人間楽な方に流れるものだ。捕物帖はしばらくお休みである。

| | Comments (2)

April 10, 2021

Daily Oregraph: 壊れゆくもの

210410_01
 本日の最高気温は7.0度。さほど高くはなかったけれど、風が弱く快適であった。春採湖畔では散歩する人の姿を多く見かけた。

 さてここ数日は、網戸の張り替えをしたり(笑)、なにかと落ち着かなかった。まずプリメインアンプ L-510 がついに故障した。先月の半ばあたりから右チャンネルが不調だと思っていたら、だんだん音が途切れたり歪んだりするようになった。気に入っていたのだが、なにぶん36年以上経過した品だし、経年劣化だろうから仕方がない。

 そこでいろいろ調べて見た上で、最近のラックスの製品は高価で手が出ないから、評判のいい DENON PMA-1600NE というアンプを購入した。L-510 と大体同クラスの製品だと思う。重量は17.6 kgだから、L-510+0.6 kg と結構重い。実はもう少し奮発して PMA-2500NE にしようかと考えたのだが、重量 25 kg(!)と知って断念。ジジイにはそんな重いものを持ち運ぶ元気はありませぬ。

 このアンプ、いわゆるネットワーク機能はないけれど、パソコンと USB接続できる(別売りの USB A-B ケーブルを使用)。どんなものかとんと見当がつかなかったけれど、パソコンにアンプ内蔵スピーカーを接続するのと基本的には同じ要領だから、実際はごく簡単だった。

 専用のドライバーをインストールして、アンプ側のポジションを USB-DAC にセットすれば、CD だろうが YouTube だろうが、パソコン側で再生する音はすべてアンプを通してスピーカーシステムから鳴るという仕掛けである。当然たいへん高音質だし、使い勝手もすぐれている。

210409_02
 この写真のように、パソコンのオーディオ再生ソフトを使用しているとき(上)には、アンプ側に「USB: PCM」と表示される。

 パソコンの CD ドライブで音楽CDを再生できるから、しめしめ 故障中のCDプレイヤー(USBメモリのみ使用可能)を買い換える必要はないと喜んでいたら、そうは問屋が卸さなかった。

 別室でミニコンポに接続して使用中のパイオニア製 CDプレイヤーが L-510 と気をそろえて故障してしまったのである。これは大変丈夫なメカニズムで、24年間も故障知らずで使用したけれど、とうとうトレイが開かなくなってしまった。結局 CDプレイヤーまで注文する羽目になったが、ただいまコロナ禍のせいで人気機種は品薄らしく、品物がいつ届くかはまだわからない。

 安心していい音が聞けるのはうれしいけれど、こうなるとスピーカーも交換したくなる。若い頃なら後先考えず、なけなしの金を注ぎこんでスピーカーも一緒に注文したところだが、年を取ると人間少しは冷静になるものらしい。設置できる場所が限られており、セッティングが面倒くさいから、このたびは見送った。アンプも故障し CDプレーヤーも壊れ、この分だとスピーカーを交換する前にこっちがお陀仏になるかも知れない。

 なおついでに納戸を整理したら、こんな恐ろしいものが出てきた(笑)。

210409_01
 みっともないものをお見せして申し訳ないが、昔々作った真空管小パワーアンプの残骸である。フォノ・イコライザアンプをバラしてむりやりシャーシを使い回したから、ボコボコになっている。捨てる前に記念撮影した次第、ああ。

| | Comments (2)

April 05, 2021

Daily Oregraph: ソー橋の謎捕物帖 (3) 解決編

210405_01
 本日の最高気温は8.2度。昨日より気温は高く、晴天だったけれど、風が冷たかった。

 さて薄氷堂の隙間だらけの部屋には、今日もおなじみの面々が集まっております。まず八五郎がニヤニヤ笑いながら、

 -薄氷堂さん、あなたの八卦、当たりましたかい?

 -ハハハ、まあ半分当たりというところでしょうか。

 -はてな、半分といいますと?

 -はい、ギブソン夫人自殺説は大当たりです。しかしベイツが協力者だと考えたのは大外れでしたよ。

 すると親分が首をかしげて、

 -するてえと、夫人は自殺に使った拳銃をどうやってミス・ダンバーの衣装棚に持ちこんだんですかね?

 -さあそこですよ、親分。実はね、あたしは前回はしょっていたが、問題の拳銃は2丁揃いのうちの1丁、つまり同じ型の拳銃がもうひとつあったんです。担当の巡査の話ですと、「事件に使われたのは同じ箱に入った2丁揃いのうちの1丁で、もう一つのほうは見あたらなかったが、探せばみつかるだろう」というんだから箱は空、結局夫人は無断で2丁とも持ち出したことになりますね。

 -ということは、自殺に使った拳銃と衣装棚に入れた拳銃は同じ型の別物というトリックですかい? こめかみに当てて発射した銃かどうかは、痕跡を見ればすぐにわかりそうなものだが…… それに現場で使ったほうの銃をどう始末したかが問題ですね。

 -さすがは親分、その始末の方法についてはちと疑問があって、あとでご説明いたしましょう。その前に別の問題があって、ドイルさんはまたミスをやらかしているんですよ。

 -といいますと?

 -あとの方で、ホームズは巡査の話と矛盾したことをいっているんです。つまり「夫人は夫の拳銃のうち1丁を持ち出して保管し、森の中であらかじめ1発だけ発射しておいた同型の別の銃を、当日の午前中にミス・ダンバーの衣装棚に隠しておいた」というのです。

 -なるほど、1丁だけ持ち出したんなら、2丁入りの箱には対になる1丁が残っていなくちゃならねえ。夫人はそれとは別の拳銃をもう1丁どこかで手に入れたことになるから、ドイルさんの凡ミスだね。おっと、待てよ、衣装棚に拳銃を隠したのが「当日の午前中」ってのはおかしくはねえですか。

 -そうなんですよ。ミス・ダンバーがその日の朝衣装棚を開けて整理したときには確かに拳銃はなかったから、その後午前中の授業のため彼女が不在中に、夫人が部屋に忍び込んで隠したんだろう、というんですが、ちょいとおかしくはありませんか?

 すると手習いのお師匠さん、鼻毛を抜きながら、

 -拙者もそれはおかしいと思いますな。念のため、整理棚の拳銃はいつ見つかったのですかな、薄氷堂さん。

 -事件の翌朝警察が捜索してみつけたんです。しかしご婦人が翌朝まで一度も衣装棚を開けないということはめったにないんじゃないでしょうか。もちろん開けたからといって床に置かれた拳銃に気づくとは限りませんが、見つける可能性はおおいにありますよ。

 -うむ。拙者だったら、そんな危ない真似はしないでしょうな。

 -だから事件後のどさくさに紛れて、自殺に使った拳銃をこっそり衣装棚に入れたんだろうと、あたしは考えたんです。夫人が死んでいる以上協力者がいるはずだし、そいつはベイツだろうと考えたわけです。ただベイツが協力したとすれば夫人が自殺することを知っていたはずだから、それも奇妙な話だと首をひねっていたんですよ。

 すると親分もうなずいて、

 -実はあっしも同じことを考えていましたよ。しかしこれじゃ話が先に進まねえから、そろそろ自殺に使った銃の始末についてうかがいましょうか。死んだ人間に始末ができるものかどうかだね。

 -それでは、ひどくまずい絵ですが、これをごらんいただきましょう。

 そういって薄氷堂が一同に見せたのは、

Thor_bridge

 -あたしには力学はまるでわかりませんが、ホームズは現場でワトソン先生携帯の拳銃を使って実験し、この仕掛けがうまく働くことを確認しています。親分はこれを見てどうお思いになりますかな。

 -う~む、この仕掛けが働くとしたら相当重さのある石が必要だろうし、女が一人でこしらえるのはむずかしかろうと思うんだがねえ。まあ、かりにこしらえたとしてもですよ、石を吊り下げた瞬間から紐がピンと張って、拳銃を自由に動かすのはむずかしくなる。女の細腕じゃ銃を支えるだけでも大変なのに、片手でこめかみにピタリと狙いを定めるなんて芸当ができるとはとても思えねえ。先生、こいつはとても無理じゃありませんかね。

 -さよう、狙いを定めるどころじゃありますまいな。それにですな、自殺した夫人の精神状態を想像するに、そもそもこんな凝った仕掛けを考えつく余裕がありましょうかな? 薄氷堂さん、まだお聞きしていなかったが、ミス・ダンバーは確かにソー橋で夫人に会ったのですな?

 -ええ、説明が足りませんでしたね。まず当日ミス・ダンバーを呼び出したのはギブソン夫人のほうだったんです。夫人は返事をメモに書いて指定場所に置くように指示し、そいつをミス・ダンバーに不利な証拠として現場で握りしめていたというわけです。約束の9時にソー橋で会ってみると、夫人は半狂乱の状態で悪罵を浴びせつづけます。ミス・ダンバーがいたたまれなくなって屋敷へ逃げ帰ったあと、夫人は例の仕掛けを使って自殺し、拳銃を水中に沈めたというわけです。

 -なるほど。嫉妬に狂ってカッとなった女がこれほど緻密な計画を練るとは、拙者にはとても考えられませんな。自殺するとしても、橋の上でミス・ダンバーを射殺して道連れにするほうが自然だと思いますぞ。

 するとそれまで諸先輩の話をじっと聞いていた八公が、

 -こないだ薄氷堂さんもいってたように、あっしは夫人を自殺に追い込んだミス・ダンバーが一番罪深いんじゃねえか思うんですよ。

 -ええ、あたしも八五郎さんに同感ですな。本人もすぐに屋敷を去らなかったことをあとで反省してるようなんですが、やはりミス・ダンバーという人物の性格や行動は不可解で、この事件の真犯人は彼女だといっていいかも知れませんね。

 親分が苦笑いして、

 -薄氷堂さん、あんた、最初これはひさびさの本格探偵小説だってほめていなさったね。

 -う~む、期待していたんですけどねえ。いつもほめようと思って読みはじめるんですが、途中で無理なところがみつかるから残念なんですよ。先生はどうお思いで?

 -そうですなあ、このシリーズを推理小説としてマジメに読むから失望するわけで、やはりホームズ手柄話として気楽に読み流すのが無難かと拙者は思いますぞ。

 -そうかも知れませんねえ。でもね、まだ10編も残ってるんですよ。どうしましょうかねえ。

 -乗りかかった船だよ、薄氷堂さん。八の勉強にもなるしね、最後までおやんなさい。全部片づいたら、あっしがお祝いに宴会を開いてあげますよ。

 -おお、そいつはありがたい。親分、ぜひお願いいたします。

| | Comments (2)

«Daily Oregraph: ソー橋の謎捕物帖 (2)